電動アルテグラ(Di2)のR8050 を導入して3週間ほど。すでに500キロほど走った。

導入するまでの心の移り変わり、逡巡する様子、最終的にR8050 に決めた理由等はこちらにまとめたのでどうぞ。( ◠‿◠ )

6800系アルテグラを卒業し、Di2(アルテグラR8050)を導入することにしました

一時期はカンパニョーロのコーラス、スラムのフォースも考えたのだが、終わってみれば、安定のシマノに落ち着いてしまった。(いつか他社コンポも使ってはみたい)

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電動コンポの性能と向き合うべく、ヒルクライム(埼玉県秩父の白石峠)で試してきたので、インプレッションしてみます。

目次


電動アルテグラR8050の変速アクションは楽チンのひとこと

機械式ならではのメカニカルな挙動が好きだったので、Di2化してスポイルされてしまうのではという危惧があった。

何でもかんでもスイッチひとつでできてしまうことで、リアリティさというか、己の力でコントロールしている実感が失われるのではという心配だったのだ。

しかし、実際使うとストレスフリーさに呆れる。サクサクとギアチェンジができて、快適極まる。「プロ選手の大半が電動コンポにシフトしてきているのも納得だなー」と思ってしまった。

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とくに、フロントギアをインナーからアウターにヨッコイショと持ち上げるあの左手首の動作が無くなったのが最大の喜び。常時シンクロモードで使っているので、そもそも左指を使う場面がゼロ なのだ。

街中でのギアチェンジは快適で楽しく、ヒルクライムではメンタルストレスを除去してくれる印象。登坂時の脚に神経を集中させたいとき、指で押し込む動作はなるべくしたくないというか、気が散るのである。そこから解放されたのは大きい。

電動アルテグラR8050のシンクロモードの挙動について

使っているスプロケットは14ー28Tのジュニア版。「トップが14Tで足りるの?下りで回し切っちゃわない?」と訊かれることがあってまあその通りなんだけど、自分はそんなにスピードを追求しない乗り方なのでジュニアスプロケットがちょうどいい。

シンクロモードがどう動くかを説明すると…

フロントアウターの場合

リアを5速、4速、3速…と落としていくと、「2速」まで軽くできる(フロントアウター、リア2速)

1速に落とすと同時に、フロントがインナーに落ちる

一瞬遅れて、リアが2速から4速に自動に上がる(フロントインナー、リア4速)

ちょうどいいギアレシオの位置にチェーンが収まってくれる

この動作が全て右手の人差し指だけでできる。左手でインナーを落として、すぐさま右手でかしゃかしゃと追いかけるようにギアを上げる動作が不要なのだ。これがシンクロモードの機能。逆の動作(インナーからアウターへと重くしていく)のも右指だけでOK。まー、なんちゅう便利な機能であることよ…。

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ひとつ注意点として、フロントアウターでインナーロー(1速)とフロントインナーでアウタートップにはギアは入らない構造になっている。(つまり、たすき掛けで走れない)

が、むしろメカの保護につながるので良いことだし、わざわざたすき掛けしたいユーザーもいないだろう。シマノの配慮に感謝である。
※そういう意味では22段全てをキレイに使い切るわけではない
※なお、Di2はデフォルト設定のまま、カスタマイズはせず使っている(カスタマイズは可能)

電動アルテグラR8050には「アウター←→インナー変速時の微妙なタイムラグ」があるっちゃある

気になる点もありまして、フロントがアウターからインナーに落ちつつリアが2段上がるとき、リアの動作が終わるまで一瞬のタイムラグがある。

フロントディレイラーの動きはすごく素早くって、リアがカシャカシャと2枚アップする瞬間だけ、ほんの少し脚の入力を抜くといい感じに変速し終わるイメージ(伝わりますかね?)

