ロードバイクほど、独学で始め、我流を続けてしまうスポーツもないと思う。なんとなくショップに行き、たまたまその場でめぐり合わせた店員さんの言葉を信じ、「こんなものか」と合わせたポジションで走りだす。

大抵の人は自転車には乗れてしまうので、走ることはできてしまう。それが曲者で、仮にポジションが間違っていても、フレームサイズが微妙にズレていても、「ロードバイクって、少々の違和感は受け入れるべき乗り物なんだろう」とあまり疑問に思わない。

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自分も過去に、ショップのメカニックさんの意見を無視して、買って間もないロードバイクのサドルを独断で3センチほど上げて、ヘッドにスペーサーをMAXまではめて、「うむ、ちょうどいい。自分に最適のポジションを見つけたぞ」と悦に入っていたことがある。

で、別のお店のメカニックさんから「あんた、サドル上げ過ぎだよ」って指摘されて、自分の過ちを深く恥じた。結局、最初に指導されたサドルの高さが正しかったのだ。

>> 【ロードバイク初心者に読んでほしい】プロショップ・タカムラ製作所でポジションを徹底的に改善してもらった話

このように、ロードバイク初心者はトンデモポジションで走ってしまっていることがある。皆さんの中にも、「オレって、このポジションで大丈夫なのか…?」、「アタシ、そういえば一度も専門家に診てもらったことがないわ…」って一抹の不安を抱えている方がいるかもしれない。

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そんな方に役立つであろう、こんなセミナーを体験取材させていただいた。それがこちら。

本気でロードバイクを楽しむ・極める人のための、『豪華一流講師陣による短期集中・座学&実走トレーニング・目指せ自己記録更新!』

主催は3RUNさん、講師は株式会社ウォークライドの須田晋太郎さん。第2回目となる、「正しいウォーミングアップ、身体のケア、ペダリングやポジションの基本」で学んだことをお届けしたい。

ウォーミングアップ

ウォーミングアップとは全身に血液を送りこみ、体温を上昇させ、身体を運動に慣れさせる行為のこと。文字にすると当たり前すぎることなのだが、ちゃんとできていない人が少なくない。

ヒルクライムのような短時間で強度の高いレースはもちろんのこと、長時間のロードレースにおいてもウォーミングアップは大切。とくに、ヒルクライムレースで好成績を収めたかったら、マストとのこと。

ただ、アマチュアレースの場合、スタートポジションの確保もしなければならないし、なかなか満足にウォーミングアップできる環境は用意されていないのが現実。有利なポジションを確保する代わりにウォーミングアップを犠牲にするか、直前までウォーミングアップをする代わりにポジションを明け渡すか、難しい判断にはなる。

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※栂池ヒルクライムに参加したときの写真。まったくアップできないまま走った

また、ヒルクライムを例にとると、会場を走ることはまずできないし、できたところで身体を冷やしてしまう。よってローラーを持ち込んで、レースのわりとギリギリ直前まで回すのが望ましい。ローラーの種類は固定でも三本でも、「お好みでどうぞ」とのこと。ちなみに須田さんは「固定が好み」とおっしゃっていた。

「ベストのウォーミングアップ方法はこれ!」といった唯一の方法は存在しないのは当然だけど、プロのやり方を知るのは参考になるだろう。須田さんがレース前に行うウォーミングアップはこんなかんじ。


スタート2時間前からウォーミングアップ開始 ↓ 20分ほど固定ローラーを軽く回す

体操とストレッチで身体をほぐす

消化の良いゼリーを食べる

30分ほど固定ローラーを強めの負荷で回し、1回オールアウトするくらいまで持っていく

ちょっと休んでから、スタート地点に移動する


この方法が、須田さんにはフィットしているとのことだが、万人にマッチするとは限らない。人様からの情報はあくまで参考に留め、自分自身でいろいろ試してベスト法を見つけていただきたい。

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余談だが、須田さんはかつてヒルクライムレース(寒い季節)に出場する直前に、風呂に入ったことがあったそうだが、「体が温まって、調子よく登れた」というエピソードも披露してくれた。

