いつも楽しくて、しかも勉強になるロードバイク動画を連発しまくっている「Global Cycling Network」が、ぶっ飛んだ動画を作ってきた。

なんと、メカニカルドーピングしたロードバイクのインプレッション(!)である。


メカニカルドーピングしたベルギーの女性選手が引退を発表したのは記憶に新しいけど、まさにあの事件がキッカケになって作られた動画である。


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※嬉しそうに舌なめずりするサイモンさん(左)


モーターと電池を内蔵したイカサマバイクを走らせて、実際にどれくらい速く走れるのか、ペダリングのフィーリングはどんなものかを実験してくれたのだ。


これは、観ないわけにはいかないだろう。

Mechanical Doping – How Does A Road Bike With A Hidden Motor Ride?



動画に登場する水色フレームのバイクは、イングランドで初めて生産された「モーター内蔵ロードバイク」だ。シートチューブ内にモーターが埋め込まれ、黒いボトルがバッテリーである。


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シートチューブ内に隠せる小型バッテリーもあるが、駆動時間は短くなる。



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※ボトルから、こっそりとシートチューブにケーブルが接続されている。



でもって、下ハンに隠されているスイッチを押すと、勝手にペダルが回り出すのだ。


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※外から一見しただけでは、ボタンの存在を見抜けない。


ぐるぐると自動でいつまでも回り続けるペダルが気味が悪いが、『100~200ワットのパワーを約1時間』発揮できるのだそうな。ツーリングには使えないけど、レースであれば「ここぞ」のタイミングで使えてしまうね。

で、実際に走ってみたインプレッションは下記の通り。


1.ゆっくり流していると、モーター内蔵とはわかりにくい

スイッチオフの状態でクルージングする程度のスピードでは、モーターが入っていることは分からないが、ペダルを逆回転させると「違和感はある」そうな。


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2.ケイデンスには上限がある

スイッチオンで勢い良く飛び出せるのだが、べつにペダリングがむちゃくちゃ速くなるわけではない。むしろ、ケイデンスには上限があって、86RPMとやや低め。

(RPM=revolution per minute or rotation per minuteの略。1分間に回せる回転数のコト)


ただ、「ケイデンスはアップしない代わりに、バックグラウンドでモーターのアシストは感じる」とはコメントしている。前を走るサイモンさん(若いほう)がほとんど力を入れずに回せているのに対し、後ろのダンさんはしっかり足を踏み込みながらペダリングしている様子が見て取れる。


「今回乗ったバイクは、これまで乗ったことのある電動アシストとはぜんぜん異なる」とも言っている。これまでのバイクは、モーターが後押ししてくれるような感覚だったのに対し、今回のバイクは「まるでペダルが勝手に回っていくようだ」とのこと。


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※足を外しても、ペダルは勝手に回り続けるよ。

ケイデンスが86RPM以下のときにもっともパワーが発揮されるので、ややヒルクライム向けのシステムなのだが、平地巡航でもアシスト力は感じるとのこと。


今回のインプレッションでは平均で150ワットを叩きだしたのだが、ではヒルクライムでどれくらい速く登れるのか?その実験が4分20秒から始まる。


場所は、Old Bristol Road というイングランド南部のかなーりエグい坂道。


元プロのダンさん(4分47秒時点の左の人)が引退したのは3年前。さらにその2年前の現役時代に記録したレコードを、ドーピングバイクで破れるのか。


メカニカルドーピングバイクで山を登った感想として、「ふつーのバイクで走るのと同じくらい疲れる。モーターのおかげで速く走れるだけで、肉体的な辛さは同じだよ」と話していた。



以下、結果。

2011年の現役時代のダンさん(ドーピング無し) 7分2秒


2016年の引退後のダンさん(ドーピング有り)  8分16秒


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てっきり、現役時代の自身の記録を余裕で破れると思っていたんだけど、メカニカルドーピングしたバイクがあってもトップコンディションの記録は抜けなかったわけだ。


これは決してドーピングバイクがショボいのではなく、現役プロのフィットネスがそれだけスゴイということを表しているのかもしれないね。


まとめ

動画の締めくくりとして、サイモンさん(右)とダンさん(左)が、「モーターアシストのロードバイクは買いかナシか?」について、こんなかんじに議論する。


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ダンさん

「メカニカルドーピングしたバイクって、一般のサイクリストには買いかな?ナシかな?」


サイモンさん

「そもそも、どうしてロードバイクに乗るかって目的を考えるべきだと思う。仮にいっしょに走る仲間が自分より若く、フィジカルコンディションがはるかに上というハンデがあるなら、ドーピングに頼るのは一理あるかもしれない」


ダンさん

「たとえばサイクリングを始めたばかりで身体が慣れていない会社の同僚、身体が成長しきっていないティーンエージャー、旦那さんより体力が劣る奥さん…といった人たちが、経験豊富なサイクリストと一緒に走る場合、電動アシストは双方にとって便利なものだよね」


サイモンさん

「それはわかるんだけど、達成感は味わえなくないかな?達成感はどのレベルのサイクリストにとっても重要だよ。自転車の魅力は、自分の肉体だけで走り切る、登り切ることにある。電気の力を借りたら、達成感が損なわれるし、タイムにも意味がなくなってしまう」


ダンさん

「電動は悪いって意味ではなく、速く楽に走りたい人には便利な道具。通勤とか通学に使うって方法もあるし、今後世の中に浸透する技術かもね」


サイモンさん

「まあ、ロードレースの世界には入ってきてほしくないけどね(笑)」



サイモンさんの最後の言葉に激しく同意。ドーピングやズルが行われるようなプロサイクリングレースは、まっぴらごめんである。