カーボンホイール…そこそこ経験と知識を積んだローディであれば、少なくとも一度は考えたことがあるはずの存在。それがカーボンホイール。

一昔前までは、カーボンホイールといえばチューブラーを指すことが多かったが、いまはカーボンクリンチャーも台頭し始めつつある。価格も「妻に離婚を切り出されはしないが、半狂乱にはさせるかな…」くらいの、なんとか手を出せなくはない値段に下がっており、ますます悩ましい存在になっている。 

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自分のホイール歴はこんな感じ

ロードバイク(BOMA の Refale )

カンパニョーロのゾンダ(アルミクリンチャー)

同じくカンパニョーロのシャマルミレ(アルミクリンチャー)

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※シャマルミレです

ミニベロ(タイレルのCSI )

タイレルのAM−9(アルミクリンチャー)

Kitt design Carbon Tri-spoke Wheel(キット・デザイン カーボン トライスポーク)

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インプレッションは下記リンクを参考にしてほしい。それぞれに良さ&特徴がある。

>> シャマルミレ(Shamal Mille)で100キロ走ってきたので、インプレッションするよ(シェイクダウン編)

>> カンパニョーロのアルミクリンチャー、「シャマルミレ」で2,000キロ走ったインプレッション

>> カンパニョーロ(シャマルミレ)のブレーキシューを交換&19か月めのインプレ

>> Kitt design Carbon Tri-Spoke バトンホイールのロングタームインプレッション(走行距離1,000キロ)



さて、そんなときに読んだのがCycling Tips.comの「カーボンホイールにはどんな価値があるのか?(Where is the value in a carbon wheelset?)」という記事。ど直球のタイトルで、これは読まざるを得ない。かなりの長文ではあるが、がんばって翻訳してみよう。

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全文翻訳の記事化に際して、公式サイトからお問い合わせして、サイクルガジェットで紹介してよいかの確認をしたところ、音速の速さで「ありがとう!もちろんいいよ!」とレスが来た。 感謝である。

アップグレードを考えるとき、人はホイール交換をまず考える

プロは当たり前のように使うカーボンホイール。空気抵抗が少ないとか、クリンチャーより段違いに軽いとかって理由はいろいろだが、なにしろ高い。物によっては30万円オーバーはザラ。ゴキソホイールとかライトウェイトとかのハイエンドモデルになると、50万円オーバーも当たり前だし、100万円近いモノだって存在する。こんなのをオクサマに内緒で買おうものなら、その場で離婚を切り出されるであろう。

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で、湧いてくるのは「カーボンホイールが良いものであるのは認めるとして、それだけの価値があるの!?」という疑問である。

オーストラリア人のテクニカル系エディター、マット・ウィクストロムさんは4年前からこの問題に取り組んでいる。

ロードバイクのアップグレードを考えるとき、多くの人が考えるのがホイール。コンポーネントよりもホイールのほうが見た目のアピールも大だし、総じて満足度も高い。実際、マットさんもいろんな人からアップグレードの相談を受けるそうだが、圧倒的にホイールに関するものが大半を占めるそうだ。

カーボンホイールは、アルミホイールを駆逐してしまうのか?

マットさんが驚かされるのは、消費者サイドの情報量。ネット時代であることも影響していると思うが、実によく勉強しており、ものすごく詳しいのである。

かつて、ホイールというものは完成した状態で買えるものではなかったそうで、商品を見ず、確かめることもできないまま買うしかなかった。それが、いまは完成したホイール(いわゆる完組ホイールですね)が普及したせいで、事前に調べることも、比較することも、詳細スペックを集めることもカンタンになった。つまり、ホイール購入のハードルが大幅に下がったわけ。

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※死ぬほどカッコいい…

ここ数年でハイエンドのカーボンホイールは存在感を増しており、市場も拡大している。なんなら、安い完組ホイールの市場よりも成長角度が高い。高い買い物ではあるが、その価値を消費者もよーく理解しているようだ。

さらに最近では、従来の常識だった「カーボンホイールはむちゃんこ高価」を覆し始めている。その最たる要因がアジアの新興メーカー。性能はそのままで、コストダウンして市場を獲りに来ている。

