2015年から参加しているサイクリングイベント、新潟県十日町市で開催された『TOUR DE TSUMARI ツールド妻有』に今年も参戦してきたので、前後編にわけてお届けしますね。

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十日町市は、市の中央に日本一の大河である信濃川が流れ、十日町盆地とともに雄大な河岸段丘が楽しめる。市の南部は日本三大渓谷に数えられ、上信越高原国立公園の一部である清津峡、西部には日本三大薬湯のひとつ松之山温泉がある。

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…なんて書くと堅苦しく聞こえてしまうが、要するに『まんが日本昔ばなし』で観た景色がドーンと広がる場所だと思えばいい。

昨年のイベントレポートはこちら

【ツールド妻有・参戦記】 新潟で日本の原風景を愛でつつ、魚沼産コシヒカリに舌鼓を打つ ~前編~
【ツールド妻有・参戦記】 新潟で日本の原風景を愛でつつ、魚沼産コシヒカリに舌鼓を打つ ~後編~
ツールド妻有実行委員会に感謝の意を込めて、僭越ながら改善点を申し上げたい

ツールド妻有は新潟県十日町を中心に行われるヒルクライムイベント。順位を競うレースではなく、参加者がそれぞれのペースで楽しむイベントで、自分は120キロコースに先輩ローディさんと参加した。

イベント当日は快晴\(^o^)/

前日は降ったりやんだりが続いて不安定だったのが、翌朝起きたら快晴!しかも晴れているのに空気は澄んでいて、涼しい。カラッとした空気が心地よい。 5時に起床し、宿泊先の和泉屋さんにこしらえていただいたおにぎりを食べ、身支度とバイクを整えてスタート地点のミオンなかさとへ向かう。

和泉屋からは2キロ程度なのですぐだ。 ミオンなかさとは十日町市温泉総合保養施設で、日帰り入浴もできるし、宿泊も可能。昨年もイベント後に宿泊させていただき、とっても気に入っていちゃので今年も2泊目はお世話になることにした。  

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なぜ連泊するのか?それは翌日は疲労で仕事にならないから。120キロのヒルクライムって、ゴールイン後はその場にへたり込んで「もう動きたくない…この場でひっくり返って寝たい…」ってなるからだ。

補給ポイントの食事をモチベーションに走る

ミオンなかさとのスタート会場はすでにたくさんの人で賑わっている。参加者全員が同じジャージを着ているのってかなり壮観で、いい意味で異様である。 諸注意の説明や十日町市長さんのご挨拶があり、予定通り7:30にスタート。

ほぼ無風状態、乾いた空気に青い空、適度に雲が空に浮かび、最高のコンディションとなった。昨年は出発直前まで雨がパラついていたが、今年は申し分のないお天気。

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さて、ツールド妻有の醍醐味はなんといっても補給ポイントで振る舞われる美味しい補給食。120キロの行程の中で、おおよそ15キロごとに設置されている。15キロって一休みするのにちょうどいい距離で、「しんどくなってきたな…」ってタイミングで現れてくれる。じつに絶妙な距離設定だ。

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各エイドステーションには特徴があって、大釜でパエリアを炒めたり、冷汁を作ってくれるポイントもあれば、グレープフルーツの生搾りジュースが飲めたり、地元のお豆腐や名物の笹だんごが食べられたり、ボランティアのおばさま&おばあさま自家製のお漬物&おにぎり(当然コシヒカリ)が食べきれないほど並べられている。 「参加者を飽きさせないように」、という運営者側の努力と工夫のおかげだ。

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※特注の鍋だろうか。ハンパない量のパエリア

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※魚沼産コシヒカリのおにぎりが、飛ぶように胃袋に吸い込まれていく

途中、「ガリガリ君峠」という場所があって、登リ切ったところで「ガリガリ君、いかがっっすか~」と配ってくれる。これがうれしい。昨年は「保冷車が確保できなかった」という理由で配布が見送られたのだが、今回は大丈夫だったようだ。ソーダ味のガリガリ君が身にしみて美味しかった。

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たぶん、ツール・ド・フランスでお馴染みのガリビエ峠にちなんでいると思うんだけど、直線で結構キツメの斜度が続く場所があって、心が折れかけそうになる難所。バイクから降りて、押して歩いている方々もちらほらいらっしゃるほどなの。

なお、ガリビエ峠とはフランス・グルノーブル近郊にあるドーフィネ・アルプ南域にあって、ツール・ド・フランスのアルプス超えステージではほぼ毎年欠かさず登場する定番の難所。標高2642mとのことで、想像しただけで心がへし折られそうだ(笑)。

