皆様は、「シックスホイール」という言葉を聞いたことがあるだろうか?

“スポーツ自転車=2輪”と、“クルマ=4輪”を足して“シックスホイール”、である。要するに、車に自転車を積んで遠出して、現地で自転車を走らせて楽しむ・・・という余暇の使い方。横文字にすることで、ちょっとシャレオツな表現になっているけど、積んで持っていくってことね。

32

2015年のサイクルモードでは特設会場も設けられていて、「シックスホイール」という言葉が浸透してきたなって実感したし、各種メーカーさんもその領域に新たなビジネスチャンスを感じているようだ。

ロードバイクにハマれば、自宅を中心とした半径50キロはあっという間に「オレの庭」状態になり、1年経たないうちに風景に飽きてくる。遅かれ早かれ、「バイクを車に積んで、行ったことのない場所で走りたい…」という気持ちになるものだ。車を所有していなくても、レンタカーと組み合わせることでカンタンにシックスホイールは実現できる。

ちなみに、サイクルモード2016の公式サイトにも、シックスホイール紹介ページがあるね。しかし、内容がショボいし見せ方の工夫が足りないような…。出展者とリンクをただ並べただけで、シックスホイール本来のワクワク感が表現されていない。

IMGP2170
※2015年のサイクルモードにて

昨年の会場の様子は「新たな自転車の楽しみ方を提案した3つのハイブリッドコーナー」(シクロワイアード)の記事がわかりやすい。2016年もどうようのコーナーが設置されるとのこと。
※昨年は自分もプレス枠で取材させていただいた。その時の印象では、スバル、マツダが力を入れている印象だったね。

で、ですね。このシックスホイールこそが、自分の「究極の生涯の趣味」になると強く感じている。最高の余暇の過ごし方に必要な要素が、シックスホイールにはみっちり詰まっていることに、遅ればせながら気がついてしまったのだ。その理由について書いてみますね。

自分の住む都道府県が好きになる

自分は川口市(埼玉県)在住なんですが、もともと実家は愛知だし、東海地方でずっと育ってきたし、埼玉県に1ミリも愛着はなかった。

都内に勤めるにあたり、本当は横浜周辺の神奈川県に住みたかったけど、コスト的に折り合わず、そもそも都内に住む経済力はないし、千葉県は実家の愛知から離れるし、まあじゃあ埼玉県で手を打つか…って消去法で選んだだけの都道府県。

22

なんの思い入れもなかったどころか、内心「ダサイタマに住むことになるのか…気乗りはしないが、ここで手を打つか…」という気持ちのほうが強かった。


ところが!、ローディ先輩らに県内のステキな場所に連れて行ってもらうことで、埼玉県内の名所にたくさん気付かされた。

小江戸で有名な川越、峠が豊富で温泉もあり、風光明媚な秩父、子の権現坂へのアクセスがしやすく、サイクリングにちょうど適したサイズ感の飯能、適度なアップダウンと美味しいパン屋さんのある越生、(埼玉県じゃないけど)広大な湖と坂が同時に楽しめる奥多摩、、、などなど、川口市から気軽に日帰りで行ける距離に素晴らしい街があることを知れた。

42
※越生にあるシロクマパンにて

自転車にハマっていなければ、飯能にも越生(「おごせ」と読む)にも生涯足を運ぶことはなかったと思う。川越だって、たぶん見向きもしなかった。「観光地に行くなら、まず高速道路で県外に出るのがデフォでしょ。埼玉県内?観光できる場所なんてないよ。特産物もないし、名所旧跡もないつまらない県だし」って数年前までは思っていたもんね…。

それがどうだ。県内の日帰り自転車旅がこんなに楽しいものだったとは。 移動手段が自転車であると、車では見落としてしまう名店、息をのむ景色の数々、美味しい地の特産物にいっぱい気づく。

訪れた街を点ではなく、面でじっくり楽しむことができるので、自動車旅行より濃密な時間が過ごせるし、満足度も高い。さほど遠出しなくても、「旅行した感」が味わえるのもGOOD。観光するのに、遠出する必要はないってことだね。

