なぜサイクリストの中には、一定数の割合で坂バカが存在するのか。 坂の魅力とはなんなのか。

自分がヒルクライムというものに初めて挑戦したのは、2013年の秋。ダホンのMuを買ってちょうど3年後のことだった。それまでは、ヒルクライムする人を、「わざわざ辛い峠に好き好んで出かけて、苦しんで登るなんて…いったいどういう脳みその構造をしているのだろうか。自転車は平坦路を走るのが当たり前だろうに」と首を傾げていたものだった。

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定峰峠、白石峠等の秩父方面の坂に先輩サイクリスト達から誘われ、「えー、どうせつまんないじゃん…なんでわざわざ苦しみに行くのよ…。でも、まあ何事も経験だから1回だけ付き合おう。何か発見があるかもしれない」って割り切って出かけたのだが…。


「むっちゃ面白い!また行きたい!」


ってなった。まず景色が美しい。大自然に囲まれるヒーリング効果。ただただ無心になれるひととき。なによりでかいのが達成感。これが病み付きなのだ。(ヒルクライムをがつまらないと決めつけていたことを、諸先輩方にジャンピング土下座でお詫びしたいキモチ)

で、一度ヒルクライムの魅力に取り憑かれると、今度は「もっと体力をつけたい。あの苦しかった坂をラクラクとねじ伏せたい」という情熱がこみ上げてくる。しかし、あいにく自分が住む埼玉県南部(川口市)には坂がまっったくない。

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※埼玉県南部は基本フラットしかない

周辺の蕨市、戸田市、越谷市、さいたま市、草加市、東京都内、、、ぜんぜん練習できる場所がない。物見山もいいけど、本格的なトレーニングには物足りない。秩父は地味な遠いし、たいていの山は冬は登れないし…。

そんなときに観たのが、Global Cycling Network の「坂が近くにない地域に住んでいるサイクリストはどうやってヒルクライムの練習をすればいいの?(How To Train For Climbs When You Live Nowhere Near Them)」という動画。まさに知りたかったことなので、翻訳してご紹介しよう。



ヒルクライムに求められる力

ヒルクライムとはシンプルな作業の繰り返し。「ハードにペダリングする + 長時間休まず続ける」以上である。

よって、これに似た状況を作ればよい。サーキットを延々と回る、渋滞や信号のない道路で走る、下りやコーナーなど、ペダリングを止める要因をつぶすのだ。

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※頂きが途方もない先になると、心が折れそうになるけどね…

逆時計回りに走る

元プロサイクリストのダンさんは、現役時のトレーニングとして、「1周10キロの周回コースを、”逆時計回り”に走る」ように心がけていた。そうすることで、片方の交差点にだけ注意すればよい状況が作れる。イギリスは日本と同じ左側通行なのでこの方法が当てはまる。アメリカなど、右側通行の地域であれば、時計回りに走ればOK。

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これ、自分も物見山でやっている。交差点での信号に引っかかる回数が少なくて済むので、よりトレーニング効果が高いのだ。

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グラベル(砂利道)を走る

ダンさんが現役時代を振り返って後悔していることがあって、こう語っている。

家の近所にグラベル(未舗装路の砂利道)があったのに、そこをトレーニングに使わなかったんだ。今思うと、現役のころのトレーニングに使えたからもったいなかったね。

信号はないし、交通量も少ないし、さらに、砂利道を走るには舗装路以上のパワーが求められる。山を登るときに求められるパワーに似た状況が作りやすいんだ。

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平坦な田舎に住んでいるサイクリストには参考になるかも。ただ、パンクリスクが高いので、ふつうの23cタイヤのロードバイクでゴリゴリ走るのはオススメしない。パンク耐性が強いタイヤを履かせたシクロクロスとかグラベルロードなら大丈夫。

屋内でのトレーニング

てっとり早く、高い負荷を休みなくかけたいのであれば、屋内トレーニングがベスト。誰にも邪魔されず、一心不乱にもがくことができる。事故の心配はなく、天気も時刻も気にせずできるのもメリット(近所迷惑にならなれればだが)。

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三本ローラーではたいした負荷はかけられないが、それでもギアを重めにしてケイデンスを上げ、スピードを落とさないように維持すれば心肺は鍛えられる。(筋力トレーニングにはあんましならない)

