以前、三本ローラーを回しながら聴くラジオ番組として、「伊集院光の深夜の馬鹿力」、「ジェーン・スーの相談は踊る」、「山田ルイ53世のルネッサンスラジオ」の3番組を推していたが、じつはもう一つある。
その名も「東京ポッド許可局」(TBSラジオ)だ。
キャッチフレーズは、「文系芸人が、行間を、裏を、未来を…「読む」ラジオ」。
これがびっくりするほど三本ローラートレーニング向きなのである。(いや、三本ローラーだけでなく、街中でも電車でも、どこで聴いても楽しいけれど)。
公式サイトの番組説明を引用しつつ説明すると、2008年に3人の芸人さん(マキタスポーツ、プチ鹿島、サンキュータツオ)がひっそり始めた自主制作のポッドキャスト番組が好評を博し、出世してTBSで地上波になって今に至る。
モットーは「屁理屈をエンタテインメントに!」。エンターテインメントとインタレスト、2つの意味の面白いを両立させた刺激的な内容を、3人のおじさんが屁理屈たっぷりに語る。
それ以上でもそれ以下でもないのだが、この3人の絡みとやり取りが、「そのテーマで、そこまで深く、そして面白く掘り下げるか!」と感嘆するほどなのだ。
3人のおじさん芸人は以下のとおり。
マキタスポーツ
1970年生まれ、山梨県出身。芸人・ミュージシャン・俳優・コラムニスト。「作詞作曲ものまね」という音楽的造詣をもとにした芸を得意とする。俳優業では、映画『苦役列車』の演技で、うっかり第55回ブルーリボン賞新人賞を受賞
プチ鹿島
1970年生まれ、長野県出身。身長157cm。時事ネタと見立てが得意な自称・時事芸人。オヤジ発信でオヤジ界だけに響くマスコミ報道や切り口を「オヤジジャーナル」と呼び、それをウォッチするのが日課。
サンキュータツオ
1976年生まれ、東京都出身。お笑いコンビ「米粒写経」を組む。日本で唯一の学者芸人で、早稲田大学に学部5年・修士3年・博士6年と計14年通った。専門は日本語学。一橋大学の非常勤講師も務める。キーワードは、アニメ、BL、面白論文、辞書、紫、理屈っぽい。
自分は1971生まれなので、マキタスポーツ、プチ鹿島両氏とはほぼ同い年。よって人一倍共感しているのは否めない。だが、番組投稿してくるリスナーの年代は老若男女幅広い印象を受ける。
なぜ東京ポッド許可局が三本ローラートレーニングに向いているのか? その理由は、笑いの質にあって、「爆笑系」ではなく、「クスクス・ニヤニヤ系」の笑いを延々と提供してくれるから。
個人的に、伊集院光の「深夜の馬鹿力」こそがラジオ界のナンバーワンコンテンツだって信じているんだけど、彼のトークは悶絶爆笑系なので、勢い余ってローラーから落ちかけたことが何度もある。笑いのレベルが高すぎて、ふっとばされそうになってしまうの。
ジェーン・スーの「相談は踊る」もたまに爆笑ネタをぶっこんでくるので(いい意味で)要注意。ただ、コーナー間のジングル音がやや大きいのと、出演者の声のトーンが急に上がったりして、音量調整が必要になることがある。
山田ルイ53世の「ルネッサンスラジオ」は比較的おだやかな声のトーンで進むし、なにより男爵の声が良いので、小声でも耳によく通るのだ。よって、彼のラジオを聴くときは、音量を落として聞いている。ただし、(視聴者のネタを紹介する)コーナーはブホッとむせるように笑わせてくるのでローラーから落ちないよう注意が必要。
つまり、上記の3人はいつ、どこで爆笑させられるかわからないというヒヤヒヤ感がある。東京ポッド許可局のお三方は、瞬発力でなく、持久力で笑わされるのだ。
三本ローラートレーニングにおいては、
- 「淡々と」: ずっと弱火で熱するように
- 「長時間」: 1つのテーマで30分くらい話してくれて
- 「ニヤニヤできる」: 爆笑させてこない代わりに、終始(・∀・)ニヤニヤ
のが理想なのだ。その条件をすべて満たすのが「東京ポッド許可局」。
どんなトークをしているのか、コーナーメニューを紹介すると…
1.おかずJAPAN
コロッケ談義をキッカケに「ご飯がすすむ究極のおかずとは何か?」を考え、日本を代表するおかずイレブンを選定しようという、日常の食卓をアカデミックに論争する。