カーボンホイールは、アルミホイールを駆逐してしまうのだろうか?アルミフレームがほぼほぼカーボンフレームにとって代わってしまったかのように。

カーボンホイールの価値と価格変動

カーボンホイールのメリットはわりとはっきりしていて、「軽くて強度が高い」こと。技術の発達により、デザインもパフォーマンスも両立している。

具体的にどれくらいホイールは進化しているのか?カンパニョーロのシャマルを例にとると、90年代のリムは40ミリのハイトで重量がざっと1,980グラムあった。当時は、これでも革新的なハイエンドホイール(当時の中では300グラムほど軽かった)だったのだ。

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それから20余年。カーボンリムで40ミリ以上のディープリムでも1,500グラム切るのはざら。ローハイトのチューブラーであればさらに軽いものもあって、最軽量だと1キロを切る製品すらある。ホイールの進歩、ヤバい。

硬さや強度でも、アルミリムにそん色のない性能を確保できており、造形デザインの自由度も高く、デザイン(=カッコよさ)の面においてもカーボンの優位は揺るがない。

もともとはカンパニョーロのシャマルで採用されたNACA airfoilという飛行機の翼のような形状のリムは、アルミで加工しやすかったのだが、90年代にZippやHedのカーボンホイールで真似されるようになり、さらにワイドでドーナツ状に近い形で登場することになった。

実験室での空力テストも当たり前となり、消費者は数値結果やその他スペック情報を見比べながらどのホイールを買うかを検討できる世の中になっている。

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さらに、カーボンホイールの価格は年々下落している。ZippやEnveのような旧来のメーカーが価格を落としているわけではなく、新興の小規模メーカーの台頭によるところが大きい。自社で生産ラインやテスト設備は持たず、低価格で生産できるアジアとパートナーを組んでいる。

そういった新興メーカーのホイールは、いわばジェネリック的な産物ではあるものの、スペックはハイエンドホイールに負けず劣らずだ。しかも価格を思い切り下げることができる。結果として、市場の価格競争が熾烈になった。

カーボンホイールがこんなにも普及した背景には、大幅な価格の下落が一役買っている。

カーボンホイールで得られる効果は、思っているより小さい

高価なハイエンドホイールのほうが、安いモノよりウィンドトンネルでの空力テスト結果はよくなる傾向にある。ただ、それはあくまで数値上の話であり、実際の公道で走らせるときの差は大したことはなく、やれエアロダイナミクスがどうのとか、何秒タイムを縮めた…のを再現できるわけではない。

あと、これも述べておかねばならない。メーカーが伝播する数値改善は、人工的に作らてた環境下を、かなり長距離をハイスピードで走行させたテスト結果である。加えて、空力の良さとはある特定の方向からの空気の流れの状況下でのみ発揮されることが多く、ちょっとでも方向を替えるとか、風の流れが変わるととたんに数値は悪化する…こともある。もちろん、どんなバイクに装着するかででも結果は変わる。

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よって、メーカーの喧伝する性能とは、「理論上のハナシ」だと考えたほうが良い。「高いカーボンホイールを買ったから、むちゃんこ速く走れるぞ!」…とは、残念ながらならないのである。薄々知っていたことではあるが、まあそうだよね…。

リムブレーキがカーボンホイールの弱点

ブレーキング性能においては、カーボンリムではなくアルミリムに軍配が上がる。しかし、カーボンホイールを履くユーザーは速く走りたい。ここで矛盾が起きる。カーボンリムの性能は年々向上しているので、ブレーキも効くようにはなってきた。ただ、熱による変形リスクは今も残っており、長いダウンヒルでは熱膨張の可能性がある。

熱を起こしにくいと言われるサードパーティ製のブレーキシューも登場してはいて、それを使う選択肢もあるが、ブレーキの選択肢が狭まってしまうという宿命を背負うことにはなる。

熱によるダメージは避けられなく、カーボンリムを使う以上は受け入れなければならない。メーカーの中には、「熱でのダメージは保証対象外」とするところもあり、悩ましいところだ。過剰に心配する必要はないが、カーボンリムユーザーは、アルミリムよりはちょっと多めにケアをし、注意して使ったほうが良いだろう。

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ただし、これらはリムブレーキの話で、ディスクブレーキであれば無関係。ブレーキパッドはリムに当たらないので、形状も自由。シューの接触による劣化もない。いずれ、ロードバイクのディスク用ホイールでもカーボン化が進むであろう。

耐久性と強度はどうなのか

カーボンフレームには20年以上の歴史があるので、強度とか信頼性においてあまり不安要素はない。カーボンホイールも同様だ。かつて、カーボンホイールは「日常は使わず、レース、イベント等の決戦用」として使われたものだったが、現在はそんな使い分けをする必要のないくらい強度は確保されている。

