こないだ、「サイクリングのモチベーションを上げてくれる10個の名言」にも書いたが、ロビン・ウィリアムズの「サイクリングとは動的瞑想(mobile meditation)である」という言葉にいたく感心した。

My favorite thing to do is ride a bicycle. I ride road bikes. And for me, it's mobile meditation. 『僕の趣味は自転車に乗ることだ。ロードバイクに乗ることは、”動的な瞑想”なのさ』

サイクリストの心情を的確に表しまくった最高にイケてるフレーズだと思う。

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ご存知ない方のために補足しておくと、ロビン・ウィリアムズ(Robin Williams, 1951年7月21日 - 2014年8月11日 63歳没)は世界的に有名なアメリカ人俳優&コメディアンだ。

アカデミー賞に4回ノミネートされ、「グッドモーニング、ベトナム」(87年)、「フィッシャー・キング」(91年)、「ミセス・ダウト」(93年)で3度のゴールデングローブ賞主演男優賞に輝き、1998年にはマット・デイモンも出演していた『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』でアカデミー助演男優賞を授与されている。(Wikipediaはこちら

で、ですね。そんな名言を残した彼のインタビューがきっとあるのではと探したら、いくつか見つかり、bicycling.comの記事がとくにすばらしかった。記事を書いたのはDAN KOEPPELさんというライターさん。

Robin Williams, Cyclist: "I'm Lucky to Have Bikes in My Life"(サイクリストのロビン・ウィリアムズ “自転車のおかげで僕の人生は本当に幸せだ”)」 (英語です)

かなりの長文なので、かいつまんでポイントを翻訳しますね。


サンフランシスコのサイクリストはゴールデンゲートブリッジを自転車で走るそうな。そこには、USポスタルのチームジャージを身にまとった、やや太めのおじさんを毎週日曜に見かけることができる。その姿は、お世辞にもスリムとは言えず、サイクリストよりは「レスリング選手」と呼ぶほうがふさわしい。

そのバイクは相当に高価。あしらっているパーツもかなりの上物。「こんな豪華なバイクに乗っているなんて、すごいな」と他のサイクリストは近づいて、もっと近くで見ようとするのだが、そのレスラー風の男はかなりパワーがあり、坂をグイグイと登る。

「え?(デブなのに速い!)なにくそっ」と食らいつくと、「あれ?この人、どこかで見たことがある人だ」と気づく。

「やあ、こんにちは」と、そのレスラー風の男が声をかけてくる。そしてはっきりとわかる。「あのロビン・ウィリアムズだ!」と。

かのセレブは、一般人といっしょに混じってサイクリングを楽しんでいるようだ。

プロ選手らは走りながらおしっこをできるんだってね。そのスキルに最大の敬意を表したい。ただ、近づきたくはないけどね。

"They can pee while riding. I take my hat off to them—to them, but not near them."

「セレブが自転車かよ。ケッ」って思うかもしれない。たとえばマドンナはキャノンデールを持っているし、シルベスタースタローンはデローザのオーナーだ。金に糸目をつけずに高級パーツを寄せ集めて組まれたバイクはもちろんすごいが、彼らは…ぶっちゃけ、正真正銘のサイクリストではない。しかし、ロビン・ウィリアムズは本物のサイクリストだ。

地球上に、彼ほど自転車を楽しんでいる人間はいないのではないかと思わされる。

ウィリアムズは自転車を愛している。一般人は手が届かない最高級のバイクを多数所有し、巨大なガレージに保管している。欲しいものはなんでも手に入るだけでなく、プライベートジェットを飛ばして行きたい場所にひとっ飛びできる。有名なプロ選手とも交流できる(ランス・アームストロングと仲が良いとのこと)し、共にツーリングも楽しめる身分だ。ツールドフランスなどのレースに訪れれば、VIP級のもてなしを受ける。

アームストロングと知り合う前は、グレッグ・レモンとも親交があったそうで、ハリウッドのセレブとは、こうも格が違うのかと驚かされる。

1999年にランス・アームストロングが始めてツールドフランスで優勝(のちにドーピング発覚にて剥奪)したときから、ロビン・ウィリアムズは現地で観戦をし、主だったステージを生で観ることにしているそうで、彼はこう言った。

テレビで観ているだけだと、いったい選手らがどれくらいのスピードで走っているのか、どんな急坂を駆け上がっているのかがわからない。生で観戦するのは本当にすばらしい。

2002年のツールドフランスで、第14ステージ終了後の休息日にウィリアムズはアームストロングと一緒に走ったそうな。

ウィリアムズのスタンドアップコメディ(観客の前に立って喋るアメリカではポピュラーなスタイル)は約2時間ぶっ通しで続く。「自転車に乗ることでその持久力が養われている」とコメントもしているが、実は彼には暗い過去がある。1980年代、自転車に夢中になる前にドラッグの常習をしていたのだ。

これはよく知られた事実だが、70年代~80年代初頭にかけて、コカイン中毒やアルコール依存症に苦しんだ時期がある。(親友の俳優ジョン・ベルーシが薬物中毒で他界したり、長男が誕生したことをキッカケに克服)


さて、ゲスい話だが、そんな大成功者である彼の収入を試算してみよう。フォーブスマガジンによると、この10年間、平均して55ミリオンドル(約55億円)の年収があった。
※年収である。10年のトータル収入ではない! 

