集団でのツーリングに慣れて、さらにロングライドイベントなんかにも出場して集団走行が当たり前になってくると、「ドラフティング(風除け)ができるようになりたい」という気持ちになるものだ。

非サイクリストにはイメージがしにくいのと同じで、初心者サイクリストからも

たかが人の後ろを走るだけで空気抵抗が減って楽に走れるなんて、ウソでしょー、プラシーボ効果じゃないの?

と言われることがあるが、ぜんぜんそうではない。

前に走者がいるおかげで後続は楽に走れるのだ。プラシーボとか思い込みとか希望的観測とかそういうチャチなレベルではなく、圧倒的な差を味わえる。



ただ、ドラフティング走行の効果を発揮するには、はライダー同士がそれなりに接近する必要があるので、走行のコツとかノウハウはある。

ということで、Totalwomencycling.comの「10 Things You Need to Know About Drafting(ドラフティングについて知っておくべき10の事実)」で紹介されていた10個のコツを翻訳紹介しつつ、自分の経験談を合わせた形でお届けしたい。

何だかんだ、ドラフティングの効果は絶大

「で、ドラフティング走行で後ろの人は何パーセントくらい楽に走れるの?」の問いに対する答えは、「ざっと20~40パーセント少ないパワーで同じスピードで走れる」である。
※2番手よりは3番手、3番手よりは4番手…と、後ろに行けば行くほど楽

「先頭は風を一手に引き受けているわけで、損しているだけなのか」というと、まあそうなのだが、厳密にいうと単独で走るより集団の先頭を牽くほうがじつはちょっぴりトクがある。

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先頭が受けた風が巻き起こす乱気流は、単独走行よりも集団走行時のほうが起きにくく、空気がキレイにふたつにスパッと切れていく。結果的に集団といたほうが先頭も(多少は)エアロダイナミクス的に走りやすい…というメカニズムだ。
※前面からの空気抵抗をモロに受けるのは変わりない(笑)

空気が渦巻き、流れが淀むスポットがある

渦巻きのことを英語で「Vortex」という。エアポケット的な空間のことで、これが生じる場所を利用して空気抵抗を減らすというわけ。

ライダー同士が近ければ近いほど効果的

単純なことで、風除け効果をもっとも得るには、遮蔽物のそばにいるのがよい。前走者の後輪に自分の前輪を近づけていくわけだけど、これ、慣れないとけっこう怖い。

(雑誌やウェブ記事では)ホイールの距離を20センチ前後まで近づけると最大効果が得られると書いてあるが、いきなりはそこまでしなくていいし、なんなら1メートルくらい離れていてもドラフティング効果は感じられる。

走行スピード、集団の熟練度、メンバー同士の呼吸とか相性、走行環境(サーキットか公道か)にもよるので「これくらい近くのが正解」とは断言できないが、不安を感じるようであればそれは良くないサインなので、無理しないでおきましょう。

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/理想はこれくらいの距離感\

あと、ホイールをハスらせる(ホイール同士が被った状態)のは厳禁!この状態で前走者が走行ラインを変えたりすると、後続のフロントホイールが弾かれ、一発で落車事故になる。体勢を立て直すとか、そういうレベルの話ではない。

くれぐれもハスらせないように注意を。そして、周囲があなたに対してハスらせてきたり、他の人にハスらせていたのを目撃したら、事故予防のためにその危険性を伝えてあげよう。

頭を上げ、常に視線は前方に

路面、前走者の後輪を眺めていてはいけない。視線は常に前に。頭も常に上げておく。

慣れないうちは「自分のフロントホイールが接触するのではないか」不安になるので、視線を落としたくなるのはわかる。そして、ときどきチェックするのはもちろん良い。(ただ、そのときも頭を下げるのではなく、眼球を動かして視線移動させるほうがベター)

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あと、距離感は目視だけでなく、「自分と前走者の背中の距離感」で測るのがオススメ。第6感的な…というと大げさだけど、相手とこれくらい離れていれば、ホイール同士はこれくらい距離が開いている…と(頭ではなく)肌感で知っておく。

そうすることで、しょちゅう目線を下げてチェックする必要がなくなり、走りに集中できる。

急がつく操作はなるべく控え、スムーズに走る

頻繁にブレーキをかけたり、ペダリングを止めたりすれば、スピードに乗せるために余計なエネルギーを使わねばならず、せっかくのドラフティング効果がなくなってしまう。

そのためには前走者の動きを見る、コースの起伏やカーブを同時に視界に入れて予測しながら走る…といったことが必要になる。

まあ、やりすぎは思い込みにつながり、予想外のアクションをされたときに反応しにくくなるので、過信は禁物なあのであるが。

最大の効果を得られるのは後ろから2番目のライダー

二人以上で走る場合、後ろになればなるほどドラフティン効果を得ることができる。たとえば五人で走っているとして、もっとも楽に走れるのは5番手の最後尾。

ただ、集団がそれ以上(6~8名)とかになると、最後尾ではなく、”その一つ前”がエアロダイナミクス的にベストだそうな。そういえば、ツールドフランスのようなプロレースでも、エースは「一番後ろではなく、後ろから2番目」に位置どりしていることが多い気がする。
※最後尾はエースを守る&トラブルにいち早く気づいて対処するための殿(しんがり)的な役割も担っているとは思うが。