日々のボディケア

サイクリスト向けのボディケアは、「ストレッチ」「体操」「マッサージ」「スキンケア」「リカバリーライド」がある。筋肉に血流を促して、疲労回復を促進することが目的。

自分はサッカーはやっていたので、運動前後のストレッチの重要さは理解している。が、サイクリングではこれまでほとんどストレッチをしたことがなかった。サッカーのように急な動作(切り替えし、ターン、ストップ・アンド・ゴー)はなく、筋肉や関節には優しいスポーツであるのがその理由。

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ただ、サイクリングでもストレッチは大切らしく、レース前には体を動かしながら伸ばす「ダイナミックストレッチ」、運動後はじっと筋肉を伸ばすスタティックストレッチが適しているとのこと。 なお、ダイナミックストレッチがどんなものかを想像できない方は、サッカーのブラジル体操を想像してもらえばよい。


※1分10秒から体操が始まる

あと、注意事項として「スタティックストレッチは副交感神経を活性化させるので、リラックス効果がある。よって、運動前のストレッチとしては不向き。クールダウンで行うべきストレッチとなる。

せっかく入念にウォーミングアップしても、その後にスタティックストレッチをしてしまったら、せっかくの準備がパーになってしまう。「運動前はダイナミックストレッチ、運動後がスタティックストレッチ」と覚えておこう。

ペダリングスキル上達のポイント

ペダリングの巧拙をうんぬんする以前に、正しいバイクセッティングができていることが大前提。自転車が効率的に進むメカニズム、人体をどう動かせば効果的か、そして安定して走らせることができるかを講義いただいた。

冒頭でも書いたとおり、自分もかつてデタラメなバイクセッティングを「これこそ正解」と信じこんでいた黒歴史があるので、この話は耳が痛かった。

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須田さんはバイクのフィッティングもできるそうで、以前トライアスリートのフィッティングを診断したところ、「サドルが適性よりも10センチ高くなっていて驚愕したことがある」と語ってくれた。

「トライアスリートってガチでパフォーマンスを突き詰める人でしょう?そんな人が間違ったバイクセッティングで走るなんてありえるのかしら」と首をひねったのだが、数年前は「自転車をトライアスロンの競技の一部としか見ておらず、半ば仕方なくやっている」という選手も存在したそうな。

よって当然セッティングは我流。プロに診断してもらうこともなかった…ということらしい。自分の感覚を頼りにせず、なるべく早い段階でフィッティングするのがよろしいとのこと。予算はかかるが、それだけの価値はある。この言葉には、自分も激しく首を縦に振った。

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なお、フィッティングというものは、「一回やったらオシマイ」ではなく、年に1回くらい受け続けるのが理想なんですって。これは知らなかったが、言われてみれば確かにその通り。筋肉の付き方も変われば、巡航スピードが変わるだろうし、それによってフォームも微調整する必要がある。

そういう意味では、自分がフィッティングを受けたのは2014年9月だったので、2年以上も経過している……そろそろ、診断を受けようと思った。

なお、須田さんからのアドバイスとして、「同じ人に診てもらう方がいい。セオリーはどこも変わらないが、適用するメソッド(理論)とか、使う機材を同じものにするため」とのこと。これもちょっと考えれば当然のこと。歯医者をコロコロ変える人がいないように、バイクフィッティングも同じ人に診てもらうのがよさそうだ。

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※愛車と乗り手を理解してるメカニックさんがいると、心強い

あと、ひとつ注意事項として、股下の長さに係数をかけてサドルの高さを算出する方法は「ナンセンスで当てにならないですよ」ということだ。単純に股下のセンチメートルだけで正確にはわからない。なぜかと言うと、つま先を下げ気味にするライダーもいれば、フラット気味で漕ぐライダーもいる。実際にバイクにまたがってペダリングをしながら最適値を探るべきなのだ。

「セッティングはお金はかかるけれど、意味も価値もある投資ですよ」とのことだった。

さて、前半はココまで。勉強になることばかりで、目からウロコだった。自転車歴7年目になる自分ではあるが、まだまだ知らないことが山のようにあると思い知らされた。

次回は、「筋力&重力を効率よく使う」、「クランク角度と効率」、「ペダリング運動で使う動き&筋肉」、「クランク角度による筋肉の連動」をお届けします。
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セミナーは今も受け付けているとのこと。詳細とお申込方法はこちら