仮にウィリアムズが1年で10台のバイクを買ったとしよう。1台が50万円だったとして、パーツもムッチャクチャ高価なものをあしらったとして、年間1,000万円を投じたとする。「自転車に1千万円だと?セレブとはいえ、無駄遣いにも程がある!」と思うだろうか。

では、この事実と照らし合わせてほしい。とある調査によれば、自転車愛好家の平均年収は62,000ドル(692万円)だ。ウィリアムズの収入に対するバイクへの投資額は、……一般サイクリストが年間にタイヤを2本買うに過ぎない額でしかない。タイヤ2本!1,000万円が一般人のタイヤ2本相当!!!いかに我々一般サイクリストが自転車にお金をかけているかがわかるのではなかろうか。

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さて、サンフランシスコの海に面した、ゴールデンゲートブリッジにほど近い崖の縁に建つ彼の自宅には、巨大なガレージがあり、中には50台以上のバイクが保管されている。

自転車屋のオーナーでさえ、「聞いたことはあったけど、現物を見たことはなかった…」と語るような珍しいパーツも所有しており、もはやわけがわからない。

チタンとカーボンでできたSerotta Ottrottは、フレーム単体で5千ドル(約60万円)。

美しいバイクを見たとき、これを作った人は多大なる努力をしたに違いないって思うんだ。機能的であるだけでなく、美しさを両立するクラフトマンシップのすごさ。これは演技にも通じるものがある。

ロビン・ウィリアムズが熱狂的なコレクターであることは間違いないが、彼は同時に献身的なユーザーでもある。

また、彼はその知名度ゆえさまざまな企業からギフトと称して無料で高価な品々が送られてくるそうだが、ウィリアムズはそれを好ましく思っていない(立場を利用したくない)そうで、たいていはチャリティに出してしまうそうな。

こんな(太い)足があるなら、やることは2つしかない。サイクリングか、ゴーゴーダンサーだ。

"With thighs like these, you've got two choices- cycling, or go-go dancer."

彼くらいの有名人ともなると殺人的なスケジュールをこなさねばならず、サイクリングの時間を確保するだけでもひと苦労。移動場所にサイクルマシンを持って行ったり、自宅には専属のパーソナルトレーナーもいるそうで、指示に従ってトレーニングしているそうな。

ちなみにロビン・ウィリアムズはスプリンタータイプで、登りは苦手。体格はレスラーのような骨太&筋肉質なのでさもありなん。ちなみに、かなり毛深いほうだが、「足の毛は剃らない」と決めているとのこと。


彼がサンフランシスコの自宅にいるとき、家の前に旗が掲げられていると「ゴールデンゲートブリッジに、朝に走りに行く」というサインだそうな(噂レベルだが)。

また、大集団で走るよりは景色を愛でながら走るのが好み。「ソノマカウンティの山々、葡萄畑を見ながら走るのが好きなんだ」と話している。


彼は総額で1億円以上を自転車につぎ込んでおり、そのことを「贅沢が過ぎる」とちょっぴり恥じてもいるそうな。ただ、彼は他のサイクリストと道で出会ったとき、その会話はサイクリスト同士の楽しいおしゃべりとなる。「スター VS 観客」のような壁はない。


記事はこの言葉で締めくくられている。

こんなふうに好きな自転車に関われて、自分は本当に幸運だよ。

ロビン・ウィリアムズの豪遊っぷりを、「あまりに節操がない」と思うだろうか?そう感じてもおかしくない。しかし、我々がもし彼ほどの富を得たとして…同じように行動しないと言い切れるだろうか?

自分は確実に理性のタガが外れ、欲望に溺れ、自堕落な生活をしてしまう自信があります(笑)。


オマケ

以下、ロビン・ウィリアムズのバイクコレクションの一例

Seven Alta

Araya Steel Road Bike
スギノとサンツアーで組んでいるとのこと。日本のバイクを所有しているなんて、ちょっと嬉しい

Custon Oversized BMX Bike
映画「ジャック」で使用された26インチのスチール製BMX。

Santana Noventa Tandem

Serotta Legend TI

Kestrel Talon SL
デュラエースで組んである

Kestrel 500 SCI
モノコックのカーボン製フレーム。Mavic のZap 電動シフター(どういうものなんだろう?わからない…)で組まれてある。かなり珍しい一品。

Soma Rush Singlespeed
タイムトライアルバイク。

Merlin Newsboy

Casati Sphera

Ibis Bowti

Serotta Ottrott
チタンとカーボンのカスタムフレーム。


そんな雲の上の世界に住むセレブだが、ロビン・ウィリアムズはうつ、不安症、そして初期段階のパーキンソン病で闘病生活を送っており、2014年8月に自殺してしまう…。 大好きな俳優だっただけに、とても残念だった。 

>> ロビン・ウィリアムズさん、死因が自殺であると正式に発表される



以上、Bicycling.comの「サイクリストのロビン・ウィリアムズ “自転車のおかげで僕の人生は本当に幸せだ”」 を翻訳してお届けしました。



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