スラムの12速対応の新型無線電動コンポーネント、「RED eTAP AXS」が発表された。ロードバイク界ではカンパニョーロに続くスラムの追随である。シマノもきっと時間の問題だろう。

AXSはエー・エックス・エスではなく「アクセス」と読む。よって正式呼称は「レッド・イータップ・アクセス」。(長い)

USの公式サイト

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公式サイトのスクショ

個人的には素敵だなとは思うものの、あまりに高すぎて「ほしい」という気持ちさえ湧いてこない。セカンドグレードのフォース(Force)でも12段化されたらちょっとは考えるかもしれないが、今の時点では完全な高嶺の花。

が、気になる存在ではあるので Cycling Weeklyの動画を視聴したり、メーカー公式サイトを覗いて調べ、わかる範囲でRED eTAP AXSについてまとめてみた。

12-Speed SRAM RED eTAP AXS Revealed! | All You Need to Know | Cycling Weekly



※20分弱あってそこそこ長い。

目次


目次だけでも長い……(笑)

機械式(RED)も12速になったの?

NO。リア12速は電動変速専用である。機械式REDは11速のまま。 ちなみにカンパニョーロの12速は機械式で実現している。なので機械式への技術投入は時間の問題ではないかなと。

RED eTAPって前からあったよね?

YES。2016年に初代RED eTAPが誕生した。 RED eTAP AXSは 二代目に当たる。新型では新規格・新技術を採用し、グループセット内での互換性が向上している。

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※RED eTAP (初代)のリアディレイラー

RED eTAP AXSはどんな新機能を備えているの?

<トップのギアが10Tへ> 従来は11Tが最小だったのが、多段化で10Tを備える。このおかげでギア比を維持しつつフロントのチェーンリングを小型化することができた。これは軽量化にもつながる。ちなみにチェーンリングはインナーとアウターが一体化したダイレクトマウント構造である。
※新型パワーメーター「DZero」を搭載したモデルも選べる(ナシのももちろん選べるて、あとで追加するのもOK)


<リアディレイラーのプーリーケージ取付部にダンパーを搭載>
シリコンフルード内蔵のダンパー付きリアディレイラーと聞いただけで萌えてこないだろうか。チェーンの暴れを抑えてくれるそうな。この辺はMTBを得意とするスラムならではだろうか。

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<スマートフォンでのアクセス機能>
シマノのDi2用アプリ「E-TUBE」に似た、iOSとAndroid用のスマホアプリがあって、Bluetoothで接続して変速モードや変速ボタン、バッテリー残量、メンテナンス情報、ファームウェアのアップデートの設定と変更が可能。事前のユーザー登録が必要だが、SNS認証機能もある。


<変速方法のモードは3種類>
「1.マニュアルモード」
文字通り自分ですべての変速をする方法。

「2.シーケンシャルモード」
リアの変速に呼応してフロントディレーラーが自動で変速する。Di2でのシンクロナイズドシフトに相当する。シーケンシャルモードもシンクロナイズドシフトも、リアディレイラーの動きに合わせ、自動でフロントディレイラーを操作してくれる至れり尽くせりなモードのこと。リアを変速するだけでちょうどいいとこで勝手にフロントディレイラーも変速してくれる。それも、ただフロントをインナーに落とすだけでなく、ギア比率をちょうどいいところに動かしてくれる。

何にも考えずに片手操作だけで変速したいならコレ。自分は2018年10月からULTEGRA(アルテグラ) R8050 Di2 を使っているが、常にシンクロナイズドシフトにしている。

左右の変速レバーを同時押しでフロントを動かすeTAP独特の操作法が好みでないとか、あるいは他社のコンポーネントも併用してて操作に違和感があるならシーケンシャルモードがベストかと。

R8050のインプレはこちら

シマノR8050系アルテグラ(Di2)がやってきたので、写真多めでファーストインプレッション


「3.コンペンセーティングモード」
フロントディレーラーを自分で動かしたときにリア側を自動で最適な歯数に調整してくれる


<新形状のフラットトップチェーン>
チェーンは完全な新設計。12速化対応のため幅が狭くなっている。静寂性が向上しただけでなく、強度と耐久性もアップしたそうな。インナープレートと軸にクロムメッキ処理が施されている。当然11速との互換性はない。

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リムブレーキとディスクブレーキ両方でRED eTAP AXS は選べるの?

