ツールドフランスで走るような、雲の上の存在のトッププロ選手はいったいどんなロードバイクに乗っているのか。こないだはスプリンターとして有名なマーク・カヴェンディッシュのサーベロS5 を紹介した。

>> マーク・カヴェンディッシュの駆る『サーベロ S5』をねっとりと鑑賞できる動画を翻訳しました

今回は、ピーター・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)が実際に使用する愛機、「スペシャライズドのTarmac(ターマック)」を翻訳紹介しよう。
※2017ツールドフランスの第4ステージでそのカヴェンディッシュがゴールスプリントで落車し、進路妨害の直接の原因となったサガンはレース失格処分の裁定を受け、あっさりと大会を去ってしまったが… 

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/ぐうの音も出ない、圧倒的カッコよさ… \

元ネタは、自転車動画コンテンツとしては世界一だと個人的に思っているGlobal Cycling Network の「Peter Sagan's Specialized S-Works Tarmac | Tour de France 2017」である。



サガンのマシン、スペシャライズドのTarmac(ターマック)

スペシャライズドのロードバイクのキャラは大きく、Venge(ヴェンジ)、tarmac(ターマック)、Roubaix(ルーベ)の3つに分かれている。サガンはTarmacを平坦ステージ、山岳ステージ両方で使う(予定だった)。

フレーム重量はなんとわずか735グラム。トレックのエモンダ(Emonda)の最上位モデル(SLR)はフレームが690g(完成車で4.65kg)なので、業界最軽量ではないが、それでも相当に軽い部類に入る。

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ただ、サガンのフレームには専用ペイントが施されており、そのせいで少々重量アップにはなっている。上記のサーベロ S5 記事でも触れたが、ふつうにペイントすると200グラムくらい重量増になるとのこと。

これまで、Tarmacは「軽量な山岳マシン」って位置付けだったのが、それに加えてエアロダイナミックな形状も得ることになった。なにしろ、先代Vengeよりもエアロダイナミックになったほど。よって、平坦も山岳にも強いとのこと。 (万能マシンやん…)

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※先代Venge

フレームの硬さと走りの質感については、乗り手のサイズや体重に合わせて最適化されているそうで、男女、体重の重い人軽い人、だれでもその性能を堪能できる。

この数年でロードレースの世界ではタイヤのワイド化が進んでおり、そのトレンドに合わせて Tarmacでは30ミリのワイドタイヤまで装着可能。(30インチを履くロードサイクリストは少数派だと思うが…)

Tarmacのフレームは柔軟性も確保されている

サガンのようなトップレベルのスプリンターが使うマシン=素人はとても乗りこなせない超高剛性…かと思いきや、そうでもないらしく、柔軟性やたわみが生じる工夫が加わっている。

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たわみ、柔軟性やの指標を英語で「compliance(コンプライアンス)」と呼ぶ。日本でのお馴染みのコンプライアンスの意味は「法令遵守」だけど、自転車界での意味はそうではない。
※調べてて、初めて知った…

complianceとは、「柔軟性、たわみやすきの指標で、スティフネス、剛性、ばね定数の逆数である。

サスペンションのコンプライアンスとしては、タイヤの復元モーメント、前後力による舵角変化に関するステアコンプライアンス、前後コンプライアンス、タイヤのコーナリングフォースによるキャンバー角変化に関するキャンバーコンプライアンスが代表的で、突起による衝撃を従順にいなす乗り心地に優れたコンプライアンス性、キャンバー変化に影響されたコンプライアンスステアなどと表現される。

これらのコンプライアンスは操縦安定性、乗り心地に影響し、ブッシュなどのばね定数の設定とサスペンションのアームやリンクの配置で決まる。
Wikipediaより

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従来の真円形シートポストより平たい形をしており、たわみやすさを確保しているのだそうな。さらにサドルから下への10センチほどは、さらにひらたくなっており、乗り心地に貢献させている。

サガンのマシン専用のカスタマイズ

もともとTarmacは軽量フレームだが、そのまま最高クラスのパーツ、コンポーネントで組んでしまうと、UCI規定の6.8キロを下回ってしまう。よって、わざと重りをつけて6.8キロにしている。

サガン用に特性ペイントが施されているため、少々ウェイトアップになっている。「スーパースターペイント」と呼ばれる特別な技法が使われていて、天気の良い日は虹のカラーを表現するそうな。ただ、このペイントをしても、それでもUCI規定値より軽くなってしまうらしく、メカニックは多少の重りをつけることになる。ちなみにサガンのマシンはきっかり6.8キロである。

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サドルは「スペシャライズドのRomin Evo」で、シートレールはカーボン製。Sのマークはゴールドカラーだ。


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ステムはブランドが記載されていない14センチのマッチョなものが取り付けられている。その下に5ミリほどのスペーサーがあり、セラミックスピードのヘッドセットが乗る。


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ドロップハンドルはスペシャライズドの「Aerofly」。前から見ると、Venge VIAS で見るような形状をしており、空力を意識しているのがわかる。


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コンポーネントはデュラエース(R9150) Di2で、もちろん最新型。


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ブラケットのやや下&内側にスプリンターシフターが忍ばせてある。


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前後のブレーキはデュラエース9100デュアルマウント。ディレイラーは9150Di2だ。リアブレーキが特徴的で、カーボンのようなブースター板で補強されており、ダイレクトマウントブレーキの剛性アップに一役買っている。


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カセットスプロケット(11-28T)、チェーンリング、チェーンすべてが9100デュラエース。ペダルもデュラエース。


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チェーンリングには4iii製 のパワーメーターが控えめに埋め込まれている。思ったより小型な印象。

サガンのホイールとタイヤ

ホイールはスペシャライズドのインハウスブランドである「Roval」のCLX50で、2017年にリリースされたばかり。リムハイトの厚みが50ミリあると、ホイールの存在感が大きい。ものすごくカッコいい。タイヤもスペシャライズドのブランドで、Turbo Elite 。

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クランク長は172.5ミリ。53-39Tのチェーンリング(リアは11-28T)でこの辺はカヴェンディッシュと同じギア比だ。

ハンドル幅は42センチ(センターからセンター)。身長172センチの中肉中背の自分のハンドル幅が40センチなのだが、サガンのような大柄な選手はもっと幅が広いのかと思ってたら、意外にそうでもなかった。

細かい話になるが、サドルの先端からステムの中心位置までの距離は60センチ。BBの中心からサドルの上部までは75センチだった。


以上、ピーター・サガンの愛機、「スペシャライズドのTarmac(ターマック)」のご紹介でした。形状もさることながら、ガンメタちっくなカラーリングがたまらないくらいカッコいい…。


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