ヤマハの電動アシストロードバイク、YPJ-R のインプレッションをクリーンウォーターファクトリーさんのご協力のもとにお届けする企画。

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電動ロードバイクが数年前にヤマハからリリースされたのは知っているけど、実際どうよ?

買うかどうかはともかく、機会があったら試乗してみたいなあ

と考えているローディは少なくないかなと。

前回はYPJ-R という機材&マシンを紹介した。今回は実走編だ。

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※武蔵五日市駅です

ボトルがフレームに取り付けられない

サドルの高さを調整し、SPDペダルを装着して、準備は整ったのだが、なんとボトルを挿す場所がない。ボトルケージが存在しないというか、取り付けられない構造になっている(バッテリーが鎮座しているのでw)。シートチューブにも台座は付かない。よって、(トライアスロンでお馴染みの)サドル用のケージしか選択肢はない。

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装着されていたのは1本挿しのシングルタイプだったが、ボトル以外にツール缶も必須なので、2本挿しタイプをオススメする。今回は、ツール缶をメッセンジャーバッグに詰めることにした。

電源をオフにし、アシストされない状態で駐車場内をクルッと一周してみた。うむ、さすが車体重量15.4キロだけあって重い。15.4キロといえば、ロードバイクの約2倍。重いはずだ。

電源をオンにしたらどう変わるのであろうか?

あくまで「アシスト」してくれるロードバイク

武蔵五日市駅を出発し、神戸岩を目指す。ルートはこんな感じ。檜原村役場の交差点を(武蔵五日市駅から見て)左折すると都民の森だが、今回は右折して神戸岩を目指す。途中で、激坂にも挑戦する予定。

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武蔵五日市駅から檜原村役場のT字交差点までは、比較的なだらかな斜面がつづくので、アシスト力を確認するにはもってこいのコンディション。

ぜんぜん力を使わずとも、モーターがグイグイと推進させてくれるのだろう」と期待している人には申し訳ないが、それはない。

「電動アシストって、ものすごいパワーでペダルが勝手に回ってしまうんだろうか」と想像したんだけど、あくまでアシストなのでそんなに激しいパワーは出さない(出たらむしろ危険)。自分の筋力を補助してくれるだけで、あくまで主は自分の脚。

まずは標準出力の「スタンダード」に設定してみる。出力のイメージとしては、人に背中をしっかり押してもらっている…くらいの感じ。ハッキリと、「あ、電力に助けてもらっているな」と感じることができる。時速でいうと、通常であれば時速15キロでしか登れない斜度を、時速20キロで淡々と登れる。登坂においての5キロアップはでかい。

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「エコ」でも試してみたが、あまり変化は感じられず、実用性は薄いと思った。基本はスタンダードに入れっぱなしで良いと思う。

アウターのまま登れちゃう

斜度はほとんどが5~6%。比較的緩やかな坂がメインで、ときどき8%くらいにキツくなる感じ。斜度が8%になると、個人的にはフロントをインナーに落とすのだが、電動アシストのおかげでその必要がなく、アウターのまま登れてしまえる。

和田峠まで距離にして15キロ。ほぼ息が上がらずに到着できた。しかもアウターのままで、ダンシングを一度もする必要がなく、だ。しかも疲労がない。これには驚いた。

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※ぜんぜん疲れない

ちなみに、スタンダードの設定のままだと、出力するパワーが一定なのかというとそうではない。乗り手の出力(踏む力)に呼応して、強く踏まれれば強くアシストし、弱く踏めば控えめにアシストしてくれる。よって、強く漕げば早く走れて、そのかわり電池消耗も早く進む。

そのおかげで、走っていて一度も違和感(うわ!パワー出過ぎだよ、怖い!)みたいなことがなく、自然に自分の脚で登っている感があったのが良かった。

ただ、けっこう電力に助けてもらったようで、15キロの行程でバッテリーを8割ほど消費してしまった。

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バッテリーの持ちはどうなの?

15キロのヒルクライムで8割の電力を消費…これを長いと見るか、短いと見るか。延々と登りで電力を消費していたということを差し引いても、「ちょっと短いか」とは感じた。バッテリーの大きさ(小学生男子の筆箱くらい)からして、「上り下りを繰り返すルートで50キロくらい走るかな」って勝手に期待していたというのもある。

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登坂を含むツーリングに出かけたとして、1本のバッテリーではとうてい足りない。よって、予備バッテリーは持っておくべき。「えー、バッテリーの予備を持つのか…重そう…」と思うかもだが、じつはバッテリーは見た目からは想像できない軽さ。500グラムを切るくらいなので、まあペットボトル1本と思えばよい。今回はメッセンジャーバッグ(Timbuk2 のカタパルト)に入れて運んだ。

