ヒルクライムとは残酷なもので、誤魔化しが効かない。平地やダウンヒルは勢いでスピードを出せても、登りはそうはいかないものだ。

つまるところ、”パワーウェイトレシオ”でほぼすべてが決まってしまうんだけど、簡単に言うと軽くて体力がある人が強い。筋骨隆々な人よりも、痩せた方が軽々と千切ってしまったりする。

このように誤魔化しができないヒルクライムでは、なかなか急に強くなることはできない。だが、何かしらちょっとでも役に立つハックとかコツがあれば知りたいのが人情だろう。

Global Cycling Network はこれまでいくつものヒルクライム系動画を製作していて、「ヒルクライムでヘタレずにしっかり登り切る10個のコツ(How To Hang Tough On A Climb | 10 Tips To Not Get Dropped)」が役に立つと思ったので翻訳して紹介する。



目次


【ヒルクライムのコツ01】物理の法則に従う

軽ければ軽いほど有利なのは当然として、脂肪は急には落とせない。肉体以外で軽量化するとなると、手っ取り早いのが「水を捨てる」こと。

だが、これは個人的には全くおすすめしない。水が切れてしまったら、命にかかわる。例外として、ヒルクライムレース終盤であとはラストスパートのみ……という状況ならまだわかるが。

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人の後ろについて空気抵抗を減らす」のも定番。そもそもスピードが遅いヒルクライムではそこまで劇的な効果を産むわけではないが、無いよりはマシだ。

誰かの後ろにつく行為は、風除けもさることながら、ペースを作ってもらえるので精神的にラクができる。不思議なもので、誰もいない先頭を走るのと、誰かの後ろをついていくのとではメンタルの負荷が驚くほど違う。これは、レースだけでなく、グループでのツーリングでもそう。

なので、力に差のある者同士でヒルクライムするときは、体力的に劣る人を先頭には置かないこと。かといって最後尾は千切れる不安があるのでNG。ベストポジションは2番目かなと。3人なら真ん中、4人なら2番目…といった具合である。前後で挟むようにして守ってあげると、安心して登ることができる。

あと、当たり前だが「適度に飲み、補給する」こと。それもちょっとづつがよい。登ることに集中しすぎると、つい飲むことを忘れてしまう。

【ヒルクライムのコツ02】メンタルゲーム

自分より強い(速い)人についていくのもアリ。ややオーバーペースで走ることになるので、もちろんキツい。が、その苦しみをあえて受け入れるのだ。強くなるには慣れている不可ではなく、高めの負荷をかけて意図的に苦しい状況を作らねばならない。

ややスポ根的な考え方かもしれないが、スポーツで勝つには数値で言い表せない根性とかガッツが最後は物を言う。

「これはゲームだ!苦しむゲームだ!苦しみよ、かかってきやがれ!坂が勝つか俺が勝つか勝負じゃ~」って感じで、吹っ切れてしまうと言うか、いったんアホになってみると、とたんに苦しいヒルクライムが笑いに変換される。

よく、「山を登るサイクリストはドMである」という通り、苦しみを喜びに脳内変換できる人は強い。 (ヒルクライムだけでなく人生においても)

【ヒルクライムのコツ03】言い訳をしない

心の中で言い訳を作ってしまえば、苦しみからすぐに解放される。集団から千切れてしまえば、のんびりペースでひと息つける。しかし、一度千切れてしまうと、再び追いつくのは至難の業…というか、常人ならまず無理。視界から消えた相手を見つけて、それを追いかけて捕まえる気にすらならないだろう。

言い訳をしない、逃げない。「バイクが仲間より重いから」とか「チェーンルブを差さなかったから回転の調子が悪い」とか「昨夜の晩飯が脂っこかったから」とか理由を作って逃げないこと。それはそれ、このヒルクライムはこのヒルクライム、なのだ。

【ヒルクライムのコツ04】モチベーション

言い訳をしない、と似ている。キツいときにモチベーションを高く維持するのは意外に難しい。スタート地点ではやる気に満ちていても、ペダルが重くなってくると、きっと「まあ、、、たかがサイクリングじゃん?」、「プロでも無い自分が速く登れたところで、一円の得にもならないし」と考えてしまうだろう。

冷静に考えればその通りなのだが、それを言ったらなにもかも終わってしまう。「たかが」というセリフはアマチュアスポーツで(いや、人生のあらゆるシーンで)口にしてはならない言葉だと自分は思っている。

ヒルクライムは究極の「自分との戦い」でして、本当に体力の限界に近づいてくると、周囲の人なんてどうでもよくなってきて…というか、気にする余裕すらなくなってしまう。ひたすらに己と向き合い、心に鞭を打つことを繰り返すだけ。てっぺんに着くまで修行僧のごとく無の境地で足を回し続ける。

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モチベーションはなんでもよくって、「足を地面に付けずに登り切る」でもいいし、「前回のタイムを上回る」でもいい。自分に適した何かを用意すること。

巧みに自己暗示をかけると言うか、自分を騙すのもスキルのうちである。自分の決めた目標を達成できると、無茶苦茶嬉しいし、自信がつく。

【ヒルクライムのコツ05】痛みに集中しない

限界に近づくと、苦しみしかなく、一刻も早く解放されたいと願い、そのことしか考えなくなる。だが、長いヒルクライムにおいて、負のことだけ考えて過ごすのはあまりにしんどい。

痛みから目を背けるため、意識的に心を邪魔しよう。景色を眺めるのもいいし、登りきったあとのご褒美を考える…でもいい。

(夏限定の)自分のやり方として、スタート直前に「キンキンに冷えたスポーツドリンクを買う」がある。飲むたびに「冷えてて美味しい!しかも甘い!」ってなれるので、苦しいヒルクライムもいくぶんか楽に感じる。それと、ドリンクがなくなる前に登頂したい!ってかんじに気が焦るので、自然と追い込むことができるのだ。