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※苦悶の表情を浮かべながら登る皆様

お昼ごはんは地元のお蕎麦屋さんが手打ちそばを打ってくれる。これが本当にうまい。どれくらいうまいかと言うと、「美味しい蕎麦ってうまいんだ・・・」って涙ぐむくらいうまい。おにぎりと各種お漬物も用意されており、炭水化物と塩分補給はバッチリ。

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※ゴザに座ってランチをいただく

各ポイントではもれなくバナナ、スイカが置かれているし、水とアクエリアスが大量に用意されているので、ボトルが1本で済むのも助かる。アップダウンが激しいので、なるべく荷物は減らしたいところなので。

とまあ、飲食に関してはまったくもって申し分のない内容。しかも公式補給ポイント以外に、有志が運営しているポイントまであって、フルーツや飲み物を振る舞ってくださるのだ。

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※終盤のASにあった塩飴、レモン飴、チーズが変化球になってうまい

さらには、補給ポイントでもなんでもないフツーの民家のおばあさんが、「ちょっと。これ飲んでいきなさい」とカルピスを差し出してくれることもある。地域全体でイベントを盛り上げている姿勢がヒシヒシと伝わってきて、とてもうれしい。

絶景を愛でつつ、豊かな起伏を昇り降り

補給食について熱く語り過ぎたので、コースの描写をすると、「アップとダウンしかない。苦しい&気持ち良い坂」が数えきれないほど繰り返される。平坦路はない。70キロとか90キロコースを選べば楽ができるかというと、そうでもなくて、たた距離が短いだけでコースプロファイルはほぼ同じ(笑)。

ツールド妻有のよいところは、一つ一つの坂がさほど長くなく、ちょっとがんばればクリアできるという点。上り坂が延々と続く本当のヒルクライムだと身体が悲鳴を上げてしまうけど、小さめの坂を登っては降りるを繰り返すので、苦しいだけではなく、ダウンヒルの楽しさも満喫できる。

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純粋なヒルクライムイベントだと、参加者の大半が男性…ということが多いんだけど、ツールド妻有は女性がけっこう目立つ。5:5ではないものの、7:3か7.5:2.5くらいの比率の印象。ふつうの女性でも十分に楽しむことができる。

「100キロのツーリングはやったことある」くらいの体力があって、乗り慣れている女性なら完走できるはず。

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とはいえ獲得標高は2600メートル(120キロコースの場合)あるので、かなり脚に来るのは間違いないです(笑)。 「ツールド妻有が初めての100キロ越えなんです~」という方がいきなり120キロコースにチャレンジすると、時間制限に間に合わない可能性があるので、まずは平坦路だけの100キロを経験したほうが良いと思う。
※レースではないものの、(運営の都合上)足切りタイムは設けられているので

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あと、ツールド妻有の大きな特徴であり、参加者が口を揃えて感激するのが、沿道で応援してくださる地元の方々。小さな子どもを連れた家族連れが「がんばれ~」って声援を送ってくれたり、腰の曲がったおばあさんが走り過ぎる参加者一人一人に微笑みながら手を振って応援してくれる。

昨年に初参加したとき、事前に先輩ローディからその話を聞かされたときは、「沿道で地元民が手を振ってくれる…そんなことが、うれしいものかなぁ…?」と、首をひねっていた(←失礼)。 しかし、実際にその目で見て自分は間違っていたことを思い知らされる。もう、めちゃめちゃ感激するのである。

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地元の皆さんの道路を(閉鎖しているわけではないけど)他府県から押し寄せた大量のサイクリストが占拠してしまっているわけで、本来ならこっちがお礼を申し上げねばならないところを、逆に「がんばって~」って応援してもらえるわけで、ひじょーにウレシイのだ。

悲しいことに、落車事故が複数回起きたようだ

昨年も今年も、落車事故が起きた。1,000人ものサイクリストが(時間差で出発するとはいえ)一斉に公道を走るわけで、事故がゼロというのはむしろ考えにくくって、残念ながら落車事故が数か所で発生したそうだ。

自分も事故現場を目撃した。事故の瞬間ではなく、落車直後。スピードが出やすい角度キツ目の下りの途中に90度くらいのカーブがあって、遠目からも「あ、減速しないと危ない」って本能的に感じる場所だった。

