ヤマハの電動ロードバイク、「YPJ-R」に試乗させていただく機会があった。

電動ロードバイクって、シマノのDi2 とかカンパニョーロのEPSが搭載された電動シフトのロードバイクと一緒なの?」と混乱する方がいるかもしれないが、変速機ではなくて、電力で『ペダリングをアシスト』してくれるほうのロードバイクである。

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※2015年のサイクルモードで撮った写真

たしか、2014年秋に開催されたサイクルモードで大々的に登場した記憶があって、自分も現地で見た。「あのヤマハが?」という驚きと、「電動アシストするロードバイクなんてモノが、ついに登場したのか」という衝撃を同時に味わった。

あれから2年半、周囲に買った人はおらず、サイクルモード後にショップなどの店頭で見かけたこともない。どんなバイクなのか気にはなっていたが、実車をじっくり観察する機会はこれまでなかった。

そんなあるとき、イベントで知り合った、横浜にあるクリーンウォーターファクトリーさんという電動アシスト自転車YAMAHA PASの専門店の店長さんに「YPJ-R、乗ってみます?」とオファーをいただいたので、「ぜひ!」とお願いした。

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ただ、「平地をちょい乗りしただけではYPJ-R の実力はわからない。山で試してみてほしい」とのこと。なるほど、たしかに電動アシストなんだから、その本領が最も発揮されるのはヒルクライムのはず。ということで、武蔵五日市駅から檜原村の坂を1時間ほど登るという特別な試乗会を行っていただいた。

そもそも、YPJ-R ってどんなバイク?

ポジション的には、ヤマハの電動アシスト自転車、PASブランドの下に位置する。クロスバイクタイプの YPJ-C、ロードバイクタイプの YPJ-Rのラインナップがある。

公式ウェブサイトを元に特徴をまとめると、こんな感じ。

  • アルミフレーム(フォーク含む)
  • コンポーネントは105(5800系)
  • 発進、加速、登坂シーンで電動アシストしてくれる
  • 大型液晶ディスプレイ搭載
  • ダウンチューブにバッテリーを搭載
  • サイズはMとXSの2サイズ展開
  • 価格は248,400円(税込み)


この動画を見れば、おおよそ伝わるかと思う。(YPJ-Rは2分2秒から登場)



YPJ-Rのこんなイメージ動画もある。




動画やウェブサイトを見る限りでは、ダウンチューブに乗っかった電池とモーターでやや膨らんだBB回りが「ふつうのロードバイクと違うな」といった印象。

ではそろそろ実車を見てみよう。

YPJ-R の実車はこんなかんじ

集合場所は武蔵五日市駅。ショップオーナーの清水さんにお会いし、さっそくYPJ-R を見せてもらう。

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パット見はふつうの700cのロードバイク。カラーはブラック/グレー。ダウンチューブにある筆箱サイズのバッテリーがやや目立つものの、クランク側から見る限りはBBにあるモーターはほぼ見えない。

サドルにまたがると、すごく大きな液晶ディスプレイ式のサイコンが目に飛び込んでくる。速度、時計、バッテリー残量メーター、消費カロリー等が表示される。

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※ヘッドの左にあるスイッチで電源オンオフ、モード切り替えを行う

搭載されたコンポーネントはシマノの105(5800系)の11段変速。フロントは2枚(50T/34T)でコンパクトなクランク。リアは12~25Tと一般的な仕様。

YPJ-R の重量は15.4キログラム

見た目にはさほど違和感のないYPJ-R だが、持ち上げてみるとズッシリ重い。重量は15.4キロ(Mサイズ)ある。ふつうのロードバイクの約2倍。どこに重さがあるかというと、まずはモーターが占める割合が大きい。バッテリーも重そうに見えるが、取り外して持ってみると「アレ?」って驚くほど軽いのだ。バッテリーはたいして重さにはつながっていない。

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あとは、フレームそのものが重いそうな。モーターを積み、高負荷を出力するバイクなので、ふつうのアルミロードフレームよりは厚めで頑丈な構造になっている。なるほど、シートステーやチェーンステーをまじまじ見つめると、ゴツい仕上がりになっているのが分かる。とくにBB回りは剛性確保のために重くなっている。

完全フルアルミのバイクだが、じつはシートポストだけはカーボンである。乗り心地はここで調整しているようだ。

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電動シフターのDi2 とかEPSは電池が切れたら変速できなくなってしまうが、YPJ-R のディレイラーはワイヤー引きなので問題なく変速可能。ただし、バッテリーが切れてしまったら、かなり重いロードバイクになってしまうが…。

なお、輪行は物理的には可能。輪行袋にもふつうに収納できる。ただし、本体だけで15.4キロあるので、付属品やボトルを入れると16~17キロになり、あまり現実的ではない気がする。YPJ-R の想定ユーザーは体力にやや不安のある女性や中年層。なおさら輪行は厳しいであろう。自分も、輪行したいとは思えなかった。

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電動アシストは三段階

出力は「エコ、スタンダード、ハイ」の三段階にわけることができる。清水さんによれば、通常はスタンダード設定のままでOKとのこと。エコだと「さほどアシストの恩恵を感じられない」らしい。「ハイ」はよほどの激坂でない限り、使わなくて大丈夫。

当前ながら、出力を高めるほど電池消耗は激しくなる。

駐車場内でちょい乗りしてみたところ、たしかにエコではたいしたアシストは感じない。15.4キロある重さが相殺されてふつうのロードバイクになった…くらいの印象。スタンダードで漕いでみると、とたんにペダルが軽くなる。

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ホイールはYPJ-R 専用がオススメ

リアホイールはスポーク数が多く、いかにも頑丈そうなルックス。実際、強度はかなり高めにしてあるそうな。というのも、ふつうの人では出力できないほどのパワーを発揮できてしまうので、ホイールにかかる負荷もハンパない。

「ハイ設定」では、なんとエリートクラスである実業団選手同等のスピードで激坂を駆け上がることができてしまう。つまり、豪脚でぶん回しているのとおなじこと。よって、ちょっとやそっとのホイールではわりと早めに寿命を迎えてしまうわけ。

700cホイールの一般的な規格のロードバイクなので、通常のホイールを使うことはできるが、上記理由で「デフォルト装着されたYPJ-R 専用ホイールを使うことをオススメします」とのことだ。

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※スポーク数は多め

ひとつうれしいニュースとして、ヤマハの品質管理は他の自転車メーカーと比較にならないレベルで高い。自動車メーカーに匹敵する管理体制を持つ。パーツの供給も安定しており、かつ長期間にわたって生産される。数年でコロコロ仕様が変更されてはたまったものではないが、ヤマハにおいては心配ない。

細かな仕様はこちらを御覧ください。

YPJ-R の想定ユーザーはだれ?

レース志向ではないエンジョイ系サイクリストだということはカンタンに想像できる。

「体力にやや不安があるから本格的なサイクリングは厳しいけど、色んな場所にサイクリングしてみたい人」を想定しているようだ。具体的には初心者女性、中高年の男女といったかんじ。

逆に、体力が有り余る若い男性や、いわゆる一般的なローディは対象外。「電力に助けてもらって走るなんて邪道。自分の脚で登ることに意味がある」って考えるサイクリストには響かないであろう。 だが、こういうロードバイクがあってもいいとは思う。より多くの人々に選択肢が増えるという意味で、ヤマハのチャレンジングな姿勢は好ましい。

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さて、そろそろYPJ-R を走らせてみよう。ヤマハの電動アシストロードバイクの実力やいかに!?

つづく