YES。両方がラインナップされる。むしろ、ディスク化の流れを考えるとディスクロードに対応しないわけがない…とも思える。

RED eTAP AXS の変速方法は?

初代と基本は同じで、右レバーでシフトアップ、左レバーでシフトダウン(逆の設定も可)。左右レバーの同時押しでフロントディレイラーの変速。ディレイラーの変速パターンの拡張だってできる。

気になるのはタッチのクオリティだろうか。初代RED eTAPに試乗したことがあるが、シフトボタンのフィーリングが何となく安っぽく感じられた。「値段はかなり張るのにプラスチッキーだなぁ」とちょっとガッカリしたのを覚えている。

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RED eTAP AXSがどう進化しているかは気になるところだ。 動画での説明によれば「質感は向上しており、機械式に近いフィールを実現している」そうだ。

要するにギアが1枚増えただけでしょ?

NO、それ以上である。

調べるまで自分も気づいてなかったのだけど、従来のロード用のフリーボディでは使えなかった10Tを備えるのが最大の特徴。トップギアは26T、28T、33Tあって、26/10T、28/10T、33/10Tの3種類がある。

10Tの意味するところは何かと言うと、リア側でより重いギアレンジを使えるようになったぶん、チェーンリングを小型化(50/37T、48/35T、46/33Tの3種類)できているわけ。このおかげで相当なクロスレシオを実現した。

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※チェーンリングが小型化してる

ちなみにカンパニョーロの12速化は「単純に1枚足しただけ」でして、スーパーレコード(&レコード)の12速スプロケットは11-29Tと11-32Tの2つ。10Tはなく、16Tが追加されたのみ。15T、17T、19Tの間に1枚増えたことでクロスレシオにはなったが、それ以上でも以下でもない。

カンパニョーロが世界初となる12速化をスーパーレコードとレコードで実現

カンパニョーロの12速グループセット(スーパーレコード&レコード)のインプレッション動画翻訳

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※これはカンパニョーロの12速です

フロントが最大で50Tだと、巡航速度が落ちちゃうのでは?

NO。フロント50T×リア10Tの組み合わせは、じつは53T×11Tよりも重いギヤ比となり、レース等の高速巡航にも十分以上に耐えうる。

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しかも!10-28Tのスプロケットだと「10Tから17Tまで1つ刻みで変速する」ので最高にスムーズなシフティングが味わえるし、脚力にマッチしたギア比で走れる。これはすごい。うらやましい。

RED eTAP AXS の変速性能は向上しているの?

YES。ひとことで言うと、初代より「さらに速く、よりスムーズ」になった。

フロントのアウターとインナーの歯数の差が縮まったおかげでチェーンの(上下の)移動幅も小さくなったわけ。RED eTAP AXS は大小のギアの差が13T何に対し、シマノは16Tの差がある。
※スラムによると「20%の効率性のUP」になっているとのこと。

スラムの考え方としては、なるべくフロントディレイラーを動かさず、より長時間「Big ring で走ってほしい」というのがある。

いわゆる「フロントを落としたとき起きるスカッという抜け」(あるいはその逆)がなくなり、ペースを狂わされることがなくなる。

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リア側の変速性能も向上したとのこと。チェーンの暴れを抑えてくれるリアディレイラーのダンパーの恩恵も効いているのだろう。ちなみにCycling Weeklyの動画では「初代RED eTAP とシマノDi2を比較すると、明らかにRED eTAP のほうが変速が遅い」と語っていた。スラムは「初代より2倍のスピードを実現した」と語っているとのこと。

さらに!フロントギアを1枚(One-by)方式にすると、スラムのエンジニアいわく「ちょっとだけリアの変速スピードが上がるよ」とのこと。何故かというと、フロントがダブルだとシステムが「リアの操作なのか、フロントの操作なのかをギリギリまで見極めようとする」のだが、フロントシングルであればレバー操作があるやいなやリアを変速するから。なるほど、電動化だとそういう恩恵もあるということか。

初代RED eTAP のブラケットはかなり大きかったが、二代目は?