ヒルクライム中でずっと踏み込んでいるときであっても、フロントディレイラーを動かす場面では一瞬力を抜くといいと思う。まあ、激坂だとそもそもフロントを動かすことはほぼないですが…。

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このタイムラグ、最初は「あれ?遅い?」と思いかけたけど、そういえば機械式でも同じくらい時間はかかっていた。むしろ機械の方が正確に挙動してくれる。アップダウンの激しい地形でいちいちフロントを上げ下げしては、感覚と経験で同時進行でリアを変速させる…よりはるかに楽。結果、慣れの問題だとすぐわかった。

なお、きつめの坂と言われる(少なくとも自分はキッツイです)白石峠を登っているときでも、そのタイムラグで失速するようなことはなかった。

Di2のほうのデュラエースはもうちょい速い変速をするのだろうか…?変速スピードに差があるのかどうかは気になるところだが、なんとなく「同じ」である気がする…。

電動アルテグラR8050は、フロントからインナー、あるいはその逆の動作を起こす前に音で知らせてくれる

フロントアウター状態でリアを2速まで落とすと、「ピピー」と音がする。フロントインナーで6速まで上げても同じく「ピピー」音が。

これは、「次の変速アクションでフロントを上げ(下げ)ますよ」という告知音。この音がしたら次はフロント変速が行われるということで心の準備ができるのだ。

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これ、何気にすごく助かる機能でして、フロントが動く瞬間って、やはりどうしても入力の変化が脚に伝わってくるじゃないですか。マニュアルで動作していれば心の準備は不要だが、Di2側に制御させていると、「おわっ、このタイミングでフロントが変わるんだ」ってちょっとびっくりするはず。事前に音が鳴ることで心の準備ができる。

斜度が激しい坂を登っているとき、意図に反してフロントギアが変速すると、地味に疲れが溜まって無駄に消耗するのだが、それがない。
※カスタマイズすれば音を消すこともできるが、自分はあえて残している

ふと、「プロとか実業団選手は(周囲のライバルに情報を与えないよう)音を出さない設定にしているんじゃないかなー」と思ってしまった。実際はどうなんだろう。

電動アルテグラR8050はギアを使い切ると、「ピッ」音で知らせてくれる

インナーロー(一番軽い)、もしくはアウタートップ(一番重い)ギアまで来ると、「ピッ」と音がして「これ以上は上げられ(&下げられ)ませんよ」と教えてくれる。これもヒルクライムでは有り難い機能。

疲労が限界近くまでくると、インナーローで走ってても「まだもう1枚残っているんじゃないか…きっとそうだ…」って都合の良い希望を持ってしまうことありません?

貧脚の自分はわりとありまして、右指でレバーを押して、スカッとなり「そうか、すでにインナーローであったか…」と心で泣く…ことがよくある。

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限界を超えてひたすらキツく、脳みそが止まって無心で回しているシーンでは、「もしかして、自分はフロントを落とすことを忘れ、アウターのまま登っているのでは…であれば、インナーに落とせばもっと楽になれる…よし…」と思って左指を押し込み、レバーが空を切り、「だよね…(知ってた…)」ってなることも。この一連の流れがメンタルに来る。

「ピッ音」のおかげで「インナーローに入った瞬間」がわかるので、あと1枚残っているかも…的な無駄な希望を持つことがなくなるし、「まだギア余っているかな」と目線を落とす必要もない。さらに、手元のインフォメーションディスプレイで「どのギアを使っているか」が一目でわかるのも地味に助かる。Di2って、ヒルクライム向きだわ~ってつくづく感心した。

ちなみにインフォメーションディスプレイは、変速した瞬間に表示されるが、数秒後に消える(電池消費を抑えるためだと思う) 。

電動アルテグラR8050はブラケットが細くて持ちやすい

びっくりするほど細い。なんだこれ。走ってすぐに気づいた。薬指と小指でしっかりホールドできて超絶持ちやすい。

6800系アルテグラのブラケットは少々太かったので、違いがすぐに分かった。9000系デュラに比べてもさらに細い。やはり、ワイヤーが通っていないのが大きいと思う。

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Di2のメリットとして「変速動作の楽さ」が取り上げられやすいけど、ブラケットの細さによる握りやすさも同じくらい大きな利点だと声を大にして言いたい。

