ホイール交換とかアップグレードを検討するとき、誰しも一度は「ディープリムホイールはどうなんだろう?」と考えるはず。

なんて言っても、見た目が一気にかっこよくなる。もっとも手っ取り早くおしゃれしたいなら、ディープリムはひとつの手である。

自分もカンパニョーロの「BORA ONE」は検討中でして。35mmか50mmか?クリンチャーかチューブラーか?でまだ迷っているが、近い将来に買ってしまうことになりそうな気がする。

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※このチューブラーホイールは我が家に眠っている…

ちなみにオクサマの承認をどう得るのか?という難関は突破できていない。いくらメカに疎いオクサマとはいえ、さすがにシャマルミレが50mmのBORA ONEにある日突然変わっていたら気づかれるのは間違いない。

さて、自分のようなディープリムホイールを買いたい人にとって、「横風は大丈夫なんだろうか?」「日常用のホイールとして様々なコンディションで使えるのだろうか?」という2点が最大の懸念だと思うが、そんな不安を解消してくれるGlobal Cycling Networkの動画がこれである。

Can You Ride Aero Wheels In Crosswinds?(横風でもエアロホイールで走れるか?)



ZIPPのスポンサード動画なのでそこは割り引いて見るにしても、ちゃんとデメリットにも触れてくれる良い動画だったので、翻訳してご紹介したい。

目次


デュープリムホイールのメリットとデメリット

デュープリムは前からの空流をスムーズに後ろに流してくれるので、ローハイトのに比べて同じパワーでより速く走れるようになる。このメリットは大きい。

しかし、前からの風にはめっぽう強いが、斜めになると大きなリムが災いして空気がぶつかり、リム周りに乱気流を発生させ、後ろに引っ張る作用が働いてしまう。さらに真横からの風を広い面で受けてしまうので、どうしてもハンドルが持っていかれやすくなる(とくにフロントホイールは)。

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ディープリムホイールを躊躇している人は、このことを知っている。ふらつくだけならまだしも、それが原因で車道側に押し出されようものなら命に関わる。自分もタイレルのCSI(451の20インチホイール)に50mmのバトンホイールを履かせているが、冬の強い北風とかが真横から当たると「うおっ」ってなることはたまにだけどあるっちゃある。700c のホイールならミニベロよりはマシだとは思うが、使ったことがないので感覚としてどの程度のものかがつかめていない。

プレゼンターのOllie さんのタイムトライアルの経験でいうと、フロントホイールがふらつくと、恐怖のせいでハンドルの荷重を抜いて上体を上げ、結果として前からの空気抵抗を受けてしまうということが起きていた。風が強い日はこれを繰り返すはめになり、ペダリングを止めてしまってタイムが伸びなかったと話していた。ちなみにOllie さんは自転車ジャーナリストでもあり、有機化学の博士号もお持ちだそうな。

ママチャリにしか乗らない人にはイメージしにくいかもだけど、実際に700cのロードバイクに乗ってて風で飛ばされ、土手にコケるってことはふつうにある。利根川のような吹きさらしの場所で強い横風が吹く日とかだと、ディープリムホイールを履いてなくても吹き飛ばされて土手に突っ込む……のは珍しくない。

2018年のツール・ド・フランス王者のゲラント・トーマス(チームスカイ)も、2015年のGent-Wevelgem(ヘント〜ウェヴェルヘム) で側道に吹き飛ばされてしまったことがある。まあ、その後レースに復帰して3位の表彰台に上がっているのはすごいと思うが…(笑)。

暴風雨のヘント〜ウェヴェルヘム 過酷なサバイバルをパオリーニが制する

コンディションによっては、デュープリムホイールが逆に災いしてしまうこともある。最悪のシチュエーションは、ゲラント・トーマスのようにバイクもろともふっとばされて落車してしまうことだが、まあめったに起きることではないのも事実。

使い勝手の良いリムハイトは何ミリなのか?

