これまで海外のサイクリストさんはベトナム在住の方のみでしたが、今回は2人目となるKさんのご登場です。在住国はイタリア!自転車本場ですね。

イタリアに渡ったのが33歳のときで、現在は60歳。ほぼ人生の半分を過ごしていらっしゃるKさんのバイクがチタンのビアンキと……これまた渋いです。というか、チタンのビアンキなんて見たことも聞いたこともないので興味津々です。

イタリアの自転車事情とともに、お話を伺いました。

S9Matta_2022_1
※風情あるレンガ…(^^)

<オーナーさん>
  • Kさん(60歳・男性)
  • イタリア・ピエモンテ州アレッサンドリア在住(33歳だった1995年から)
  • ビアンキのチタンロードバイクS9 Matta Titanium

目次


自転車を始めたキッカケ

2007年、44歳の時です。運動不足解消のために通い始めたジムはすぐ飽きてしまい、代わりの新しい趣味を持ちたかったんです。

当時の日本の自転車ブームに影響されたのもあって、2007年秋にビアンキのクロスバイク「Spillo10」を購入して徐々にハマりました。その1年半後の2009年3月にロードを購入しました。

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イタリアではクロスバイクは主流じゃなくて、大半の方は最初からMTBかロードバイクにいってしまうんです。

愛車との出会い&選んだ決め手

『まちがいだらけの自転車えらび』(エンゾ早川)という本に影響されて、当初はクロモリフレームを探していました。

町の自転車屋の倉庫に売れ残りのチタン完成車(サイズぴったり)「S9 Matta Titanium」(2006年モデル)があり、店主が「バラして好きなパーツで組んでもいいよ」と言ってくれたので、その話に飛びつきました。

S9Matta_2011

チタンは高嶺の花だと思っていたので、信じられない思いでしたね。

コンポはアルテグラをベローチェへ、ホイールはユーラスを手組みのチューブラーへ…とグレードダウンしたので、値段が元の完成車定価(2400ユーロ=約30万円)より安くできたのも良かったです。

2009年はエントリー〜ミドルグレードのロードバイクがアルミからカーボンへ移り変わっていくタイミングで、まだモノコックがメインじゃなく、移行期でした。で、チタンはそんな時代に取り残されてあまり見向きもされない存在だったんです。だから値段も今のチタンフレームの相場から考えれば信じられないほど安かった。

S9 Matta Titaniumに乗ってみた感想

所有したロードはこれ1台きりで、後は借りて乗った経験しかないのであまり比較はできませんが、少し重い(フレームで1.8kg、全体で8.6kg)ことを除けば、ネガティブに感じるところはありません。乗り手のレベルが低いので、これで十分です(笑)。

S9Matta_2015_2

カーボンフレームがほしいって気持ちはないですね…レーシーなバイクはどのみち乗りこなせないですし。ただ、ホイールを手組みからカーボンに変えたら、劇的に走りが軽く&速くなって嬉しかったです。

13年近く乗りましたが、ぜんぜん良いですよ。やれたかんじもありません。

Specialized TarmacやPinarello Dogmaなど、レーシーなカーボンバイクを借りて乗ったこともありますが、それらよりも乗り心地はいいし、クロモリ(90年代のMerckx)と比べると振動吸収では敵わないものの、その分動きがきびきびしている感じがします。

カーボンは軽くて速いのは確かですが、私は「スチールが好き」という気持ちが基本にあって、自分の好みに合わせて手を入れてきたので、他のロードバイクに乗り換えたい気持ちが起きないほど気に入っています。

ただ、後でお話しますが、健康上の理由でEバイクに乗り換えざるを得なくなりまして…。

他に検討したメーカーやモデル

同じ自転車屋にあったOLMO(イタリアの中堅メーカー)のクロモリフレームですかね。ただ、カーボンバックだったので二の足を踏みました。

カーボンは劣化してしまうし。できれば完成車ではなくフレームから組んでもらいたいと思っていましたが、時代はもう完成車主流に移っていたし、スチールフレームも時代遅れになってきていたのであまり選択肢はなかったです。