コロッケ1つで30分語り合うって、ふつーの人にはできない。どんなネタでもトークを膨らませ、エンターテインメントに昇華させてしまうプロの手腕が見もの。
2.思わずツイートしてしまいました
「女性はおしっこがどこから出ているのかわからないらしい」という情報を聞きつけたマキタスポーツ氏が驚いて、思わずツイート(twitterに投稿)してしまったことがキッカケでコーナー化に。そんな衝動に駆られるくらい、驚いたり、人に広めたくなったりした情報・出来事をリスナーが投稿するコーナー。
自分が「たしかに!」と膝を打ったツイートにこんなのがあった。
「ワイプをデータ放送で消せるようにできないだろうか」 (ワイプ芸がうざいとき、あるよね…)
「当たり前に食ってるけど、トンカツとカレーってそんなに相性いいか?」 (なんの疑問を持ってなかったけど、濃い✕濃い組み合わせかも…)
「空中ブランコを空中って言うのなら、ふつうのブランコだって空中だと思う」 (おっしゃるとおりだ…)
他にも、「忘れ得ぬ人々」、「そのままでいいの?/そのままでいいよ!」、「自意識が邪魔をする」というコーナーもジワジワと面白い。
3.忘れ得ぬ人々
ふとしたとき、どうしているのかな?と気になってしまう。自分の中に爪跡を残している。でも、連絡をとったり会おうとは思わない。そんな、あなたの「忘れ得ぬ人」を投稿するコーナー。
ふつう、忘れられない命の恩人とか、人生を変えてくれた恩師、みたいな人を紹介するのが定石のところを、「会いたいとは思わないけど、今どーしてんのかな」とふと思う人って着眼点が憎い。
4.そのままでいいの?/そのままでいいよ!
もっと良くできそうなのに、昔から変わらず進化が止まってしまっている「そのままでいいの?」なもの。逆に、工夫しすぎて、良さがなくなってしまった、そのままでよかったのに...という「そのままでいいよ!」なものを紹介するコーナー。
5.自意識が邪魔をする
自意識のせいでできないこと、できなかったことを、理由とともに自己申告するコーナー。
たとえば、意味のない英語を読まれるのが恥ずかしいので、「文字プリントのTシャツが着れない」とか、一気に距離を縮めたい感じが耐えられない、馴れ馴れしくて、「異性の友達を下の名前で呼び捨てできない」など。
プチ鹿島氏は、2013年3月のご自身のブログで「東京ポッド許可局」についてこう振り返っていらっしゃる。
思い起こせば5年前。「いつものおしゃべり、これそのまま配信しちゃわない?」「誰か聞いてくれるかも」。 そんな感じでポッドキャストを始めた「東京ポッド許可局」。
最近でこそ、自分たちでコンテンツを持っている意義を褒められますが「どーせしゃべるなら」というスタンスは変わらない。
だから暗黙のルールもある。公共の電波に乗った「ザ・芸人ラジオ」ではないから、しゃべる調子は「オフ」のまま。張り切らない。観客を意識しない。
そのかわり本当に思ったことをぶつけ合う。小さなザワザワ程度のテーマでもいい。だけど居酒屋テイストでお酒が入っちゃうのもアレだから喫茶店で話そう。テーマは用意せず、みんなそろったときになんとなく話し出そう。
こうして粛々と「屁理屈」トークがおこなわれたわけです。
なるほど…。「張り切らず、聴衆を意識せず、テーマすら用意せずに本音で語り合う」というこだわりがあったのか。だから、こんなにも共感できるのか。面白いのか。このブログを読んで、東京ポッド許可局の真髄が垣間見れた気がした。
ちなみに放送時間は、土曜日の27時。ちょっとかわいらしい時間帯。
ありがとう東京ポッド許可局。ずっと続いてほしい、ステキな番組です。
三本ローラートレーニングする方も、そうでない方も、「東京ポッド許可局」をぜひ一度お試しいただきたい。中年男性なら、ハマることうけ合いである。ツイッターもあるよ。
画像引用元は「東京ポッド許可局」公式サイト
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