ここのところ、(いつも視聴しているGlobal Cycling Network だけでなく)海外のサイクリング系ウェブサイトをあちこち読んでいるのだが、ディスクブレーキについての論争が止まらない。
パリ・ルーベでの事故をキッカケに、UCIがディスクブレーキを禁止したのは記憶に新しいが、それにならってフランスとスペインのサイクリング協会もディスクブレーキを禁止した。
しかも、ロードレースだけではなく、グランフォンドやイベントでもディスクブレーキの使用が禁止されたのだ。
つまり、ディスクロードを買ってしまった一般サイクリストもとばっちりを受けてしまうことになってしまったのだ。(これはかなりの災難だ)
そんなときに視聴したのがGlobal Cycling Network のこちらの動画。
The Great Disc Brake Conspiracy?
Global Cycling Network の立場としては、「我々はどのブレーキの肩を持つわけでもない。誰がどれを使っても構わないと考えている。GCN的にもっとも腑に落ちないのは、データに基づいた議論がなされていないことだ」と語っている。
Global Cycling Network が評価していたのが、アメリカサイクリング協会の発表した声明だ。(GCNはメールでアメリカサイクリング協会に連絡を取り、ディスカッションを交わしたとのこと)
GCNに対し、アメリカサイクリング協会のテクニカルディレクター、チャック・ホッジ氏はこのようにコメントしている。
ざっと訳すと、こんなかんじ。
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「アメリカサイクリング協会は、あらゆるサイクリングイベントでのディスクブレーキの使用を認めてきました。我々はディスクブレーキの安全性を調査中であり、その危険性を認識しない限り、禁止することはありません」
「ディスクブレーキのもたらす安全性も認めていますし、なにより多くの国内サイクリストがディスクブレーキを搭載したバイクを購入したことを知っています。ディスクブレーキの良さと危険性をしっかりと見極め、判断を下すつもりです。よって、今回の使用禁止の判断は、慎重さに欠いていると考えます」
つまり、アメリカサイクリング協会はデータに基づいて判断を下すこととし、一時の気の迷いや外野の騒音に惑わされず、データを収集し、分析してから判断すると述べているのだ。
しかも、自国ユーザーのことまで考えてくれており、個人的にこの姿勢は高く評価したい。
さらに、アメリカサイクリング協会は、過去10年(かそれ以上)の事故データを分析して、ディスクブレーキでどのような事故が発生しているか調べるとも語っている。すばらしい。
※ディスクブレーキでチョリソーソーセージが切れるかどうか、実験した結果。瞬殺でちょん切れるかと思ったら、意外にそうでもない。
GCN以外のソースもあたってみたところ、チャック・ホッジ氏はvelonewsでディスクブレーキについて「USAC’s stance on disc brakes in amateur race」という記事でこのように語っていた(英語)。
ざっと訳すとこうだ。
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「アメリカ国内の、UCIのレギュレーションの影響を受けないレースであれば、ディスクブレーキに使用はずっと認められてきたし、(少なくとも現時点では)今後もそうある」
ほほう、アメリカではディスクブレーキがアマチュアレベルで禁止されたことは一度もないとのことだ。
さらに、ホッジ氏のコメントはこう続く。
↓↓↓↓↓↓
「当協会は、きちんと動作するブレーキがバイクの前後に装着されていれば、問題ないと考えます。ブレーキの種類は関係ありません。UCIはどうやら我々とは異なるスタンスをとるようです」
「UCIは何かに対して”許可する・しない”のに対し、アメリカサイクリング協会は”禁止する・しない”というスタンスです。アメリカサイクリング協会は、過去から今現在に至るまで、アマチュアレースにおいてディスクブレーキを許可しなかったことは一度もありません」
氏の言い回しはやや回りくどいが、要するに
- アメリカサイクリング協会はディスクブレーキの危険性がデータとしてきっちり取れるまでは安易に禁止の判断を下さないよ
- 過去の事故データはちゃんと取るよ
- だからアメリカ国内のサイクリストのみなさんは心配せずにディスクブレーキを使っても大丈夫だよ
という立場なのだ。
ちなみに、Global Cycling Network のスタジオにはプロのMTB選手も登場して、彼の意見をヒアリングしているのだが、「MTB界でディスクブレーキの事故が起きたことが一度もないと断言はできない。でも、僕の知る限り、ディスクブレーキによる怪我は聞いたことがないね」と話している。
プロ選手ですら「聞いたことがない」と話しているのだ。これも興味深い話ではある。GCNも中立的な立場であり、これも好印象。
さらにさらに、日本サイクリング協会のサイト内で検索してもみたのだが、ディスクブレーキに関する声明やデータやニュースは何も発表してはいなかった。
というわけで、ディスクブレーキについては海外のほうが話題になっているようなので、引き続き調査してみますね。
コメント
コメント一覧 (2)
危険かどうかは起きてみないと分からない→起きるまで禁止しない。
一方で
起きる可能性がある→安全性が保たれるまで禁止
どちらも正しいとは思いますが、選手の意見をどこまで組み上げてるのでしょうかね?
走るのは選手
怪我するのも選手
それこそワンシーズンを棒に振る
1番は選手の意見を大切にする事じゃ無いですかね。
机に座ってデータ見てる腹の出たオッサンじゃなくて(笑)
危険性を知っているのも、怪我を被るのも選手なので、選手の意見は尊重されてしかるべきかなと。