しかも路面がたしか濡れていた(記憶がある)。晴天にもかかわらず濡れていたということは、岩清水的なもののせいか。自分も走りながら、「他は乾燥路なのに、なんでここだけ濡れているんだろう」って感じた。

複数人が絡んだ事故のようで、原因はわからないが、下りでスピードが出たままカーブに差し掛かり、ライン取りにブレが生じて接触し……ということのような気がする。

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※見晴らしはいいし、信号もないので、つい気が緩むのかもしれない

これまで参加したあらゆるサイクリングイベントで、なにかしらの落車事故はほぼ例外なく発生していた。スキルも経験もさまざまなサイクリストが大量に走るイベントは、ふだんのサイクリングよりはるかに事故る可能性が高い。マナーを守らない(あるいは知らない)方がいたり、ハンドサインも声もなく急ブレーキをかけたり、ホイールをハスらせてくる(※)方もいる。
※ハスらせるとは、後方のサイクリストが前輪を前走者の後輪に被せるようにして走ること

前走者がライン取りを変えてホイール同士が接触すると、一瞬で後続が吹っ飛ぶという恐ろしい事態に。

参考動画


※事故発生:1分10秒

不可抗力でとっさの動きをせねばならない状況も多々あるので、誰かを責めることはできなくって、月並みな言い方になるけど「自分の身は自分で守る」ことと、「周囲には十分に注意を払って、安全運転を心がける」を厳守してほしい。

恥ずかしい話なんだけど、自分はサイクリングイベントに出かける前夜、(いい歳こいて)すごく緊張するの。楽しいはずのイベントなのに、わずかな恐怖を感じてしまう。それは、事故に対する恐怖心にほかならない。

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※スタート直前に緊張感はMAXになる

事故ったらアカン。家族と職場に迷惑をかけるわけにはイカン。五体満足で無事に帰宅する!」って言い聞かせながら床につく。

楽しいイベントだからこそ、浮かれることなく、平常心でいつもどおりの走りをすること。大勢の知らない人と走るので、緊張感を失わないこと。周囲に乗せられず、自分の力量の範囲でマイペースに走ること。行きと帰りの車の運転にも気をつけ、睡魔を感じる前にSAで仮眠をとること。何事にも時間に余裕を持って行動すること…などなど、あれこれ考えてしまう心配症なんです。

話があちこちに逸れたけど、言いたいことはひとつ。本当にくれぐれも安全運転で走りましょう、ってことです。バイクや機材が壊れることなんてどうでもよくて、守るべきは己の身体。ケガをしたら自転車を楽しめないからね。

イベント後はミオンなさかとに宿泊

制限時間の17時までにゴールインすると、豚汁とおにぎりで出迎えてくれる。この豚汁が疲労困憊の身体にしみて、「完走できてよかった…」と喜びもひとしお。

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大半の方々はそのまま帰宅されるんだけど、自分と先輩ローディはミオンなかさとに宿泊することに。理由は、「翌日仕事にならない」ほど疲れているため。いさぎよく有給を使わせてもらい、翌朝月曜に戻ることにした。

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日曜の宿泊なので、宿はいわばどこでも予約無しで取れる。松之山温泉に足を伸ばして旅館に泊まるとか、苗場方面のホテルに泊まろうかと検討したけど、結局スタート&ゴール地点の目の前になるミオンなかさとがベストと判断。だって、ここから動きたくないほど疲れているんですもの…。

「バイクを部屋に置いていいですよ」と許可をもらい、ありがたく部屋まで運ばせていただいた。ミオンなかさとって、施設はキレイだし、温泉は広々していてゆったりできるし、食事もおいしい。部屋からは信濃川の流れが見えて、たいへんリラックスできる。個人的にとっても気に入っている場所です。

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ひとっ風呂浴びて、晩ごはんを食べていたら、食事を運んでくれていた女の子(たぶん女子高生)から「ツールド妻有に参加されていたんですか?お疲れ様でした!私も走ったんですよ~」って言われてビックリ仰天。え、あの山を登った後で仕事しているの…。

疲れきってだらしない格好で食事する我々と、さわやかな笑顔でテキパキと仕事する女子高生(たぶん)の対比に、申し訳ないやらありがたいやら。少し恥ずかしかったね(笑)。


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以上、ツールド妻有2016年のレポートでした。今年もたいへん素晴らしい時間を過ごさせていただきました。大会運営に(直接、間接問わず)携わった方々に厚く&熱くお礼申し上げます。
m(_ _)m

来年も来ます!

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