新潟県の妻有地方で開催された『ツールド妻有』に参加してきた。
勤務先のローディ先輩はこれまで8回参加していて、事あるごとに「ツールド妻有はいいよ!まず景色がいい、エイドステーションの補給食が絶品、でもって人々が温かい」と口癖のように語っていた。
しかし、これまでエイドステーションで食事するイベントに参加したことがなかったので、話を聞いてもいまいちピンとこなかった。
「エイドステーションの補給食がいくら美味しいっていっても、しょせんバナナとかキュウリでしょ?」
「田舎の景色だったら、わざわざ新潟まで行かなくても、秩父の峠があるじゃない」
「人のぬくもりって、そういうのは昭和までの話では」
……と、ほんの少し思ったことは否定しない。
しかし、余りにも熱心に勧めてくださるので、「体験したことがない人間には想像のつかない世界があるのかも」と考えを改め、エントリーしたのだ。
イベントを終え、川口市に戻ってこのブログを書いているんだけど、結論から言おう。
「ツールド妻有サイコー! 新潟県の食事と景色に感激! イベント運営&ボランティアの人々のホスピタリティに感動!」だった。お世辞抜きで、素晴らしいイベントだった。
期待をはるかに上回るステキなイベントだったので、ぜひここでも紹介したい。あまりほめすぎると、来年のエントリーがしにくくなってしまうかもしれないが、やはり良い物は良いと伝えたいのだ。
そもそも、ツールド妻有とはどういうイベントか?
TOUR DE TSUMARI(ツールド妻有)は、新潟県妻有(十日町市・津南町)地方で、3年に一度開催される現代アートの祭典「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」において、建築家伊藤嘉朗氏が、2006年に企画・発案されたサイクリングイベントです。
伊藤嘉朗氏は、美しい里山の風景やアート作品、建築作品などを楽しみながら自転車で巡るアートツアーとして、移動そのものを作品のテーマにしました。
2006年以降、伊藤嘉朗氏を中心に、地元の大勢の皆さんのご協力のもと、毎年開催されており、2009年と2012年は「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」の開催年であり、芸術祭の公式イベントとして開催されました。
※ツールド妻有公式サイトから引用
ツールド妻有はただのサイクリングイベントではなく、芸術祭の一部なのだ。走っている我々サイクリストにとってはイベントでしかないかもしれないが、主催者からすると、走っているサイクリストたちも芸術作品の一部という位置づけなのである。コンセプトが大きい!
用意されているのは70, 90, 120キロと3タイプのヒルクライムイベントだ。レースではないので、順位やタイムを競うことはしない。12~14キロごとに用意されるエイドステーションでの補給食に舌鼓を打ちつつ、マイペースで制限時間内に走る。
マイペースで走ってよいとはいえ、高低差はけっこうある(120キロコースの獲得標高は2000メートルちょい)。平地はほぼなく、登りと下りをひたすら繰り返す。
ちなみにエントリーしたのは120キロコース。せっかく新潟まで出かけるのだから、思い切りもがきたいではないか。
ということで、時系列&ポイント毎にまとめて、2回にわけてレポートしますね。
輪行で行くか?クルマで行くか?