01

これまでガソリンを焚いて、高速道路を延々と走って、宇都宮や日光、那須にまで足を運ばないと観光した気分になれないって頑なに思い込んでいたのが、そうではなくなった。まさに灯台下暗し。

今では埼玉県が大好き。仕方なく県内を走る・・・のではなく、「積極的に県内を開拓してみよう!行ったことのない場所を味わおう!」という気持ち。他府県からいらっしゃった方をおもてなしできる場所はいくつも頭にインプットされている。

自分の住む都道府県を味わい尽くす方法として、シックスホイールってベストな方法だと思うの。今なら自信を持って、「どんな都道府県に今後住むことになったとしても、ロードバイクで街を開拓して、その土地の良さ&楽しさを見つける自信がある」って言える。

飯がうまい&罪悪感なくたらふく食べることができる

変な話なんだけど、(自転車を持っていかない、ふつうの)旅行って、意外に時間を持て余しません?観光ガイドで検索しても、興味のないジャンルの美術館とか資料館ばかりがHITするってこと、ないですか。

「べつに熊のぬいぐるみにも、オルゴールにも興味ないし…わざわざお金払ってまで見物するものでもないような…入館料が700円?地味に高いぞ…。でも、他にろくな観光スポットがないぞ…どうしよう…どこに行こう…宿のチェックイン時間は15時からだからまだ入れないし…適当な近場の温泉に行ってしまうか…っていうか、じゃあなんでそもそもココに来たんだろう…」

ってケース。

自分はいつもこのパターンに陥る(笑)。で、「自転車を持って来るんだったな~~」って後悔する。車での移動だと、点の移動でしか観光地を巡れない。道中を楽しむってことがわりと苦手なのね。

結果的に、さして興味もない場所を、「せっかくわざわざ来たのだから…」と、さも興味あるかのようなテンションに努力して持っていき、楽しんでいる感を(家族の手前)自己演出する…という不毛な行為をすることも。

16

さらに、車移動だと大して体力も使わないのでお腹はさほど空かない。でも、観光地では食べることが楽しみのひとつなので、いつも以上に間食も夕飯もドカンと食べちゃう。ソフトクリームなんかも、観光地価格の350円とか出して夕飯前に食べてしまう。

さらにさらに、「だって、ハレの日だしさ」という意味不明な理由で、コンビニでふだんは飲み食いしない炭酸飲料とかポテチ類を買い込み、宿の部屋に戻ってTVを眺めながら腹に押し込む。で、美味しいことは美味しいのだが、軽い罪悪感にさいなまれる。

これらの罪悪感をすべて解消してくれるだけでなく、何を食べても美味しいのがシックスホイールの良さ。日中に消費したカロリーという貯金があるので、何を食べてもうまいし、なにより気分がいい。

消費する→食べる(朝食)→消費する→食べる(昼食)→消費する→食べる(間食)→消費する→食べる(夕飯)…を繰り返せるので、すべての食事を気持ちよく迎えることができる。これは自転車の旅ならでは。
※べつに泊りがけでなく、日帰りでも同じことは当てはまる

37
※ルーフキャリアがあったらいいなという気もするが…(笑)


以上、シックスホイールの旅の楽しさが伝わったでしょうか?

オクサマも、「旅行に行くなら、ぜったい自転車は持っていこうよ。ただダラダラ観光地を歩くだけじゃもったいない。あちこち走り回って訪れた街を楽しみたい」とよく話すようになった。

「自転車はあるけど、車に自転車を積んでどっかに行くってこと、まだやったことないな~」って方は、だまされたと思って一度試してみてほしい。

関連してるリンク 

オクサマ、人生初の100キロのロングライドに霞ヶ浦で挑戦する
ロードバイクで地元界隈を走るのに飽きてしまったときの対処法
フィアット・パンダにミニベロを2台を積む、超カンタンな方法
【取材記事まとめ】 ロードバイク&ミニベロが自動車に積めるかどうか