【ヒルクライムのコツ06】他の人のホイールを見つめる

心を無にして前を走る人についていく…ということだが、意外に効果的。人をペースメーカー的に利用するわけだ。ヒルクライム中は考え事をすることすら疲労につながるので、「考えなくていい」状況を作れるならそうしたほうが得ではある。

ただし、一点ばかり見つめて視界を狭めてしまうのは危険なので、適度に顔を上げて前方不注意にならないよう気をつけて欲しい。

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【ヒルクライムのコツ07】ポジティブシンキング

ネガティブな思考をするとフィジカルパフォーマンスに悪影響という研究もある。なるべく前向きに考えること。グループライドで仲間たちがピューっと先に行ってしまうと、自分を卑下してしまいそうになるのは自然だが、他人と比較せず、前回の自分と比較するとか、十分に努力しているなら自分で自分を褒めてあげる。

あと、、、ドン引きされることを覚悟して書くが、「あははははは!」と心の中で苦しい状況を笑い飛ばすのも何気に効果大。クヨクヨしたって斜度がなだらかになるわけでも無いし、距離が短くなるわけでもない。どうせ苦しいならいっそ喜劇と考えてみる。

「休日に電車を乗り継いでわざわざ他府県の山まで来て、汗だくでもがいている自分のなんと滑稽なことよ。1円の得にもならないことに必死になったりして、自分はアホちゃうか。だが、あえてそれを楽しむ・・・そこに痺れる憧れるぅ・・・ふっふっふ…」

このように考えることができれば、一皮むけた証拠だろう。

【ヒルクライムのコツ08】小刻みに頑張る

なんだか精神論ばかりが続いた気がするので、ちょっとは役に立つコツを…ということで、1キロ、1コーナー、1分でもいいので短期目標を設定すること。

10キロのヒルクライムをするとして、10キロの一括り単位で考えると、1キロ走っても「まだ9キロもある。この苦しみがあと9回もあるのか」となってしまうので、分割するわけ。大きなタスクは細分化すると取り組みやすいのと同じ理屈だ。

人と争うというよりは、自分との戦いに近い。限界に近くなった自分がよくやるのは、「500回ペダルを回すまではサイコンを見ない」という謎ルール。苦しいとついつい頻繁にサイコンに目を落として距離を確認してしまい、「1キロ走ったと思ったのに、たったの300メートルしか進んでないなんて…」と絶望してしまいがち。なので、決めた回数ペダリングするまではサイコンで距離を確認してはダメ!というルールを設定して登る。別に速くなるわけでもなんでもないけど、絶望する回数が減るので精神衛生はよい。

【ヒルクライムのコツ09】相手の探りに抗う

前を走る人がペースを上げ始めても、我慢してついていく。これはレースで起こり得る状況で、相手が「自分についてこれそうか、それとも限界でこれ以上のペースアップはできないのか」を見極めるために仕掛けてくることがある。

これには歯を食いしばって食らいついていくこと。「効果がなかった…」と敵に悟らせることができれば、逆に相手にダメージを与えることができる。

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【ヒルクライムのコツ10】ポーカーフェイス

これがヒルクライムでバテないコツなのかどうかはさておき、「攻撃は最大のディフェンス」ともいう。全力でもがくのは自殺行為だし、実際そうなんだけど、「どうせこのままなら負けてしまう」状況であれば、一か八か勝負を仕掛けて飛び出すのもアリ。同じ負けるにしたって、攻めることなく負けるのは得るものがない。

そのへんのことは、下記記事にも書いた。

◇ プロサイクリストっぽく見せるちょっとしたコツとか振る舞い5+8 = 計13個

まあ、自分は勝ち負けを決めるレースには出場しないので、個人的にはあまり参考にはしないのだが。


以上がGlobal Cycling Network で紹介していた10のコツ。


ここからは余談なのだが、2017年11、12月はかなり集中して食事制限(具体的には夕飯を食べない。食べてもオカズのみで炭水化物は摂らない)しており、そのおかげで順調に体重を落とすことができた。

体重が軽くなると、てきめんにヒルクライムが楽になる。これは自分でも驚きで、上で紹介したコツなんて全て吹っ飛んでしまうほどのわかりやすく、はっきりした効き目を実感できた。 

これに気を良くして2018年1月も食事制限を継続したのだが、減量に成功(73キロ→67キロの6キロ減)した代わりに免疫力もゲキ落ちしてしまい、2週間ごとに連続して4回も風邪をひく、という人生で経験したことのない苦しみを味わった。治った…と思ったらまた風邪で寝込むのはキツかった…。 

いくら体重が落ちても、風邪を引いてしまっては意味なしと気づき、食生活を普通に戻したら、あっという間に元気になり、体重も増えていった。

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※現状これくらいの体型です

2018年12月時点で体重は70キロジャスト(身長173センチ)。68キロでキープしたいところだが、それをしようとすると免疫が…というジレンマ。この辺のバランスの折り合いはついておらず、2018年は70キロをキープしたまま過ぎてしまった。

まあ、病気はその後一度もなっていないし、熱が出たこともない。体調はすこぶる良い。もしかしたら、これが自分のベスト体重なのかもしれない。

「体重を落とす」のは、何にも増して坂を登りやすくするためのハックではあるが、度がすぎるとクオリティ・オブ・ライフに悪影響を及ぼすので、ほどほどにしていただきたい。(アラフォー以降の方々はとくに…)。


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