ラピエール(LAPIERRE)やサーベロ(Cervelo)を取り扱う代理店、東商会さんからラピエールの「XELIUS SL ULTIMATE Disc」の試乗車をお借りすることができた。今回はそのインプレッション記事である。

XELIUS(ゼリウス)はワールドチーム、FDJの選手がとくに山岳系レースで乗る超ハイエンドなシリーズで、軽量かつ高剛性なオールラウンドバイクである。お借りできたのは良いものの、ホビーライダーの自分に乗りこなせるのか?脚がすぐに終わってしまうのではないか?という不安を抱えながら走らせてみたところ、一瞬で期待を裏切られる素晴らしいバイクであった(もちろんいい意味で)。

正直、すべてが凄すぎて、XELIUS SL ULTIMATE Discの良さを表現する言葉を失ってしまったというのが正直なところ。もう、何もかもが別物だった。プロ目線のレビューを読みたい方はシクロワイアードの下記記事を読んでいただくとして、自分でもできる限りのレビューをしてみようと思います。

ラピエール XELIUS SL ULTIMATE Disc ディスクブレーキに対応した孤高のフレンチレーサー(シクロワイアード)



目次


ラピエール(LAPIERRE)ってどんなブランド?

箇条書きでラピエールをまとめると…

  • 1946年創立のフランスの総合自転車ブランド
  • フランスのUCI ProTeam FDJに機材供給している
  • ロード以外にMTBやクロスも作っている
  • 年間生産台数はのべ9万台
  • オランダのアクセルグループのひとつ
  • 元々はフランス国内での流通がメインだった
  • 2002年から国外に進出し、最初はフランス語圏へ、次第に英語圏へシェアを拡大
  • 英語の公式サイトはこちら

自分は「ラピエール=ロードバイク」のイメージが強かったのだが、フランスではMTBがロードバイクと同等かそれ以上の人気を集めているらしい。SPICY、ZESTY AM、PRORACE SAT、EDGEなどのシリーズが国内でも展開されている。

XELIUS SL ULTIMATE Discのサイズは4種類

  • 46(適正身長160~170cm);XS
  • 49(適正身長165~175cm):S
  • 52(適正身長173~183cm):M
  • 55(適正身長177~187cm):L

身長173cmの自分がお借りしたのは「Sサイズ」。ちょうどピッタリだった。

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XSでも身長160cmからなので、平均的な身長の女性だと厳しい。蛇足だが、総務省のデータによると26~29歳日本人女性の平均身長は157.8cm、30代だと158.4cm。

思わず二度見する3Dチューブラーテクノロジー

ひと目でわかるXELIUS(ゼリウス)の特徴がここ。シートステーが(シートチューブではなく)トップチューブにまで伸び、トップチューブと一体化して大きなアーチを描く形状をしている。シートチューブとシートステーが独立した構造はゼリウスのアイコンでもあり実にカッコいい。シートクランプはカバーで内蔵されて、見た目もスッキリしている。

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シートステーはかなり細く、しなりがありそう。手のひらでグワシっと掴むと、横方向には僅かにたわむ。衝撃吸収性はかなり良さそうだ。見た目的に「剛性は大丈夫なのかな?」と心配になりそうになるが、実はシートステーの(トップチューブとの)接続部の面積が増大することになり、ねじれ剛性はむしろ強化されているそうな。だからこそ、UCIプロチームが山岳レースで使うわけ。ただかっこいいだけではなく、意味のあるデザインというわけである。

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あと、つい3Dチューブラーテクノロジーに目を奪われそうになるが、実はフォークも特徴的で、前から見るとやや膨らんだ「ガニ股」に近い形状をしている。このお陰でコーナリング時の路面追従性が向上しているとのこと。なお、これはセリウスとパルシウムで採用されている形状で、エアロバイクのエアコードはストレートなモノである。

もうひとつラピエールの特徴に「クロスしたワイヤリング」がある。右ハンドルからくるワイヤーはフレームの左へ、左ハンドルから伸びるワイヤーはフレームの右へ…という具合に交差しているのだ。このほうがワイヤーに負荷がかからず、スムーズな変速が可能になる。

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これはけっこう珍しいそうで、新規でラピエールを扱うことになったショップさんから、「あのー、完成車のワイヤリングがクロスしているんですけど、間違ってませんかね?」と誤解して問い合わせてくることもあるそうな。

XELIUS SL ULTIMATE Disc に乗ったインプレッション

結論から言うと「呆れるほどの軽さと推進力があって、しかも乗り心地が最高」に尽きる。矛盾しているようなのだが、とにかくそう感じてしまったのである。この感想は乗った直後、乗っている間、乗り終わるまでずっと変わらなかった。

まず、漕ぎ出した瞬間に軽さに驚愕モノで、強い追い風に押されているかのよう。ゼロスタートからの加速がめちゃくちゃ良くって、まるで自分の脚力が上がったかのような錯覚を味わう。シッティングで高めのケイデンスで回してもいいし、ダンシングしてもいい。剛性面では弱々しい部分は皆無。いくら強く踏み込んでもびくともしない。個人的にはシッティングで加速させて行くのが気持ち良いと感じた。

