秩父で活動する地域メディア、「ちちぶる」の編集長(浅見)さんといっしょに秩父滝沢サイクルパークBMXコースを取材させていただいた。今回は中編です。
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案内してくれたのは、BMXのプロライダーであり、インストラクターの資格を持つ高山一成さん(27歳)。イケメンである。
「秩父滝沢サイクルパークBMXコース」は、埼玉県はおろか、全国でも屈指の規模と施設の充実を誇るコースで、BMXコースのほか、トレーニングコースとしてランニングバイクコース・マウンテンバイクコースも備える。全日本BMX連盟公認コースでもある。
全日本選手権等の公式戦が行われる場所でもあるが、同時にBMX初心者の練習コースとしても利用できる。ちなみに、2020年の東京オリンピックの事前トレーニングキャンプの候補地として、埼玉県知事会を通じ誘致しているんですって。実現すれば、世界トップレベルの選手の練習風景を見学できるかも?
前編では、そもそもBMXコースとはどんな競技なのか?種目には何種類あって、それぞれの違いは何か…について書いたのだが、今回はBMXのコースを中心にご紹介したい。
※もちろん、コースプロファイルと個人の特性でギア比率は変化するが
また、レース用のほうがチェーンステーが長く、ひいてはホイールベースも長めにされており、より「安定させつつ、速く走る」ことに特化された設計がされている。
どちらもサドルはほぼ飾り状態。走行中は常にスタンディングなので、「いっそ、サドルは外して走ればいいのに」と訊ねたら、「レギュレーションでして、装着はしていないとダメなんですよ」とのこと。 でも、徹底的に軽量化されていて、レールもないモノであった。
※サドルは飾りのようなもの
驚いたのが、レース、フリースタイル共に「ブレーキがリアにしか無い」という点。なぜなら、BMXは基本ぶん回して走るため、さほど強力なブレーキングができなくてもOKだから…らしい。フロントに強力すぎるVブレーキがつくと、むしろそれは危険でもあるんですって。
よって、BMXはそのままでは公道で走ることはできない。走る場合は、前後にブレーキを装着しましょう。(公道で走りたくなるようなバイクではないが…)
※ブレーキ台座すら存在しない
※小高いピラミッドがスタート台
スタートポイントが高い場所にあって、地上5メートル。ちなみに世界選手権では8メートルの高さから飛び出す。5メートルでも足がすくみそうなのにさらに3メートルも高いとこからトップスピードで鬼漕ぎするなんて、信じられん…。
※足がすくむ
※角度が明らかにヤバい
もちろん、相手を手でつかむような行為は許されないが、肘・肩で押し込む等はOK。BMXは肉弾戦なのだ。なお、8名で走ることを3回繰り返し、上位4名が勝ち上がるという形式。
1~8コースの中で、どこが有利かは一概に断言できないものの、一般論としてはインコースの1コースのほうがアウトの8よりは有利と言われている。 ただ、高山さんの好みは「3か4コースですね」とのこと。
インコースすぎてもコーナリングが窮屈になってしまうので、どうしても選手は中央によってきてしまうらしい。ロードレースはライン取りやポジションがむっさ大事だが、短時間で勝敗が決まるBMXでは、より一層重要ということか。
高山さんもBMXのキャリアの中では度重なる怪我をしており、BMXでは去年に肋骨のヒビ、今年は肩の脱臼をされているとのこと(痛そう…><)。 しかし、高山さんはこれまでに「ロードとトラックでは大きな落車に巻き込まれたことも、大怪我の経験もゼロ」だと言う。それだけ危険察知能力とボディバランスが研ぎ澄まされているということなのだろう。
実家がBMX系の自転車ショップで、5歳の頃からBMXに親しんでいたという環境も大きく影響していそうだ。 BMXライダーって、骨折とか脱臼の数の多さが勲章…なイメージを持っていたんだけど、高山さんは、「自転車でいちばん大事なのは、落車しないこと。致命傷を負わないこと。とくに一般サイクリストであればなおさら」と強調していた。
落車情報はなかなかネットでも見つからないし、経験談を詳細に知る機会もないが、他人の落車体験を聞かせてもらったり、反省点を共有してもらうことだけでも十分に有用。
そういう意味では、産経サイクリストで連載している『私の落車』はプロの目から見ても、価値のある情報らしい。ちょっとウレシイ。