登坂時もダウンヒル時も、ブラケットをしっかり握れることで安心感につながる。下ハン時にブレーキに指が引っかかりやすくなり、ブレーキングしやすさがアップした。こういう細かい部分にも進化を感じる。

あと、ブラケットにはパターン溝が彫り込まれている。

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これがあるとないとではけっこう違う。ゆるく握っていても手のひらにグッと食い込む感触があって、ダンシングでバイクを振ってもぜんぜんズレない。

しかもこのパターン、表だけじゃなくって裏も掘られているのだ。

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かなり芸が細かくて、感心。

電動アルテグラR8050のSTIレバーの操作方法と動きが機械式とはちょっと違う(すぐ慣れるけど)

ブラケットが小ぶりで握りやすくなったことに感激しすぎて、じつは使い始めてから1週間気がつかなかったことがある。それはレバーの構成と操作方法。

機械式はご存知の通り、

  • シフトアップ:小さなレバーを内側にクリック
  • シフトダウン:ブレーキレバーを(小さなレバーもろとも)内側に押し込む

である。

ブレーキレバーに「引く;ブレーキをかける」「横に倒す:シフトダウンする」の2つの役割が持たされている。

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※6800系アルテグラ(機械式)です

それに対し、Di2(R8050アルテグラ)のほうはブレーキが横に動かない。引いてブレーキをかけるのみ。よって、横にグラグラ動くことはない。

では、どのようにシフトアップとダウンをするのかというと、シフトアップは機械式と同じで小さいレバーをクリックする。

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※ここでシフトアップ(重く)する

で、シフトダウンのレバーはブレーキレバーとシフトアップレバーの間にあるのだ。機械式はレバーが2枚構成なのだが、Di2は3枚構成(シフトアップ、シフトダウン。ブレーキレバー)なのだ。自分はそのことを知らず、ずっとブレーキレバーを指で押し込んでは、「硬い…動かしにくい…」と首を傾げながらシフトダウンしていたのである。

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※ザラザラのレバーがシフトダウン

Di2ユーザーには失笑されそうなほどおバカなミスなんだけど、機械式しか使ったことのない人は最初は同じ勘違いをしてしまうんではなかろーか?と思ったりした。

乗り始めて1週間後、改めてSTIをまじまじと観察して、「あれ!?レバーが3枚構成やんけ。も、もしかして真ん中のがシフトダウン用で、ブレーキレバーは横に動かないのでは…(ぐいっぐいっ)動かない…なんたる失態…」ってなった。我ながら、すごく恥ずかしい気持ちになった。そりゃ硬いって感じるわけだ。

んで、さらにレバーをよーく見ると、表面がシフトアップ用はツルツル、シフトダウン用はザラザラになっている。このおかげでミスタッチがない。このことに気づいてから、シフト操作が抜群に良くなった。まあ、良くなったと言うより本来の操作方法ができるようになっただけの話なのだが…(苦笑)。

ということで、自分のようなおっちょこちょいはそうそういらっしゃらないだろうが、Di2デビューするときはお気をつけください。(^_^;)

電動アルテグラR8050はカンパニョーロ愛好家にも大好評

ロードバイク先輩に当たる人にも試乗してもらったところ、大絶賛された。その人は徹底的なカンパニョーロユーザーで、シマノは苦手にしていたのだが、その理由が「ブレーキレバーが横にグニグニ動くのがどうも気持ちよくない」なのだ。が、R8050アルテグラのブレーキレバーはブレーキを引く方向にしか動かないので、ぐらつかない。よってすこぶる好評。