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剛性はあるのに乗り心地が一切スポイルされていないのは、きっとシートステーのおかげだと思う。相反するように思えてしまうんだけど、「速いのにマイルド」。ザラついた路面の吸収の良さは特筆もので、凸凹を軽くいなしてくれる。

ためしに XELIUS SL ULTIMATE Disc に乗った直後にパナモリ(FRCC22)と乗り比べてみたんだけど、乗り出しの重さは言うまでもなく、乗り心地の良さもゼリウスの圧勝。ニッケルを含んだ8630Rのパイプは 通常のクロモリよりも肉厚が薄く、硬さ、粘り、引張強度が強いのだが、ゼリウスと比較してその硬さを改めて理解できた。

FRCC22も硬いわりに路面の細かな衝撃吸収性はけっこうよくって、ロングライドもソツなくこなす。ゼリウスに乗るまでは「硬い硬いっていうけど、全然乗り心地全然良いんじゃね?」って思っていた。しかし、ゼリウスの吸収性の良さは段違いだった…。

言葉での説明が難しいが、クロモリはフレーム全体で下からの衝撃を吸収しているように感じ、それに対してゼリウスはめちゃくちゃ優等生なシートステーが単体で仕事している印象。手とお尻に振動が伝わることなく吸収してしまっているかのようだ。

それぞれの材質の特性の違いにもよるのでどっちがベターと決めつけられるものではないけど、ザラついた路面をより高速に駆け抜けるなら、軍配は XELIUS SL ULTIMATE Discに上がる。もう圧勝。

さらにディスクブレーキのタッチの軽さも秀逸だった。フレームのインプレではなくなっているけど、やはり油圧ディスクブレーキの効きはすごい。今回はダウンヒルできなかったので本領を発揮…とはならなかったのが残念。

強く握ると、リムブレーキにはない「独特の音鳴り」がするので、気になる人は気になるかも?調整で解消できそうな気はしますが。

……と、 平地を30キロほどXELIUS SL ULTIMATE Disc で走ってみて、欠点が何ひとつ見つからなかった。走り終わってもぜんぜん乗り足りないというか、疲労感ゼロ。どこまでも走りたいと思わせてくれるバイクだった。BB回りはかなり剛性が高めなのでロングライドの終盤では脚に来る…という話も耳にしたことはあるので、機会があれば100キロオーバーのロングも試してみたいところではある。

完成車の「XELIUS SL 600 Disc」と乗り比べて違いがわかるのか?

東商会さんによれば、「登坂でかなり激しく踏み込むとかしない限り、一般ユーザーにはXELIUS SL 600 DiscとSL ULTIMATE Disc の見分けがつかないかも」とのこと。

カーボンの質と生成する時の貼り方に違いはあって、SL ULTIMATE Discのほうがより軽量にするために細かな作業は施されているものの、「原則として、どちらも同じ性能を追求している。SL ULTIMATE Discは強度を落とすことなく軽さを追求しているだけであって、意図的に硬くしようとはしていない」そうな。

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※グレード間の味付けや強度を変えるメーカーやモデルはもちろんある

そういう意味では(重量さえ意識しなければ)完成車はものすごくコスパが良い!ということになる。

SL ULTIMATE Disc のほうはFDJの選手が乗るフレームそのものなので、「初心者には扱いにくいんじゃ…?乗りこなせないってことはあるのかな…?」という不安があると思う。その点については、「まったく心配無用。硬すぎず柔らかすぎず、しなやかで疲れにくい特性なので、むしろロードに乗り慣れていない初心者でも安心です」と太鼓判を押してもらった。これは自分も100%同意。

「ただし、軽量フレームゆえ、体重が重い人にはオススメしません。目安は体重80キロ以下が良いでしょう」とのアドバイスもいただいた。

余談だが、ゼリウスを東商会さんに返却した時に言われたのが、「履いているドネリーのタイヤはコスパ重視の安いモノで、ホイールはクリンチャーなのでまだ軽くできます。そうするとさらに乗り心地はアップしますね」というセリフ。まだ伸び代があったとは…。「もしかして、乗り心地の良さはすごく高性能なタイヤのせいでは?」とも考えていたのだが、まったくの逆だったわけである。

唯一のネガ:色の選択肢がブラックのみ

唯一欠点というか、強いてネガなポイントを挙げるとしたら「カラーの選択肢の少なさ」だろうか。まあFDJモデルなので選択肢はひとつに決まっているのだが、もう1色、明るめの色違いもあったらな~とは思う。

ただ、マットブラックは「渋めの大人っぽさ&ステルス戦闘機的な男っぽさ」があって、これはこれで気に入っている。フォークとシートチューブの白いラインも良いアクセントになっているし。

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スペーサー、バーテープ、サドルで色のアクセントは出せそうだ。あとはチェーンをゴールドにするとか。

なお、ティボー・ピノ選手カラーのモデルもあるが、こっちはリムブレーキモデルのみ。今度ロードバイクを新調するならディスク!と決めているので、残念ながら選べない。

ピノ選手の個人サイトツイッターも載せておきますね。


結論、自分がディスクロードを買うなら「 XELIUS SL ULTIMATE Discが最有力候補!」でございます…。


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