とはいえ、カーボンはインパクト系の衝撃には弱いのは事実。落車で割れることはあるし、路面の穴ぼこにガツンと落ちてヒビが入る可能性はある。壊れたカーボンホイールの修復は高くつく。これもカーボンホイールの弱点。リムの寿命も、アルミを凌駕するのはなかなか難しい。

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ここで興味深い情報を紹介すると、最近はMTBユーザー(ダウンヒル系含む)がカーボンリムのホイールを使い始めているという事実。カーボンリムの強度が飛躍的に向上していることが分かる。空力とかエアロダイナミクスだけがカーボンの利点でないのである。

代替品を検討するということ

カーボンホイールが勢力を伸ばしているとは言っても、アルミリムにだって利点はある。やはり安いのは魅力だし、寿命も長い。ブレーキもアルミのほうが効く。そして、カーボンホイールの宿命である、ブレーキング時のリムの発熱も心配無用。

あと、カーボンとアルミを組み合わせたハイブリッドモデルもある。ブレーキシューの当たり面にはアルミが使われつつも、リムハイトをカーボンで稼ぐ。カーボンのルックスとアルミリムブレーキのいいとこ取りである。シマノのC40とかC60、Hedのジェットシリーズ、Swiss Side といった選択肢がある(他にもあるが)。

低価格のカーボンホイールってどうなの?

「安いカーボンホイールは中華製であることは多い」ことは大抵の人は知っているし、事実そう。頭の片隅にとどめたほうが良いこととして、購入後のアフターケアと保証問題がある。最悪のケースだが、使っているうちにリムが割れたり、剥がれてくることもある。目に見えないレベルの割れもあって、ユーザーは劣化に気づけない。

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これは、「中華カーボンホイールは質が低くてダメである」と断定するものではない。割れ等の劣化はどんなカーボンホイールにだって起き得る。違いは、よく知られた大手メーカーはクオリティ・コントロールがしっかりしており、リスクが最小限に抑えられていることだ。

では、中華カーボンホイールはろくにテストもせず、雑に生産しているのか?すべてのメーカーがそうだと言うつもりはないが、消費者にはそれを見抜く術(すべ)がない。

カーボンホイールの市場は拡大している

カーボンフレームがアルミに取って代わってしまったように、ホイールでも同じことが起きつつある。アジアメーカーは低価格を武器に勢力を伸ばしている。

とくにそのような低価格のカーボンホイールは、wiggle やChain Reaction Cycles 等のオンラインショップで扱われることが多く、15万円以下くらいで売られていることも多い。まさにカーボンホイールのエントリーモデルだ。ハイエンドホイールの購入者とは直接バッティングはしていないが、今後はわからない。

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ということで、Cycling Tips.comの「カーボンホイールにはどんな価値があるのか?(Where is the value in a carbon wheelset?)」の翻訳紹介でした。


自分はミニベロでKitt design Carbon Tri-spoke Wheel(キット・デザイン カーボン トライスポーク)を愛用中。アルミクリンチャーと変わらずふつうに使っているけど、路面からの衝撃はちょっと気にしてて、激しい段差はなるべく避けている。強度的には全然問題ないのだが、気持ちの問題である。

気になるロングダウンヒルだが、まだ経験がないのでその辺はわからない。栃木県の太平山は3キロと短距離だったので、テストにならなかった。よって、街中の上り下りはまったく気にならないレベルだ。

>> バトンホイールのシェイクダウンを兼ねて、オクサマを太平山(栃木県)に連れて行った

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熱膨張よりも注意するのは、ブレーキシューに(細かな金属片等の)異物が刺さっていないかどうか。カーボンリムに傷が付くのはイヤだからね。ときどき、ブレーキシュー面を指で触って確認してはいる。

扱いはアルミより少々気は使うものの、決戦用とではなく、日常用として使いまくってますよ。走って気持ちよく、床の間に置いて眺めてウットリもできる。

>> バトンホイールのシェイクダウン(150キロ走ってみてのファーストインプレッション)


というわけで、451ホイールでカーボンホイールの選択肢はあまり多くはないけど、Kitt design Carbon Tri-spoke Wheel(キット・デザイン カーボン トライスポーク)の購入&導入を検討されていらっしゃるサイクリストの方々の参考になれば幸いである。



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