高山さんは高校時代はサイクリング部に所属し、ロードバイクに乗っていたそうだが、ロードバイクでも落車したことがない。BMXで鍛えたバランス感覚とバイクコントロールの技術のお陰で、「何度もあった危険な状況を回避できた」とおっしゃっていた。
なるほど、BMXがバイクテクニック向上に役立つことは十分にわかった。しかし、自分のような、BMXには無縁の一般サイクリストが今からBMXにまたがって1日レンタルしたところで、急激にスキルがアップするわけもない。バランス系(神経系)のスキルは幼少期の積み重ねが肝であって、とっくに成人した大人が手を出しても無意味なのではないか。
そんな疑問を高山さんにぶつけてみた。 すると、
「いえ、ちゃんとした指導のもとで1日BMXを経験するだけでも、バイクスキルはグンと伸びますよ」
「まじすか。オッサンでも伸びますか?」
「伸びます。アスファルトを100キロ走るより、ダートを1キロ走るほうが段違いにバイクコントロールがうまくなりますよ」
「ダートを走ることで、ロードバイクにもプラスの影響を及ぼす…と」
「もちろん」
「伸ばせるものなら、ぜひ伸ばしたいです」
「初心者コース、走ってみますか?」
「ぜひ!」
ということで、次回は高山さんに指導いただきつつ、実際にコースを走らせていただくことになった。後編に続きます!
実際に走ってみるよ!\(^o^)/
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>> 初心者からプロまで楽しめるBMXコース「滝沢サイクルパーク」で遊びつくせ!(ちちぶる)
案内してくれたのは、BMXのプロライダーであり、インストラクターの資格を持つ高山一成さん(27歳)。イケメンである。
「秩父滝沢サイクルパークBMXコース」は、埼玉県はおろか、全国でも屈指の規模と施設の充実を誇るコースで、BMXコースのほか、トレーニングコースとしてランニングバイクコース・マウンテンバイクコースも備える。全日本BMX連盟公認コースでもある。
全日本選手権等の公式戦が行われる場所でもあるが、同時にBMX初心者の練習コースとしても利用できる。ちなみに、2020年の東京オリンピックの事前トレーニングキャンプの候補地として、埼玉県知事会を通じ誘致しているんですって。実現すれば、世界トップレベルの選手の練習風景を見学できるかも?
前編では、そもそもBMXコースとはどんな競技なのか?種目には何種類あって、それぞれの違いは何か…について書いたのだが、今回はBMXのコースを中心にご紹介したい。
BMXバイクのレギュレーションについて
レース用はカーボンもしくはアルミ。フリースタイルはクロモリ、という素材の住み分けができているが、それだけではない。両方を比較すると、レース用はチェーンリングが大きく、フリースタイルは極小であることに気づく。 レース用は44-16T、フリースタイルは25-9Tが主流である。※もちろん、コースプロファイルと個人の特性でギア比率は変化するが
また、レース用のほうがチェーンステーが長く、ひいてはホイールベースも長めにされており、より「安定させつつ、速く走る」ことに特化された設計がされている。
どちらもサドルはほぼ飾り状態。走行中は常にスタンディングなので、「いっそ、サドルは外して走ればいいのに」と訊ねたら、「レギュレーションでして、装着はしていないとダメなんですよ」とのこと。 でも、徹底的に軽量化されていて、レールもないモノであった。
※サドルは飾りのようなもの
驚いたのが、レース、フリースタイル共に「ブレーキがリアにしか無い」という点。なぜなら、BMXは基本ぶん回して走るため、さほど強力なブレーキングができなくてもOKだから…らしい。フロントに強力すぎるVブレーキがつくと、むしろそれは危険でもあるんですって。
よって、BMXはそのままでは公道で走ることはできない。走る場合は、前後にブレーキを装着しましょう。(公道で走りたくなるようなバイクではないが…)
※ブレーキ台座すら存在しない
コース長は日本最大級
生まれて初めて見るBMXコースの第一印象は、「でけぇ!」のひとこと。ぐねぐねと曲がっているのでひと目で全長がつかみにくいのだが、約350メートルある。日本国内では最大級の大きさだ。※小高いピラミッドがスタート台
スタートポイントが高い場所にあって、地上5メートル。ちなみに世界選手権では8メートルの高さから飛び出す。5メートルでも足がすくみそうなのにさらに3メートルも高いとこからトップスピードで鬼漕ぎするなんて、信じられん…。