S9Matta_2018

もし予算に余裕があれば、レトロじゃないモダンなクロモリフレームをオーダーしたかったですねぇ。

結果、S9 Matta Titaniumの1台だけを、ずっと乗り続けてきたわけです。

自転車に関する情報の仕入先

影響を受けた本を1冊挙げるなら、『夢のロードバイクが欲しい!』(by ロバート・ペン)という英国の方が書かれた書籍です。

以前は「rouleur」や「ciclismo」などイタリアや英国の自転車雑誌を時々買っていましたが、最近は買わなくなりました。

最近は「Gran Fondo」「La route」等のWebメディアばかりですね。
安井さんが本音で書いている「La route」は面白いですよ。

自身のこだわり

S9 Matta Titaniumを買ったときには、せっかくイタリアにいるのだから全部Made in Italyにする(シマノには日本で乗ればいいし)というこだわりがありましたが、その後シートポスト(Kent Eriksen)とサドルとリアカセットをMade in USAにしました。

エリクセンのチタンシートポストSweetpostは純粋にかっこよかったから。リアカセットは、カンパニョーロ10速の純正が13x29までしかなくて、最初はそれを使っていたのですが、貧脚なのでロー側が足りなくなって、アフターマーケットで唯一の存在だったIRD(アメリカの部品メーカー)の12x32を入れました。

でも、IRDはカンパ用のカセットの製造を止めてしまって、今ではもうスペアも手に入らないんですよね。今どき10速なんて需要もないだろうから仕方ありませんが。

S9Matta_2015

サドルは一時、Selle Anatomicaという穴あきの革サドルを使ってみて、すごく快適だったんですが、ホイールをカーボンに替えたら場違いなほど似合わなくなったので、その後はFizik(Antares)やSelle Italia(SLR boost SuperFlow)を試して、最終的にスペシャライズドのPowerに落ち着きました。

タイヤは、当初かっこつけた成り行き上ずっとチューブラーでしたが、次に買うなら2-way- fit のホイールを買ってチューブレスにしたいと思います。第一候補たるべきShamal Ultra DBはもう入手困難ですが…。

あとは、分相応、身の丈に合った仕様にするというのはあります。パーツはミドルグレード、貧脚に合わせて歯数の大きいスプロケットを選ぶとか。

イタリアでのお好きなコースや好きな景色

ブドウ畑が連なる丘陵地帯(ランゲ丘陵)、頂上から海が望める峠(ジェノバに近いアペニン山脈)、ジロ・デ・イタリアの伝説的な峠(コッレ・デッレ・フィネストレ)ですね。

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家から往復100km の場所が、ファウスト・コッピ(Fausto Coppi)さんの生まれ故郷で、お墓や記念館があります。

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ツール・ド・フランスで2度の総合優勝、ジロ・デ・イタリアで5度の総合優勝を果たした伝説的な選手です。

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住んでいるのは、ピエモンテ州東部にある人口10万人ほどの小さな町なのですが、ワインの産地でアップダウンが多く、走りがいがありますよ。

自転車が趣味になったことで起きた変化

地元の人間関係が広がったのと、地理や歴史・文化に対する興味が深まりました。

いつライドに出るかを考えて、仕事の段取りを組むようになったし、ウェアやパーツをネットでウィンドウショッピングしている時間も増えた気がします。

最近買って良かった(or 失敗した)サイクリンググッズ

<良かった>
  • トップチューブバッグ(ジャージのバックポケットが軽くなった)
  • ボントレガーのFlareリア用デイライト(後ろから見られている安心感が違う)
  • ミヤタのチューブラーテープがよい!(10年以上使い続けている)

<失敗した>
  • Raphaのウィンターオーバーシューズ

いわゆる冬用カバーなんですが、シューズを履く前に一旦足首を通して、その後シューズを履いてその上から被せるタイプなんです。ところが履き口の伸縮性がなさ過ぎて超履きにくいです。かっこいいんだけど(苦笑)。

つい立ち寄るお店

よく通る丘の上の村にあるバールです。
夏はジェラート、それ以外の季節はコーヒーを楽しんでます。

イタリア人のサイクリングの楽しみ方

私はソロで走ることがほとんどですが、イタリア人は友人と一緒に走る人が多いです。

イタリア人は家族と友人のネットワークが非常に強くて、同じ人達と深い交流を好む傾向があります。

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あと、自転車レースが好き、バイクも車も好き…な、お国柄ですね。

コロナになって変わった習慣、自転車との付き合い方

地方都市在住で自宅がオフィスなので、コロナの影響はほとんどありません。

さきほど「健康上の理由でEバイクに乗り換えざるを得なくなった」と言いましたが、それは心臓の問題です。不整脈(心房細動)のアブレーション手術を2回しても解決せず、心拍をあまり上げられない(薬で抑えている)ので、電動ロードバイクに乗り換えることになりました。

それまでは年間3,000km前後乗っていたのが、ここ3年は半分以下に落ちてしまったのが残念です。

心房細動とは

心房といわれる心臓の上の部屋が小きざみに震え、十分に機能しなくなる不整脈のひとつ。 動悸がしたり、めまいや脱力感、胸の不快感を感じたり、呼吸しにくい感じがしたりすることがある。心房細動自体は死に至る病気ではないものの、放置すると「脳梗塞」や「心不全」を招くことがあり、注意が必要。加齢にともなって起こりやすくなるが、働き盛りの若年の方にも起こり得る。自覚症状のない人も多い。

引用元:ジョンソンアンドジョンソン

どんなEバイクに?

