cyclingtips にて、色んな意味で話題のディスクブレーキについての記事を読んだ。

DISC BRAKE TRIAL STALLS UNDER CONTINUED RIDER OBJECTIONS


エリートクラスのレースでのディスクブレーキは、2016年にいったん開放されたものの、今年のパリルーベでの事故をキッカケに再び禁止された。

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アマチュアレベルのグランフォンドイベント等での使用は世界的に認められているものの、エリートレベル&UCI管轄のトッププロのレースではディスクブレーキは使えない。 モビスターのベントソがパリルーベで(他の選手のディスクブレーキによって)負った足の怪我を大々的に公表したことで、UCIは即座に動き、ディスクブレーキの使用を全面的に禁じる判断を下したのはご存知の通り。

選手の安全面に配慮したわけで、その姿勢は賞賛に値する。ただ、ベントソの言葉が真実かどうかの検証をすることなく決定が下されたことで、競技という意味でも、自転車業界にも大きな影響をおよぼした。

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その後、自転車パーツ企業のロビー活動グループが事故を法医学的に検証した結果、ベントソのケガは「ディスクブレーキのローターではなく、チェーンリングによるもの」と結論づけた。

ベントソは、どの選手のローターでケガを負ったかのコメントはしていないし、所属チームも彼のコメント以降はとくに声明を発表していない。 いずれにせよ、これでディスクブレーキが再びトッププロのレースで使用を許可されるまでには相当な時間がかかることが予想されるし、選手側からの抵抗感も薄れることはないだろう。

ディスクブレーキを地域レベルのレースで使うことを許可するかどうかについては意見がわかれており、議論が続いている。しかし、UCIが明確に禁止と打ち出している以上、それに習う動きが続くと予想される。

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なお、アメリカサイクリング協会のテクニカルディレクターのチャック・ホッジ氏は、「米国内でのディスクブレーキ使用を許可する」と明言している。「これまでもディスクブレーキは認めてきたし、我々のレギュレーション上では許可しないことを禁じることはない、というスタンスだ」とのこと。

「UCIと話しあった結果、UCIは国家単位でのレースイベントにおいてローカルルールを尊重してくれているし、現状もUCIのスタンスと我々への理解は変わっていないという認識だ」

「ひとつ重要なことなので言っておかねばならないが、UCIはディスクブレーキの使用を公式に許可するというレギュレーションは作ってはいない、ということ。UCIは機材のテスト期間を設けただけだ。つまり、今回UCIはテスト期間を終了させただけということ」とホッジ氏は語っている。

UCIは公式にアマチュアのサイクルイベント(グランフォンド等)でのディスクブレーキ使用を許可した。しかし、国単位でローカルルールを設けることを認めるかどうかは白黒ついていない。
※ちなみにマウンテンバイク、トレイルや集団で走るイベントでのディスクブレーキ使用はもともと認められていた。

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器材メーカーは「今年のツール・ド・フランスまでに、ディスクブレーキ使用の許可が再びおりる可能性はある」と踏んでいたようだが、どうやらその希望の灯火は消えかかっている。

難しいのは、機材会社やバイクメーカーの独断で新しい技術を選手に押し付けることはできないということ。それに、選手自身が望まない機材を与えることは、メーカーサイドとしても本意ではない。いずれにせよ、UCIの決定が待たれるところである。


ここで、元プロサイクリストのカデル・エヴァンスがCyclingTipsの取材に対して語ったコメントを取り上げよう。

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画像引用元はこちら(産経サイクリスト)


カデル・エヴァンスはオーストラリアのプロサイクリストで、2011年のツール・ド・フランス総合優勝者。オーストラリア人としては初の快挙を成し遂げた偉大な選手。彼は20年のプロキャリアの中で、7年間のマウンテンバイク選手だったユニークな過去を持つ。

マウンテンバイク選手だったころ、カデル・エヴァンスは「下りの名手」として名を馳せていた。その経験から推測するに、ディスクブレーキがもたらす危険性についてはよーく認識しているはずだ。

以下、カデル・エヴァンスのコメント。
自転車以外の生活にも当てはまることだが……人間は変化を嫌い、現状維持を望むものだ。変化を受け入れるには、未知の世界に踏み出す不安が伴うからね。僕がマウンテンバイクの選手だった90年代にディスクブレーキが登場したしたときは、選手からの抵抗感があった。
抵抗感の理由は、機材がちゃんと動作するかといった信頼性に関することだった。しかし、メーカーの努力によってその抵抗感は過去のものになった。今、僕はディスクブレーキの無いマウンテンバイクに乗ろうとは思わない。ディスクブレーキはマウンテンバイク界に革命をもたらした、素晴らしい技術だ。

カデル・エヴァンスにとって、ディスクブレーキの良さは操作性の向上と、ブレーキパワーのコントロール性。(たびたに取り沙汰される)強力すぎるブレーキングパワーは不安要素ではないとのこと。
※タイヤのトラクションがディスクブレーキの制動力についていけないので、実際には問題ないらしい

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さらにこんなコメントも。
僕の経験で話すと、ディスクブレーキはファンタスティックなブレーキシステムだ。ブレーキレバーをいつ引いても、制動力が変化しないのが良い。ブレーキに信頼が置けるおかげで、コーナー進入時に思い切り突っ込んでいるし、スピードを落とすのもギリギリまで待てる。よって、コーナー後にもハイスピードにすぐ戻ることができる。ディスクブレーキというテクノロジーに関して、僕は反対意見を持っていない。
エヴァンスがむしろ気にしてるのは、サポートチームのロジスティクスが複雑化することについて。パンクや故障時のホイール交換に手間取るとかいったことだ。

レース時において、ホイール交換、ニュートラルカーのスペアの機材、チームカーのスペース問題は必ずつきまとう。ツールのようなグランツールにおいて選手は9人。そしてチームカーが積めるバイクの限界量が9台分だ。それ以上は積み込めない。

もしもエースに連続でパンクなどのトラブルが起きたとき、問題が発生する。全員分のスペアがない状態に陥る危険性があることは、選手にとって不安材料だ。選手は年度末に結果によってのみ評価される。「スペアがなかったから走れませんでした(負けました)」という言い訳はできない選手にとって、無理もない話だろう。
とはいえ、現役選手の中には、ローターによる裂傷や火傷を心配する者もいるのは事実。エヴァンス自身は気にしていないようだ。 しかし…

元プロ、そして現役サイクリストとして、僕だってケガはしたくないさ。そして事故の原因になる可能性は排除したい。ただ、個人的にはレースでの安全面はむしろ強化されると思う。

とくに雨天時の走行においては。ディスクブレーキによって、雨天時のブレーキ性能は変化しない。その恩恵のほうが、ローターによるケガのリスクよりもはるかに大きいと思う。裂傷のケガが起きる原因として、チェーンリングかブレーキレバーによるもののほうが大きい。
エヴァンスによれば、「いずれディスクブレーキはプロレースの世界にも浸透し、メリットを享受できる世界がやってくるだろう」とのこと。

あと2年もして選手もメカニックもディスクブレーキの扱いに慣れた頃には、「どうしてこんなにも素晴らしい性能のブレーキの導入をためらって、議論を続けていたんだろう?」って思うはずさ。
マウンテンバイク出身のカデル・エヴァンスなので、ある程度肯定派だとは予想したが、その予想を越えていた。

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