>> 試行錯誤の末、「ロードバイクのツーリングには小型メッセンジャーバッグが適しているのではないか」という結論に至りました

>> 【メッセンジャーバッグ・インプレッション】 Timbuk2 のカタパルト


バッテリーが2本あって、平坦路では電池消費も少ないことから考えると、まあ100キロ未満のツーリングならいけそうかなと。

ちなみに、バッテリーを外すとこんな感じに端子がむき出しになる。水は侵入して来ないのか?雨天時にバッテリー交換したら漏電してしまわないか?と不安になるだろうが、まったく問題ない。ちゃんと防水加工は施されている。

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仮に電池が切れても、当然ながらふつうに自走で帰ってこれる。Di2とかEPSのような電動変速のロードバイクだと、電池切れとともに変速ができなくなってしまうけど、変速はふつうの105だし、そこに電力は関与していないので。(その代わり、16キロの車体を自力だけで走らせねばならないが…)

平坦路でスピードに乗ると、重さを感じる

YPJ-Rのアシストは時速24キロで切れる仕様。よって、スピードに乗った平坦路とか下りでは電池を使わない。

重量16キロのロードバイクを平坦路で気持ちよく巡行させられるのは(脚力にもよるが)時速30キロまでかな…と感じた。30キロを越えると、途端に重量を意識させられてしまう。YPJ-Rがもっとも楽しめるスピード域は「時速20〜30キロ」だとわかった。

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※下りはすごく安定

つまり、爆速でかっ飛ばす乗り方ではなく、ほどほどのスピードを体力を消耗させずに楽しむ乗り方がふさわしい。レース志向、自力で登りたいサイクリストにはピンと来ないロードバイクかもしれないが、こういうバイクを必要とする人には大いに助けになるだろう。

さて、重量のデメリットばかりを書いてしまったが、重さは悪いことばかりではない。ボトムブラケットにモーターが内蔵されているせいで重心が低めで、下りがすごく安定している。カーブもオンザレール感覚で狙ったラインをビシッとトレースでき、ぜんぜん怖くなかった。(履いている太めのタイヤのおかげもあると思うが)

途中で豆腐屋さんに立ち寄る

豆腐ドーナツと豆乳ソフトを食べた。おいしかった。手作りで水増しもしていない、純度100%の豆腐。豆腐も試食させていただいたが、これも美味。買って帰れないのが残念…。

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激坂にチャレンジ

このまま武蔵五日市駅に戻るのももったいない気がした。「予備バッテリーをまだ使っていないし、せっかくだから激坂に挑戦しておきますか!」という清水さんの案内で連れてきてもらった激坂。斜度はゆうに15%はあるだろうか。

ふつうであれば、インナーローでシッティングとダンシングを織り交ぜてノロノロとしか登れない斜度である。ここで「ハイ」設定にして一気に出力を上げて、本気のYPJ-Rの力を爆発させてみたら…。

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※激坂を楽々とクリア!

とんでもないパワーが出て、平地のごとく加速した。アウターギアのまま、えいえいと漕いだだけで、時速20キロ出てしまいビックリ。15%かそれ以上の坂道で風圧を感じることができるなんて、自力ではありえない。

清水さんによれば、「ハイモードでもがけば、一般サイクリストが実業団選手並のスピードで激坂を駆け上がることができる」のだそうな。ざっくりな印象だが、プロレベルの選手は激坂を時速20キロくらいで登れるものなので、この説明はしっくりきた。

ただし、「ハイ」モードは出力がハンパないぶん、電池消費もハンパない。たった10分かそこらで50%になってしまった。ハイモードはあくまで瞬間的にお世話になるもので、入れっぱなしにして使うものではない。

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YPJ-Rを買うか?

以上、ヤマハの電動ロードバイク、「YPJ-R」のインプレッションでした。とてもユニークなロードバイクで、貴重な経験になった。自分は「自力で走ることに達成感を感じるタイプ」なので、YPJ-Rのターゲットではない。レース志向の人にも刺さらないであろう。

そもそもヤマハも(大半の既存の)サイクリストに購入されることを想定はしておらず、もっとシニアな層とか、体力に不安がある女性をユーザーとして見ているらしい。

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たとえば、すでにサイクリストである旦那さん(&彼氏)にロードバイクを勧められたけど、体力差があっていっしょについて走ることさえ躊躇してしまう…という女性には良い選択肢になりえるのではないか。あるいは、若い頃のような脚力はなくなってしまったけど、ロードバイクで遠出してみたい&起伏があるコースでもガス欠の心配をせずに走りきりたい中高年層にもマッチした機材になると思う。

クリーンウォーターファクトリーさんは電動ロードバイクを実際に見たり、乗ったりできる珍しいお店。「気になるかも?」という方は、一度お店に遊びに行ってはどうだろうか。

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