サイクリストとそうでない人では、「距離の感覚がまるで合わない」とはよく言われること。


「日帰りでどれくらい走るんですか?」


「100キロです」


「ひ、ひゃく!?」



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「自転車でかるく散歩してきました」


「7~8キロくらいですか?」


「70~80キロです」


「はぁぁぁぁぁぁ!?」


みたいな。


サイクリストと非サイクリストで交わされる、“会話が咬み合わないあるある”だ。「いやいや、100キロなんて誰でも走れますよ。三桁のキロ数に驚くことはないですよ。誰でも余裕です」と答えたことが、サイクリストなら数えきれないほどあるだろう。


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自転車は、ランニングに比べて圧倒的に楽ちん。なぜなら、少ない力で走れるように設計されているから。さして運動経験のない女性でも、体形が気になる中年男性でも、サッと乗れてすぐに楽しめる。


万人に優しく、始めるハードルが低いスポーツ、それがサイクリング。


よって、いかなる人でも、経験を積めば積むほど距離感がみるみる狂っていく。どれくらい狂うのか、オクサマと自分を例にとって紹介してみたい。


ちなみに、自転車はダホンのMu(自分)とボードウォーク(オクサマ)。どちらも20インチ(406)のミニベロである。


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※以前乗ってたダホンのMu



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※オクサマのボードウォーク


20キロ=ほぼ疲れない

自転車を買った直後は、まず20キロから始めた。家から10キロ離れた荒川の土手まで行き、ひと休みして戻ってくるだけ。

「20キロか……ハーフマラソンの距離を自転車とはいえ、走り切ることができるのだろうか?足がつって帰宅できないってことになりはしまいか?」と夫婦で心配した。ビクビクしながら荒川沿いを走ったものだ。


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※自転車ファッションセンス・ゼロのころの私とオクサマ…


当然ながら、ほとんど疲れない。ウォーキングていどの満足感しかない。3ヶ月ほどは20キロサイクリングを繰り返していたが、「なんか、走り足りないね」と感じるようになってきた。

ちなみに、20キロをのんびり走るのに要する時間は1時間そこそこ。


30キロ=ちょうどいい散歩

20キロ(1時間)のサイクリングでは物足りないと感じた我々夫婦は、「30キロにチャレンジしてみよう」と勇気を出して出かけてみた。


結果、20キロも30キロもまったく疲労に影響なし、とわかった。ひと休みしながらのんびり走っても、2時間しかかからない。


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とくに補給らしい補給をすることもなく、ボトルの水だけで事足りた。帰宅直前にコンビニに立ち寄って、ガリガリ君をかじるか、ミニサイズのスニッカーズを食べるというご褒美を覚えたのも、30キロくらいからだった。


40キロ=飯がうまい

次に40キロという(我々にとって)前人未到の遠征に立ち向かうことになった。40キロという距離に、妻は怖気ついた。「フルマラソンの距離はヤバイよ。あたしら、ただの中年夫婦だよ? 体力が維持できず、途中で倒れてしまったらどうするの?」と駄々をこねた。


しかし、30キロでも問題なかったのだから、10キロ伸びるくらいはなんでもないだろうと強引に連れ出してみた。


「荒川沿いに秋ヶ瀬公園とか彩湖を目指し、帰宅途中にファミレスでランチしよう」と食べ物で釣ってみた。結果、判明したのは、「適度な疲労感があって、飯がすこぶるうまい」ということ。いいかんじにカロリーも消費しているので、贅沢にもデザートまで付けてしまったりした。


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ふだん、ファミレスで食事をするときは、「デザートまでつけると一人あたり1,500円近くになってしまうから、やめようね。コンビニの100円アイスでガマンしようね」という夫婦間のセコいルールがあるんだけど、サイクリングのときだけは「いっぱい走ったんだし~」と、デザートを注文してもよいルールに緩和した。


80キロ=そろそろお尻が痛くなる

次に挑戦したのは、一気に倍に伸ばして「80キロ」にチャレンジすることにした。「ミニベロのサイクリングは楽しい。40~50キロなんてへっちゃら」なオクサマもさすがに「80キロは未知の領域。想像がつかない長距離で、体力のペース配分がわからない」と尻込みした。


自分はその頃は100キロツーリングはふつうに(ミニベロで)していたので、何度も「大丈夫だ。40キロ走れるなら、80キロもイケる」と説得を試みた。しかし、「四捨五入したら100キロやん……怖い、怖すぎる…」と首を縦に振らない。


そこで、他にも人を誘って、10人位でグループライドに出かけることにした。事前にオクサマには「距離?たぶん50キロくらいかな」とだけ伝え、一緒に来るよう誘ったのだ。


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「ホンダエアポートを見て、帰りに榎本牧場でソフトクリームを食べよう」


「牧場でソフトクリーム?なんかいいね」


「でしょでしょ。じゃあ、夫婦で参加って(主催者の方に)伝えておくね」


「はいはい。ところで、何キロくらい走るの?」


「たいしたことないよ。たぶん、50キロかそこら」


「なら大丈夫」



とウソをついて連れていった。

幸いにして、オクサマのボードウォークにはサイコンがついておらず、しかも彼女は極度の方向音痴なので、距離感がまったく自覚できない。たくさんの人数でおしゃべりしたり、いっしょにごはんを食べたりしながら走っていれば気も紛れるし、楽しいので、気づいたら完走できてしまっているもの。

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帰宅後、「走行距離は80キロを越えたよ」と伝えたら、びっくりしていた。


ちなみに、80キロを越えるころからオクサマはお尻の痛みを訴えだしたので、女性用パッド付きインナーパンツを買ってあげた。


オクサマいわく、「ミニベロで楽しく走れる距離は60キロまでかな。それ以下だと物足りない。パッド付きインナーパンツのおかげでお尻は大丈夫だけど、80キロになると途中で腕が痛む」とのこと。


オクサマのボードウォークはフラットバーハンドルなので、ポジションが変えられないというハンデがあるのだ。ブルホーンバーやドロップハンドルであれば、また感想は違っていると思う。


ということで、10キロ、20キロでビビっていたオクサマもいまではすっかり耐性がついた。このようにして、サイクリストの距離感は狂っていくのです(笑)。


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