2016年のツール・ド・フランスは、クリス・フルームが総合優勝を果たした。

果たした…なんて偉そうに語っているが、スカパーに加入していないのでレースは一切見ていないし、途中経過も追いかけていなかった。レース最終日に知人から「フルームが勝ちましたね」と言われ、「あ、そうだったんですか」ってマヌケな返答をしたくらい。

さて、レースの勝ち負けにあまり関心のない自分でも興味を持たざるをえないユニークな動画がGlobal Cycling Network からリリースされた。 「ツール・ド・フランス出場選手のようにヒルクライムする方法」というタイトルである。これは観ないわけにはいかないので、翻訳してお届けしよう。


How To Climb Like A Tour De France Contender




ヒルクライムはパワーウェイトレシオで決まる

もうこれがすべて。 速く坂を登るには
  • 出力できるパワーを上げる
  • 体重を減らす
  • バイクを軽くする
のいずれかをするしかない。(全部できれば効果高し)

ツール・ド・フランスに出場する選手のバイクは、UCI規定による6.8キロギリギリに寄せられているのでバイク軽量化はまずありえない。よってパワーアップと体重減に注力することになる。

hill


出力できるパワーを上げる

強いサイクリストたるもの、パワーは必須。スプリンターであれば5~30秒の短時間に一気に放出できる力が、クラシックレースの選手であればもうちょっと長い1~5分はもがける方がいい。

しかし、ツール・ド・フランスで勝ちたいなら、さらに長時間パワーを出し続けられなければならず、10分から最大で1時間(!)持続できる能力が必要なんですって。これは山岳ステージだけではなく、タイムトライアルでも活きる。 ヒルクライムのステージで同じパワーレベルの選手同士が競い合ったとしたら、体重が軽い選手のほうが速く走れる計算になる。

体重を減らす

パワーアップよりもやや危険が伴う行為が体重を減らすこと。ツール・ド・フランスクラスの選手の体脂肪率はだいたい5%で、もっと絞っている選手もいる。

当然、体脂肪率5%は年間を通じて維持できるようなコンディションではない。彼らは本線に備えて、極限まで「パワーアップ」し、同時に「限界まで痩せる」……という、ボクサー並みのタフなトレーニングを積んで臨んでいることになる。

hill2

ただ体重を減らすのであればわりとカンタンで、食事を減らせばいいだけ。しかし、プロアスリートはことは単純ではない。必要な栄養とカロリーは摂取せねばならないし、摂り過ぎて脂肪として蓄積されてもダメ。その細い道を綱渡りのように歩んでいるのだ。

hill3


パワーウェイトレシオ

では、ツール・ド・フランス出場選手が、いかに「オレは十分なパワーを持ち、無駄な脂肪をそぎ落とせたのか」を判断するか?

ざっくり言うと、「体重1キロあたり、6ワットのパワーを1時間維持できる」ことがツールクラスの選手の条件。
※近代ではさらにパワーアップしている傾向にある。

hill5


たとえば

体重68キロの選手: 410ワット
体重68キロの選手: 480ワット

を1時間キープできる必要がある。

パワーメーターでトレーニングする方であれば、この数字がいかに常軌を逸しているかピンとくるはず。480ワットを1時間維持できる選手はなかなかおらず、よってツール・ド・フランス総合優勝選手に大型選手がいないのだ。

参考値 クリス・フルームの体重 ナイロ・キンタナの体重 マーク・カベンディッシュの体重 ペテル・サガンの体重 なお、「体重1キロごとに6ワット」はあくまで平均値。現実では、疲れの溜まるステージ後半戦でもこのパワーを維持し続けねばならない。つまり、超人的なのパワーと回復力をセットで持つことが、ツール総合優勝には欠かせない。

hill4


先頭集団を走る

レースで勝つには先頭集団の中にいなければならない。自分のような素人は、「ちょっと後ろの集団にいて、ゴール手間で追いつけばいいんじゃないの?」と思うんだけど、後方集団から単独で追いつくのは数回はできてもすべてのレースのあらゆるシチュエーションで行うのは土台無理。

追いつくために費やさねばならないパワーによって徐々に疲労が蓄積され、最終的にタレてしまう。勝つには先頭集団を走ることが絶対条件だ。

hill8


強いチーム(アシスト)がいる

単独で強いだけではツール・ド・フランスのような長丁場を勝つことはできない。強いアシストがいると風よけになって引っ張ってくれて、エースは体力を温存しながら走ることができる。

自分は「山なんてスピード遅いじゃん。風よけなんてあってもなくても変わらんだろ」と失礼千万に考えていたんだが、あのクラスの選手の登るスピードと自分のそれを比べてはならない。十分な意味がある。

hill9


あと、実際にヒルクライムをするとてきめんにわかるけど、一人ぼっちで走るのはペースがつかめずに精神的にも肉体的にもキツい。目の前で牽いてくれる人がいるだけで、一気に楽になるの。

「なんなんだ、この効果は!一人ぼっちが10の労力だとすると、牽いてもらうと8.0~8.5で済むぞ」って驚いたもん。これは経験してみるまではわからなかった。

27-1
※ソロの登りはキツいです…

クリス・フルームとチームスカイがそれがうまくできているよい例。レース前半の山岳ステージでなるべく先頭を維持できるようアシストが引っ張って時間を稼ぎ、その後に控えるスプリントに参加しなくてもよいように導いてくれるとのこと。これは体力温存になるし、落車の危険性もおさえられていいコトずくめ。

ペーシング(ペースを守る)

ツール・ド・フランス選手のようなパワーも体脂肪率も叶えられない我々のような一般サイクリストでもマネできる点がひとつあって、それは「ペースを守って走る」こと。

プロ選手も我々も同じ人間であり、彼らであっても無限のパワーを出力できるわけではない。当然、彼らだって疲労する。プロ選手は通常はペースを守って走り、「パワーアップを維持できる」と判断した場所でのみペースを破る。

周囲に惑わされず、前半で力を使いきってしまわないようマイペースで走ることが、自分にできるとっかかりのようだ。

37_large



あと、個人的なことだけど、腹回りのだらしない贅肉を落とすべく絶賛減量中。

8月28日に越後で開催される「ツールド妻有」に出場するんだけど、このイベントはとにかく山岳が多い。登りと下りしかない120キロで、登りの間中ずっと自分のお腹の脂肪が憎らしくて仕方なかった。

「ツールド妻有2015」に参加したときの記事

【ツールド妻有・参戦記】 新潟で日本の原風景を愛でつつ、魚沼産コシヒカリに舌鼓を打つ ~前編~

【ツールド妻有・参戦記】 新潟で日本の原風景を愛でつつ、魚沼産コシヒカリに舌鼓を打つ ~後編~

ツールド妻有実行委員会に感謝の意を込めて、僭越ながら改善点を申し上げたい


パワーアップすることはあきらめて、少しでも体重を落としてパワーウェイトレシオを改善しようというワケ(笑)。アルミクリンチャーホイールとしては最軽量に近いシャマルミレで走るし、バイクはフルカーボン。コンポはアルテグラなので十分に軽い。思うように登れなくても、バイクのせいにはできない。

やっているのは

  • 朝食: ヨーグルトかフルーツのみ
  • 昼食: 自由に食べてOK
  • 夕飯: 少なめ&炭水化物をほぼカット

の3点。はたして効果は出るのだろうか…。


以上、ツール・ド・フランス出場選手クラスのスピードで山を登る方法をお届けしました。
\(^o^)/