前作より小さくはなったものの、電池を入れなければならなかったりしてDi2よりはやや大きくなってしまうそうな。

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※これは初代

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※こっちがRED eTAP AXS

ただ、ボタンのクリック感は機械式に寄せたそうで、心地よい操作ができるとのこと。

初代からSRAM RED eTAP AXS になってバッテリーは変わったの?

初代と同じままで変更はない。スラムによると、「大きな改良は望めなかったし、現状で十分な持ち時間があるのでそのままで行く」と判断したらしい。

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※ACアダプターもそのまま使えます

リアディレイラーにGSとSSの2種類あるの?

NO。1種類だけ。SSに相当するショートケージがあるだけ。まあ、カセットを大きくするためにただでさえ高価なリアディレイラーを交換しなくてはならない…ってなったら気が狂いそうだが(笑)。

プロは実戦で使っているの?

2018年11月の「さいたまクリテリウム」で実機は目撃されていたらしい。2019年1月にオーストラリアで開催されたUCIワールドツアー開幕戦(ツアー・ダウンアンダー)ではトレック・セガフレードらが使っていたとの情報もあった。今後、どんどん実戦投入されていくことだろう。

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※自分が使うなら、フロント40-33T、後ろは10-28Tを組み合わせたい

混戦はしないの?ハッキングの心配は?

スラムによると「いまだかつて1件もそういった事故は報告されていない」とのことなので安心してOKかと。

FORCE は電動化するの?12速化はいつ?

スラムはまだなんの情報も出していない。フォースも「新型にむけて進行中」としか言っていないそうな。2019年4月になにかしら発表がある…かもしれない。

SRAM RED eTAP AXS の日本価格は?

フロントダブル構成のフルセット(シフター、フロントディレイラー、リアディレイラー、クランク、スプロケット、チェーン、バッテリー、ブレーキ)で…

・ディスクブレーキモデル:47万4400円 ・リムブレーキモデル:45万1500円 パワーメーターをオプションでつけるなら、7万3300円のアップとなり50万円を超える。(まじか…)
※価格は税込み



いつかお金持ちになったら買ってみたいです…(;´∀`)

参考までに、こんな動画もあったので貼っておきますね。これはこれで説得力が高いし、勉強になった…!



ハーフパンツの制作状況のご報告

昨年から少しづつ進めているハーフパンツの開発状況のご報告です。試作品を2つ作ってみて試走済みです。作ってみて初めて気づいたんですが、アパレルって意外に難しいですね。

というのも、サイクリング用なので走ったときに快適でないといけないのは当然なんですが、構造によってはお尻が張ってしまったり、ポケットの位置がしっくりこなかったりするものです。

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ポケットの幅、確度、深さもそうだし、ベルトの位置、ループの太さ、太もも部分の太さ、ポケットの内張り、バックルの形状……など、検討しなくちゃいけない要素が目白押し。そしてもちろん素材も。速乾性も備えつつ、でもカジュアルなルックスと肌触りを実現するにはどれを選べばいいんだ…とけっこう試行錯誤しました。

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あと、サイクリング用のハーフパンツなのでそれに特化した機能も設けています。それが腿の両側にあるサイドポケット。輪行で試したところかなり良さげでした。電車での移動では軽食、スマホ、スイカ、列車内での固定用バンドといった小物が増えるじゃないですか。それを収納するのにサイドポケットは便利だなと感じています。

試作品の改善点を洗い出して、2度目の試作にこれから入るところです。また追ってご報告いたします。


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