これはかなり迷ったがクルマにした。今回は2泊するつもりだったので、荷物がそこそこの量になる。それらをすべて背負って移動するのはきっついので、パンダに全部詰め込んで移動することにした。
勤務先からは他に2名参加したのだが、輪行移動だったので現地合流することにした。
結果的に、車にして正解だったと思う。まず現地の足にもなるし、買い物をしたり荷物を移動させるためにも使える。あと、イベント前日は雨だったのでなおさら助かった。車移動だと、バイクスタンドとかフロアポンプといった、「輪行ではどうしても運べない器具」も持っていけるのもGOODポイント。
車があったおかげで、宿から15キロ離れた『ナステビュウ湯の山』という日帰りの松之山温泉にも行ったんだけど、泉質も露天からの風景もよくてくつろげた。ちなみに源泉は95度(!)だけど、もちろんぬるめてあるので心配無用(笑)。
川口市から妻有まで片道210キロ。まずまずの距離ではあったものの、パンダでドライブも楽しめたと思えば悪い話ではない。藤岡ジャンクションまでは軽い渋滞があったけど、群馬に入ればほぼほぼスムーズに走ることができた。
※もうちょい走れば日本海
宿泊先はレース会場の近くがいい
ツールド妻有の参加者は1,000名。これくらい出場人数が多いイベントになると、「ひとつの村だけでは、宿泊キャパが足りない」事態が起きる。
朝の7時に出走するので、どうしても前泊する必要があって、ちゃんと宿を確保しておかないと、「イベントにエントリーはできたけど、泊まる宿がない!」なんてことになり、会場から数十キロも離れた町まで走らねばならなくなったりする。(現にそういう人はいる)
※会場のミオンなかさとからほど近い「和泉屋」さん
そこは(すでに8回もツールド妻有に参加している)ローディ先輩が機転を利かせて、スタート地点からたった2キロの宿を確保してくださった。これはすごく助かった。なにしろ、当日は4時半に起床したからね。
5時過ぎに食事をし、身支度を整え、バイクを用意し、荷物を預け、クルマを所定の位置に移動させ…なんてやっていると、あっという間に時間が過ぎてしまうものなのだ。遠くに宿泊していたら、3時起床で寝不足のまま走るはめになっていただろう。
ちなみに宿泊先は「和泉屋」さん。公式ウェブサイトかブログを探したのだが、発見できなかった…。家族で運営されている小さな旅館で、ボリュームある食事が美味しかった。
雨を想定しておくべし
前日の昼に全員が宿に集合し、荷物を預けて昼食をとり、コースチェックを兼ねて試走したのだが、試走終わりと同時にザーッと雨が降ってきた。どうにか止むことを祈ったが、雨は夜通し降り続け、翌朝の起床時(4時半)もまだ降っていた。
路面はびしょ濡れ。「夏とはいえ、雨の中を120キロ走るのはしんどいな。下りはスピードも出るから身体も冷えるし、スリップの危険性も増すし」と心配してしまった。
※スタート前まで小雨がシトシト
山の天気は変わりやすい。週間天気予報はアテにならない。経験豊かな先輩方は(ヘルメットにかぶせるための)シャンプーハットとかシューズカバー、アームカバー、袖なしのウィンドブレーカー等を用意していて感心した。こっちはといえば、なんの雨対策もしておらず、準備の甘さを反省した。
ちなみにレース開始直前に雨はやんでくれたからよかったものの、雨の中を走ることになっていたら、かなりつらい思いをしたであろうことは間違いない。雨対策は必ずしておこう。
※あいにくの天気だけど、霧がかった山々と田園風景に見とれてしまう
パンク修理キットはぜったいに携行すること
まさかロングライドに出場する人で「パンク修理ができない」とか「修理キットを持っていない」なんてことはないと思う。実際、パンクはあちこちで起きた。120キロの道中で、ざっと30件はパンク修理を見かけた。
まずスタート500メートルでパンクしている人がいたし、数キロごとに修理している人を目撃したね。どなたも慣れた手つきで軽々と修理していたが、空気入れを持っておらず、主催者側のサポートバイクの空気入れを持ってきてもらっている人もいた。レース開始直前まで雨だったことも、パンク多発の原因だと思う。
100キロを越えるイベントではチューブ1本では心細い。予備は2本は持っておきたいところだ。
※20キロ地点にて。左にはパンク修理中の方々が
日本の原風景を堪能せよ
新潟県には冬のスキーシーズンにしか訪れたことがなかったせいか、「新潟=雪国(白い)」という固定観念があった。(失礼にもほどがある)
ところが、夏の新潟の美しいことといったら!