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先頭を走るにもスキルと経験が必要

ドラフティング走行のとき、先頭はただ好きなようにペダルを回しているわけではない。後続を安全に牽く責任があるので、実は責任重大。

集団の目となって危険には対処しなければいけないし、声やハンドサインも出さねばいけないし、急ブレーキをなるべくかけずスムーに進路変更したり、ペースを上げすぎもせず、かといって遅すぎもしないスピードで引っ張らねばならない。いろいろとやることは多い。

先頭は交代するものなので、先頭を牽くスキル、後ろを走るスキル、両方が必要である。

先頭交代は怖そうに見える

ハイスピードで先頭交代するのは側から見ると怖そうだが、やってみるとさほどでもなく、なんとかなってしまう。

先頭は後方を確認し、後続に「横にズレるよ」とサインを送り、スピードを少し緩める。そして2番手がスピードを維持したまま先頭位置に入る。

(左側通行の日本を例にとると)先頭がズレる方向は上から見て左。つま。反時計回りに交代していくのが正しい流れとなる。

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さっきの繰り返しになるが、当然ながら2番手はホイールをハスらせたりはしないように。

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練習はまずは3人以内で

まずは少人数で練習を。2人か3人が適当だろう。いきなり4人は多すぎかと。

仲の良い、気心の知れた同士で見通しの良い安全な場所で練習すれば、「あぁ、こういう感覚なのか」とわかると思う。

スポーツでは、理屈ではなく感覚で「そういうことね」ってわかることが重要。サイクリングに限ったことではなく、なんでもそうですね。

サイクリストの用語や単語や話し方に慣れる

べつにドラフティング走行時に限らないが、サイクリストはハンドサインを駆使してコミュニケーションを取るものだ。なので、共通言語は知っておかねばならない。

>> 知っているとドヤ顔できる、濃ゆいサイクリスト専門用語の解説(英語編)

ドラフティング走行のように時間的に余裕のない状況下ではなおさらで、ほんのわずかな意思疎通のズレが判断を遅らせ、事故の原因になることもしばしば。

あと、緊急時はハンドサインでは間に合わないので、そんな時は「大声で怒鳴る」しかない。気づいた人が率先して叫ぶ。躊躇なくシャウトする。恥ずかしいとか地声が低いとか女子だからとかいってる場合ではなく、マジで危ないときとかは「ストップ!!」とか「停止!!!」と腹の底から叫びましょう。

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以下、自分がドラフティング走行の際に意識していることを箇条書きで…

下りではドラフティング走行しない
>> 危険すぎるので

他の人に無理強いしない
>> 慣れてない人への押し付けになるかもなので、する・しないは本人の意思を尊重する

エンデューロ(サーキット)では多用する
>> 他人を利用させてもらうぶん、他の人が自分を利用しても「どうぞ、お互いさまですね」という気持ち

ただし、フラフラと定まらない走り方をする人(もしくは明らかな初心者)の後ろには付かない
>> 後ろに人がいると想像すらしない(できない)人もいるので、そういう人からはむしろ離れる

エンデューロであっても女性の後ろは付かない
>> 男として情けないとゆーか、胸を張れる行為ではない気がするのでマイルールにしてる。あと、「いやらしいわね…私のお尻をジロジロ見て…」と思われるのも心外なので (汗)

指は常にレバーにかけた状態で
>> 言わずもがなですが、いちおう

おまけ

ドラフティング走行は互いに近いことに越したことはないが、じつは5メートル、10メートル離れているても効果はあるというGlobal Cycling Network による検証実験もあるので、合わせて参考にしていただきたい。

>> モト(オートバイ)は選手に風よけとして使われることがあるが、本当に効果があるのか?→衝撃の結果に

>> プロサイクリストのようにドラフティングする技術の身につけ方


最強ホビーレーサー6人が教える ロードバイクトレーニング


以上、Totalwomencycling.comの「10 Things You Need to Know About Drafting(ドラフティングについて知っておくべき10の事実)」のご紹介でした。皆様の安全で楽しいドラフティング走行のお役に立てれば幸いです。


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