ヨーロッパは電動スポーツバイクの選択肢が車種、モーターともに豊富なので、モーターの力を借りてまた距離と獲得標高を伸ばそうと目論んでいます。

MTBは完全に電動にシフトしているんですが、ロードバイク、グラベルはまだこれからですね。

EロードじゃなくEグラベルにしようと思案した結果、キャノンデールの「Topstone Neo SL2」を選びました。日本では認可されていないモデルで、リアハブがモーターになっている軽量タイプです。

※後日談※ Topstone Neo SL2が納車されました!

1週間で120kmほど乗りましたが、いい意味でハブモーターのEグラベルに抱いていたイメージ通りのバイクで、満足しています。

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ロードバイクならではの軽快感やスピードの伸びは全然なくて、その点では別物と言ってもいいですが、挙動がもったりしている分安定感があってデリケートなところがなく、モーターも平地でもアップダウンでも存在をほとんど感じないくらい自然にアシストしてくれるので、気を張らずにリラックスして乗れるところがすごくいい。

リアハブに2kgのモーターが乗っているからバランス的に後ろが重いんですが、それもほとんど気になりません。

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唯一の欠点は、平地で27-28km/hを超えると(アシストは25km/hまで)、貧脚に加えて15kg弱ある車重、40cのグラベルタイヤ(WTB Nano)もあってペダルが重く感じ、スピードが乗らなくなるところです。

「平地は27km/h巡航まで」と受け入れてしまえば、登りや未舗装路でのアシストの有難さ(無理せずちょうどいい負荷で走れる)、それがもたらしてくれる楽しさで十分お釣りが来るというのが、現時点での感想です。

パーツは、サドル(Specialized Power)をS9 Mattaからそのまま移植したのに加えて、シートポストをCane Creekのeesilkという、エラストマーを使ったサスペンションシートポストに替えて、これが大当たりでした。

普通に乗っている分にはしなったりすることもなく、まったく存在を感じないんですが、荒れた路面や小さなギャップの嫌な振動を全部吸収してくれるんです。重さも345gしかないので車重15kg近いeバイクには誤差みたいなもんですし、大満足です。

もうひとつ、ショップに勧められて、タイヤにTannusという韓国の小さなメーカーが出しているチューブタイヤ用のインサートを入れました。

タイヤとチューブの間に入れるタイプで、チューブレスタイヤの面倒さなしで、パンクのリスクを極小化できるというすぐれものです。そのショップはMTBがメインなんですが、これまで1年半くらいの間に何十人かのお客さんがこれを入れて、まだパンクは一例もないんだそうです。ハブモーターのeバイクはリアタイヤを外すのが超めんどくさいので、パンクの心配をしなくていいのは本当に助かります。

このメーカーは、タイヤインサートがそのままタイヤになったような「エアレス」というソリッドなタイヤも作っています。これを使うとパンクのリスクはゼロになるので、次はこれにしようかなと思っています。速さとか軽さとかを気にしなくて良くなると、こういうパーツも抵抗なく使えるようになるのがいいですね。

ここ数年は心臓のこともあって3時間、60km以上のライドは自重していたんですが、このバイクなら無理をせずに4-5時間、80-100km、獲得標高1000m+くらいのライドもこなせそうで、春が来て暖かくなるのを楽しみにしています。

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ちなみに、乗れなくなったS9 Matta Titaniumは売却し、今はビアンキスタを自認する新オーナーの元で幸せな新生活を始めたようで、そのことにも満足しています。

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※イタリア、キレイだな…(いつか走ってみたい)

【募集】取材させていただけませんか?

「自分が取材相手になってもいいよー」「俺(私)のバイクを見てほしい!」って方はこちらからご連絡ください。会いに行ける距離なら参りますし、遠方でしたら電話取材(小一時間ほど)させていただきたく。
※愛車のお写真もご提供いただけると幸いですm(_ _)m

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