坂の上から見下ろす延々と続く棚田。稲穂がなびく一面の田園風景、人の手が入っていない自然のままの山々、澄み切ったおいしい空気。まるで、日本昔ばなしのワンシーンを切り取ったような日本の原風景を味わうことができた。
別に自分は田舎で生まれ育ったわけじゃないけど、にもかかわらず「これぞ日本!」って声に出したくなったね。秩父の峠も悪くはないけれど、スケールが違いすぎる。
この風景のおかげで、120キロの道中がまったく退屈ではなかった。この風景は、お金を払ってでも愛でる価値があるよ。
エイドステーションの食事の旨さはハンパない
半信半疑だったエイドステーションの補給食だが、とんだ誤解をしていた。うますぎるのである。
エイドステーションは8箇所あって、甘いもの、しょっぱいもの、温かいもの、冷たいものをこれでもかと提供してくれる。
バナナやグレープフルーツ、スイカ、トマト、桃はどれも甘かった。漬物類も充実してて、キュウリやナスにボランティアの方々手製の味噌をつけて食べるのだが、絶妙のお味なの。
地元のオバちゃん、お婆ちゃんたちの手作りなので、さらに有り難みが増す。そして魚沼産コシヒカリでつくったオニギリにとどめを刺された…。
炊いた米に塩を混ぜて握っただけなのに、なぜこんなにも人の心を打つのか…。塩握り飯だけではなく、鮭、昆布、梅と具のバラエティも豊富。たぶん、おにぎりだけで10個は食べた。
※家に持って帰りたくなる美味さ!
途中、ツールド妻有名物の魚沼産コシヒカリで作った巨大パエリアにも出くわした。ほっくほくで具もジューシー。思わずおかわりしてしまった。
パエリアの隣にあった冷や汁もいい仕事をしていたね。地元で採れた夕顔が入っていた。
「夕顔」とは聞いたこともない野菜だが、ウリ科の植物で巻き寿司などの具に使われる「干瓢(かんぴょう)」の原料である。冬瓜に似ているね。ホッとする味だった。
あと、手作りの豆腐にも衝撃を受けた。
「醤油かけずにたべてみてよ!」とオバちゃんに言われ、「味はするのかな?」と恐る恐る口に運んだら、なんと甘い!ほんのりではなく、ビシッとしっかり甘いの。これはもはや大豆のプリンと呼ぶべきお味だ。
醤油をかけずにそのまま食べたほうが美味しいと思った。大豆の味がこんなにしっかりした豆腐は久しぶりだ。ふだん食べているスーパーの真っ白な豆腐とはまったくの別物。
昼ごはんに用意されたソバは、地元の蕎麦屋さんがわざわざ出張してこしらえてくれた。すごい行列だったのでさぞかし美味しいのかしらと並んでみたら、期待違わぬ味でビックリ。エイドステーションでこんなに本格的なソバを賞味できるとは…。
ゴール後にもおにぎりと豚汁をいただけるのだが、疲れ切った身体にしみる。そしてひたすらにうまい。
笹だんごやクッキー、あめ玉等のスイーツもあったし、チーズや魚肉ソーセージといったタンパク源も用意されていて、「胃袋がいくつあっても足りないよ~」状態。
ツールド妻有の補給食はもはや「グルメ」と呼ぶほうがふさわしいレベルだ。運営者&ボランティアの方々は押し寄せるライダーたちにバンバン食事を提供してくださっていた。
※1,000人分の補給食を仕込むのは、とっても重労働だったはず。感謝である。
それも、事務的に渡すとかではなく、笑顔と応援の言葉をかけてくれるし、どこで採れた食材かも親切に教えてくれる。まさに街を上げてイベントを盛り上げるぞって意気込みがヒシヒシと伝わってくる。その姿は感動的ですらあった。
食物のことを熱く語りすぎてしまったようだ(笑)。
後編はこちらからどうぞ!
コメント
コメント一覧 (7)
スタッフやボランティア皆さんの温かい歓迎は素晴らしい!
120キロ走ると体重2キロ減くらいな私でもゴール地点ではタプタプな気持ちです(笑)
(^^)
それにしてもあのおにぎりとお漬物、食べたいなあ…。
もちろん思い出しての蘇りですよねぇ(笑)
DAHONで参加することもできるんですかね?!w
とても面白そうな(美味しそうな?)サイクルイベントですね。
アップダウンは、キツそうですが食べポタ気分で参加したいです。満腹でリタイヤしそうですが・・・(笑)
99%がロードバイクでしたが、ミニベロで参加する強者も数名いました。フロントはもちろんダブルでないと即効で死にます(笑)。
そらさん
消費より、摂取したカロリーのほうが多かったような気がします(笑)。次のエイドの食事もしたい!一新で完走しましたよ!
(*^^*)