※足がすくむ
※角度が明らかにヤバい
レースは8名同時スタート
コースは8つあって、8名がヨーイドンでいっせいに走り出す。陸上のように決められたコースがあるわけではなく、ライン取りは自由。よって、スタート直後から激しい接触をしながら有利なコースの取り合いが始まる。もちろん、相手を手でつかむような行為は許されないが、肘・肩で押し込む等はOK。BMXは肉弾戦なのだ。なお、8名で走ることを3回繰り返し、上位4名が勝ち上がるという形式。
1~8コースの中で、どこが有利かは一概に断言できないものの、一般論としてはインコースの1コースのほうがアウトの8よりは有利と言われている。 ただ、高山さんの好みは「3か4コースですね」とのこと。
インコースすぎてもコーナリングが窮屈になってしまうので、どうしても選手は中央によってきてしまうらしい。ロードレースはライン取りやポジションがむっさ大事だが、短時間で勝敗が決まるBMXでは、より一層重要ということか。
高山さんは、ロードとトラックで落車やケガをしたことがない
8名の選手が高いコブを跳び、押し合いへし合いしながら滑りやすいダートコースを走るので、落車はふつーに起きるし、ケガも当然のようにある。高山さんもBMXのキャリアの中では度重なる怪我をしており、BMXでは去年に肋骨のヒビ、今年は肩の脱臼をされているとのこと(痛そう…><)。 しかし、高山さんはこれまでに「ロードとトラックでは大きな落車に巻き込まれたことも、大怪我の経験もゼロ」だと言う。それだけ危険察知能力とボディバランスが研ぎ澄まされているということなのだろう。
実家がBMX系の自転車ショップで、5歳の頃からBMXに親しんでいたという環境も大きく影響していそうだ。 BMXライダーって、骨折とか脱臼の数の多さが勲章…なイメージを持っていたんだけど、高山さんは、「自転車でいちばん大事なのは、落車しないこと。致命傷を負わないこと。とくに一般サイクリストであればなおさら」と強調していた。
「アマチュアのサイクリストさんは、どうしてもスピードを競ったり、脚を鍛えたり、トレーニングに勤しむことに気を奪われがちですけど、もっとも大事なのは事故を起こさない、落車しないことです。
落車しないために必要なライドスキル、バランス能力は過小評価されていると思う。BMXを経験したことのないサイクリストに、その点を啓蒙したい」
落車情報はなかなかネットでも見つからないし、経験談を詳細に知る機会もないが、他人の落車体験を聞かせてもらったり、反省点を共有してもらうことだけでも十分に有用。
そういう意味では、産経サイクリストで連載している『私の落車』はプロの目から見ても、価値のある情報らしい。ちょっとウレシイ。
高山さんは高校時代はサイクリング部に所属し、ロードバイクに乗っていたそうだが、ロードバイクでも落車したことがない。BMXで鍛えたバランス感覚とバイクコントロールの技術のお陰で、「何度もあった危険な状況を回避できた」とおっしゃっていた。
なるほど、BMXがバイクテクニック向上に役立つことは十分にわかった。しかし、自分のような、BMXには無縁の一般サイクリストが今からBMXにまたがって1日レンタルしたところで、急激にスキルがアップするわけもない。バランス系(神経系)のスキルは幼少期の積み重ねが肝であって、とっくに成人した大人が手を出しても無意味なのではないか。
そんな疑問を高山さんにぶつけてみた。 すると、
「いえ、ちゃんとした指導のもとで1日BMXを経験するだけでも、バイクスキルはグンと伸びますよ」
「まじすか。オッサンでも伸びますか?」
「伸びます。アスファルトを100キロ走るより、ダートを1キロ走るほうが段違いにバイクコントロールがうまくなりますよ」
「ダートを走ることで、ロードバイクにもプラスの影響を及ぼす…と」
「もちろん」
「伸ばせるものなら、ぜひ伸ばしたいです」
「初心者コース、走ってみますか?」
「ぜひ!」
ということで、次回は高山さんに指導いただきつつ、実際にコースを走らせていただくことになった。後編に続きます!
実際に走ってみるよ!\(^o^)/
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コメント
コメント一覧 (2)
BMX、自分には無縁と思ってましたけど(腰痛持ち)、100kmのアスファルトより1kmのダート、コレは俄然興味が湧いてきました!
むっさいい経験になりました。バランス感覚、重心のかけ方、ハンドリングが学べます。