扱いに若干気を使わねばならないデュープリムホイールだが、悪いことばかりではない。Ollieさんは通年で40~60mmのデュープリムホイールを履いていて、理由は「どんな状況でも、なるべくエアロ効果を得たいから」とのこと。

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つまり、50mm前後であれば常用しても問題なさそうだ。自分は35mmハイトで考えていたけど、これを聞いて50mmも真剣に検討し始めている。

あと、最近のデュープリムホイールはかつてのようなV字形状ではなく、乱気流をおこさないよ「U字加工」が施されているので、横風に以前ほどシビアにならなくても済むようになった。

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通常の世界では風はあらゆる方向から吹くし、角度も強度も常に変わる。V字形状のデュープリムホイールは真正面からの風に対しては強かったが、角度がつくとふらつきやすいという弱点があったわけ。

そんな問題を解決すべく、ホイールデザインも最適化されてきた。それがU字デザイン。

昔:V shape(V字形状)
今:Toroidal shape(U字型の環状体:イメージはドーナツ)

Toroidal shapeのほうが横風に強い。強いというか、スムーズに受け流してくれる。1996年時点でToroidal shape のパテントをHeadとZippが持っていたが、それを開放したおかげで他社もToroidal shapeを作るようになったそうな。

さらに新世代エアロホイールが登場する

たとえばZippのSawtoothリムデザインがそれで、ノコギリの歯のようなギザギザの波型リムが目を引く。

ホイールが回転すると自ら細かな気流を生み出し、乱流の発生を抑えるとのこと。大きな乱気流が発生する前に、わざと小さな乱気流を細かく発生させ、大きくさせないでおく…というメカニズムらしい。

ZIPP公式サイトの内容を引用しよう。

開発にあたってエンジニアたちが注目したのは、ザトウクジラの水中での素早く優雅な動きでした。彼らの持つヒレ部分の特殊な形状とサメ肌の様な質感が、水中での滑る様な動きを実現していたことに着目し、4年間に及ぶ開発の末、過去最高のエアロバランスを持つ53/58mm高のノコギリ形状のリムが生みだされました。

まさか座頭鯨がホイールデザインに一役買っていたとは…。

Sawtoothというリムに加え、HexFin ABLCディンプルというゴルフボールのようなイボイボ加工がリムの内径に沿って空気の流れを生みだし、従来のホイールでは不可能だった後ろ方向へのドラッグの低減と、色んなヨー角での横風抵抗を低減させている。とにかく色んな技術が詰まったホイールらしい。

見た目の好みが分かれそうだが、空流に徹底的にこだわるなら、ZIPPの454シリーズを検討されてはいかがだろうか。ちなみにお値段は前後セットで50万円以上するが…。

日常的にディープリムを楽しみたいなら、40〜50mmハイトまでっぽい

横風に最適化されてきている昨今のディープリムホイールではあるものの、ローハイトホイールのほうが横風に関してはベターなのは間違いない。なので、そこが心配ならディープに手を出す必要はないともOllie さんも言っている。

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※さすがにこれはディープすぎるかな…

自分も完全に同意で、見た目のインパクトとかカッコよさはディープリムに劣るかもだが、カンパニョーロのシャマルミレでも十分すぎるくらいカッコいいと思う。ディープでなくてもオシャレなカスタマイズはぜんぜん可能。

シャマルミレはリム面にプラズマ電解酸化処理が施されていて、そのせいでタイヤの黒と一体化して、べつにリムハイとは高くないのになんだか高く見えてしまうって錯覚効果もあってGOOD。フルクラムのレーシング ゼロ NITE(ナイト)も同様。余談だが、プラズマ電解酸化処理とは「金属を酸化させて三層構造の結晶を作る」ことで表面硬度と磨耗の耐久性を高め、ドライ&ウエット両方のコンディションでも制動距離を減少させる仕組み。

Ollieさんのおすすめは、

  • タイムトライアルするなら:超ディープな70〜80mm
  • 日常で使うなら:ミッドハイトの40~50mm


と語ってて、経験上、50mmハイトまでがあらゆるコンディションで多目的に使うのにちょうどいいそうな。ZIPPの858はめちゃくちゃ性能は高いけど、用途がやや限定されてしまう。

ミッドハイトのホイールで走りにくいと感じるような日は、そもそも走らないようにしている」とも。

ただ、ひとつ注意点があって、身体の小さい人、体重が軽い人はディープリムホイールは避けたほうが良いかも。とくにフロントホイールの風の影響を受けやすいので走りづらくなるらしい。

ということで、BORA ONE買うかーーーー買っちゃうかーーーーという心境であります。う〜む、オクサマにどう話をもって行こうか…。タイレルのCSI買ったときのように、プレゼン資料作ろうかな…。ホイールを買い換えるべき正当な理由も論理的な説得もできる自信はないけれど。


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