自分がやってるのはこれ。自分はスピードを追求しないまったりヒルクライマーなので、欲しいのは豪脚ではなく、淡々と、しかし確実に大きな峠を越えられる心肺能力。三本ローラーは心肺を鍛えるにはちょうどよい器具である。

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さらに、負荷を変えられるタイプの固定ローラーやZwift とスマートトレーナーを組み合わせれば、勾配を再現してくれるので、実際に山を登っているかのような状況を人工的に作り出せる。

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※さすがに一般家庭にこれを置くのは無理だが…

予算と本気度があるサイクリストは検討してはいかがだろうか。

プラスアルファで負荷を生み出す

平坦路であっても負荷は追加で生み出せる。ブレーキをかけながら走ることでも負荷は生めるが、当然ながらオススメしない。ではどうするか?



向かい風を利用するのである!


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サイクリストに最も嫌われる気体、、、それが向かい風。とくに冬の北風は寒いわ、強いわ、メリットゼロ。しかし、物は考えようで、向かい風に突っ込んでいけば負荷が作れる。

河川敷サイクリングロード等、風を遮る場所で使えそうな方法ではある。

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※ただし、サイクリスト以外の人たちとも共有する場所であることを忘れずに

ただ、これだと自然現象任せになってしまうので、もっと賢い方法はないものか?ということで生まれたのが「AIRhub」というデバイス。プロもトレーニングに取り入れているらしい。

カンタンにいうと、わざと回転性が悪く設計されたハブを使うのだ。スピードを上げなくても、平坦路でも、比較的安全に高負荷のトレーニングができる。 自分は使いたくはない(笑)。

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※サイクリングの楽しさをすべて奪い去る製品なので、そこは覚悟してほしい(^_^;)

理想の負荷とは

科学的に攻めるなら、FTP(functional threshold power = 機能的作業閾値パワー)を意識したトレーニングも導入しよう。

FTPとは、選手が疲労しないで1時間出し続けることができるパワーの最高値です。もう少し分かりやすく言うと、1時間自転車を漕ぎ続け、ゴールした途端、倒れ込んで起き上がれないくらい追い込んだ時に、サイクルコンピューターに記録されている平均出力、それがFTPなのです。

引用元: パワトレの始まり「FTPテスト」 そして目標設定、4カ月後の私は…これだけ強くなる!(産経サイクリスト)


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自身のFTPに対し、83~97%でのトレーニングが最も効果が高いそうな。そこがスイートスポットとなる。FTPが250ワットだとすると、204~240ワットを維持するのがよい。 

トレーニングを続けることでFTPが上がってゆく。これがトレーニングの最大の目的。同じ体重でFTPがアップすれば、より速く登れるという理屈ね。

しかも、ヒルクライムをしているときって、自分自身のスイートスポットのゾーンで走ることになるので、まさにFTPのを意識したトレーニングはヒルクライムにもってこいというわけ。


以上、Global Cycling Network による「坂がない地域に住んでいる人向けのヒルクライムトレーニング法」でした。

仕事で達成感を味わうのって、何気に難しいよね

ちょっと考えてほしいんだけど、仕事で(リアルに)ガッツポーズする機会なんて、数年に1回あるかないか。ひとりだけで完結できる仕事ってなかなかないし、チームワークが必要。 そのぶん、結果が出ても「まあ、自分だけの手柄じゃねーし」って、心の底から喜べないものなのよね。(嬉しくないわけじゃないけど)

かといって独りでできる仕事は限られており、スーパーマンでもない限りでっかいことを単独で達成するのも難しい。

プロアスリートが勝負に勝ってガッツポーズしたり、得点を決めて狂喜乱舞するのを見ると、「あー、オレは仕事であんなガッツポーズしたことないなー、うらやましいなー」って思う。

それが、(レベルは違うけど)ヒルクライムなら数時間で達成感を味わえる。「己の脚力(&精神力)だけで頂きまで登りつめたぞ!」って何かに対してドヤ顔できる。それと、ヒルクライムのよいところは、スピードは関係ないところ。タイムトライアル的に速さを競って登るのもひとつの方法だが、そうではなく、マイペースでいくら時間がかかってもよいから、誰の力も借りずに登りきる。それだけで達成感に包まれる。

スピードを競うレースと異なり、誰でも必ず達成感を味わえる。それがヒルクライムの素晴らしさ。

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※次は足をつかずに子の権現坂を登ったる…


ということで、そろそろ春がやってきます。ヒルクライムに行かれる際はくれぐれも事故のないようお気をつけてお出かけくだされ。