個人的に、現時点でもっとも気になるロードバイクコンポーネント、それは「SRAM RED eTap ワイヤレス グループセット」である。なんなら、9100系デュラエースよりも気になる存在だ。(当然、高嶺の花なので、ネットで見たり読んだりするだけ)

昨年の8月時点でシクロワイアードさんが、「2人の店長が語るSRAM RED eTap インプレッション」という記事を出している。写真も豊富で、読み応えのあるコンテンツ。

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※左の黒い四角がバッテリー(フロントディレイラー、リアディレイラーそれぞれに備わる)

ただ、現物を拝んだことがないので、どんな動きをするかとか、臨場感がいまいち伝わってこない。そこで、Global Cycling Network のインプレッション動画(「NEW SRAM Red eTap Wireless Groupset」)を視聴し、翻訳することにした。

プロレースでもすでに実戦投入されているので、さぞかし信頼性は高いのだと思うが、実際SRAM RED eTapどうなのだろうか。以下、80キロほどドイツを走り、検証してきた結果である。




ブラケットは小ぶりで握りやすい

従来のワイヤー式ブラケット同様、あるいはそれ以下のサイズで握りやすいとのこと。手の小さい(指の短い)人には朗報だ。逆に、むちゃくちゃ手が大きな人は、「ちと小さいな…」と感じるかもしれない。

が、コメンテーターのサイモンさんは「個人的には自分の手にピッタリで、よいサイズだ」と言っていた。

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※たしかにブラケットの直径がずいぶん細い気がする


使用歴8ヶ月のユーザーの声

サイモンさんはこの日が初めてSRAM Red eTap に乗ったのだが、女性プロチーム、Team Velocio Sram 所属のローレン・ロウニーさんの声も聞いてみよう。すでに8ヶ月も使用しているので、良し悪しは把握しているはず。

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私が初めて使ったのは、実はレースでなの。ツアー・ダウンアンダーのクリテリウムだったわね。試合開始前の20分位で操作方法を頭に入れなくちゃいけなくって(笑)。

でも、使ってみたらあっという間に慣れちゃった。とくに何も考えず、直感的に操作できたのよ。


初めてロードバイクのコンポーネントに触る人は、少々困惑するかも

ドロップハンドルのロードバイクを触ったことのない人に、SRAM Red eTap の操作方法を説明するのはちょっと骨が折れるかもしれない。が、ロードバイク歴がある方であれば、何の問題もないだろう。(そもそも、生まれて初めてのロードバイクでSRAM Red eTap を選ぶ人はいるのだろうか…)

慣れてしまえば、「一方のレバーで軽くし、もう一方のレバーで重くする仕組み」は、かなり直感的でわかりやすい。レバーそのものはワイヤー式のRed のそれよりもちょっとだけ大きくなっており、指でしっかりと捕まえることができる。

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しかも、変速時は「カチッカチッ」という音がして、クリック感も指に伝わってくるので、「操作している!」感が味わえる。(←これ重要ですね) 。ちなみに、フロントディレイラーを操作するには、左右のレバーを同時にクリックさせる。


感動的な音速の変速スピード

電動コンポーネントのメリットは、なんといっても「変速が鬼のごとく速い&確実(正確)」であること。ワイヤー式だと、動き出したチェーンをしっかりカセットスプロケットの歯の上に乗せるのに、指先でわずかな微調整をしなくてはいけないときがある。しかし、SRAM Red eTap は音速。そして確実。魔法のごとき快適さを堪能できるのだ。

スピードに乗ったスプリント、負荷をかけた状態での変速性能も問題なし。うーむ、素晴らしい。

ちなみに、変速時に電動ならではの「ジッ、ジッ」という音が動画でもかすかに聞こえてくる。最初は違和感があるかもしれないが、すぐに心地よい音色に変わるような気がする。

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SRAMのエンジニアに質問してみよう

お話を聞いたのは、SRAMのグローバルエンジニアリング&デザインドライブトレインディレクターのスコット・マクラーレンさん。

高価な電動コンポーネントを買うとなれば、一般のサイクリストはいろんな心配をするはず。レースで使えるのか、年間を通じた使用に耐えうるのか、雨にさらされるブルペではどうか、泥や砂にまみれるシクロクロスでは使用しても問題ないのか。

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SRAMの開発陣は、どんな環境でテストし、市場投入に至ったのだろう。

屋外のフィールドテストで試す前に、5年間は屋内実験室でテストを重ねてきたんだ。5年という期間は信じられないかもしれないね。なぜなら、自転車パーツの開発にそんな長時間かけるのは通常ではあり得ないからね。

まずは大きなバッテリーを積ませて、屋外、屋内いろんな環境でテストした。雨、砂塵、落車ダメージ、かなり過酷な状況に晒してもみた。さらに、気温も高くしたり、寒くしたり、湿度が高い環境でも試したり。

数年で少なく見積もっても100個以上のテストシステムを作って試したんだ。

結論としては、SRAM Red eTap はどんな環境でも安心して使えるコンポーネントであるとのこと。


フロントディレイラー変速性能が衝撃的…これはヤバい

サイモンさんがヒルクライムでのフロントディレイラー性能を試していたんだけど、もうね、マッハのスピード。

アウター>>インナー、インナー>>アウター、どっちからどっちに変速を繰り返しても、「えっ!そんな速いの?」って驚愕するスピードだった。ヒルクライムする人は激しく同意すると思うんだけど、ワイヤー式で登り降りを繰り返していると、終盤に差し掛かったころには、「指が痛くて、フロントディレイラーを動かすのがもうイヤ…」ってなってしまう。

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※ワイヤーが飛び出していないので、見た目もスッキリ

ワイヤー式である以上、物理的に指でレバーを押し込み、メカを自力で動かさねばならない。それはティアグラだろうが、デュラエースだろうが、同じこと。(入れる力の大小はあるけどね)

電動コンポーネントで自分が最も羨ましいのが、フロントディレイラーの操作である。フロントだけ電動化したい…って山に行くたびに思っている(笑)。


SRAM Red eTap に弱点はあるのか

細かいことだが、SRAM Red eTap にもできないことがあって、それはカセットスプロケットは28Tまでしか使えないという点。それ以上は変速しないのだ。あと、油圧式のブレーキは展開されておらず、いまのところワイヤー式のみ。

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今後の電動化の展開は?

当前ながら、SRAM社は「ノーコメント」を貫いたが(そりゃそうだ)、今後は下位グレードのForceやRivalにも横展開されるかもしれない。

これまで、電動コンポーネントはシマノのデュラエース、アルテグラのDi2か、カンパニョーロのEPS(スーパーレコード、レコード、コーラス)の中から選ぶしかなかったが、SRAM RED eTap も選択肢に加わってウレシイ限り。

お金に余裕のある方は、1セットいかがでしょうか…(*^^*)

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私はデュラエース(ワイヤー)を引き続き愛用します・・・。


※追記(2017年2月25日)※
スラム RED eTap WiFLi 最大32Tまで対応するリアディレイラーが追加(シクロワイアード) 

ロングケージバージョンも登場して、なんと32Tにも対応していますよ(コメントにてご指摘いただきました。ありがとうございました!)