機械式ブレーキレバーの不満が消え、ブラケットも握りやすいサイズ。これならカンパ派の僕でも欲しいなあ

と話していた。

カンパ派の彼も認めてくれるなんて!とちょっと嬉しかった。

電動アルテグラR8050のブレーキ性能は6800系とどっこいどっこいか

ブレーキ性能は引き続き良いのだが、R8000になって劇的に変わったか?と問われるとそうでもないかも…。まあ、6800系アルテグラのブレーキ性能がすでにかなり優秀ってのもあるかなと。逆にいうと、ブレーキだけR8000に交換しても感動は味わえない。やるなら丸ごと全部…ですかね。

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シマノのアルテグラ(R8000)ロングタームレビューの海外記事を翻訳してみました」という記事にも買いたけど、6800からR8000(機械式)へのアップグレードはそんなに変化がないので、焦ってやる必要はなさげかも。
※これから新車を買う人は、迷わずR8000が選べていいですね( ◠‿◠ )

電動アルテグラR8050のバッテリーがすっごく持つ

450キロ走って残量インジケーターは目盛りひとつ減ったのみ。走り方にもよるが、こんなに持つんだと驚いた。自分の走り方なら、1000キロ行けそうな予感だ。

バッテリーを一番消費するのはフロントギアの上げ下げでして、埼玉県在住&平地メインの関東平野を走る自分はインナーを使うことはあまりない。よって、電池消費も進みにくいのかなと。

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アップダウンの連続する地形とか山間部にお住まいの方は、フロントの動作が増えるので電池消費はもうちょい進みやすいかと。

白石峠にアプローチするまではフロントアウターとインナーを入れ替えながら走るが、いざ峠に入るとインナーに入れっぱなし。白石峠って、ほぼ休める区間がないですよね…。(つらい)

充電方法はいたってカンタン。同梱のアダプターに載せるだけ。山方面にお住いの方でも、月に1回の充電で十分のはず。

電動コンポーネントだとむしろ輪行しやすい

電動化していることによるデメリットはゼロ。機械式と同じ手順でバラして組み立てるだけ。電動による配慮は特に不要。にもかかわらず、輪行を3回やってみて、「機械式よりラク」だと感じた。

何がラクかというと、リアディレイラーからシフトワイヤーが突き出していないため、エンド保護金具を付けてバイクを立てたときに地面に接触しにくい。

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これまではチェーンを輪ゴムで引っ張って、リアディレイラーを強制的に持ち上げることでワイヤーを地面に接触させないようにしていたのだが、その手間が省けた。

シャドーデザインになったことで、横への張り出しは軽減されたのもいちおうメリットだが、せいぜい1~2センチの話なので、劇的に何かが変わった印象はない。

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あと、2本のシフトワイヤーが無くなったおかげで、ハンドルにかかっていたテンションがかなり消え、クルクルとヘッドが回る。ハンドルを90度回転させやすくなったおかげで輪行バッグの出し入れがしやすくなった。

電動アルテグラR8050の実走インプレッションまとめ

R8050アルテグラのGOODなとこ

  • 操作が軽い!ラクチン!
  • シンクロモードはヒルクライムで大活躍
  • ブラケットが細くて持ちやすい
  • 心も体も疲れない。ストレスフリー

R8050アルテグラのBADなとこ

  • マジでない…本当に何の欠点が見つからない…
  • スイッチ的な感触がヤダって人はいるかも
  • しいて言えば、充電の手間がある(が、無きに等しい)
  • そこそこお値段がする(機械式デュラエースと肩を並べる)


機械式デュラエースに行くか、それともDi2 アルテグラ(R8050)にいくか…実に悩ましい問題だと思う。

「機械式コンポーネントは試し尽くしたなぁ」って方は、電動化も視野に入れてはいかがでしょう?味をしめて機械式に帰ってこれなくなっても責任はとれませんが…(笑)


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