英国の女性向け自転車メディア「」Total Women's Cycling」を読んでいたら、「へー、日本だけかと思っていたけど、海外でも似たようなことが起きるんだ」と思わされた記事(&動画)に出会った。

元記事はこちら >> Could You be a Breeze Ride Leader?

それは、女性サイクリストは男性サイクリストに迫害されていて、それが理由で自転車に乗らない(乗らなくなる)女性が少なくない、ということ。

「もっと女性にも自転車の楽しさを知ってもらおう」と考えた英国の自転車協会は「Breeze」というプログラムを運営していて、自転車の楽しさを女性に伝えて乗る機会を増やすことを目的としている。

英国の女性サイクリストたちがどんな迫害(と言ったらおおげさだが)を受けているのか、Breezeがどんな活動を行なっているのかを翻訳しつつご紹介しようと思う。


Could You be a Breeze Ride Leader? British Cycling are looking for more leaders, and have explained their payment structure to us



Breezeは女性ボランティアによって行われており、活動領域は英国全域。各地域で「Breeze チャンピオン」と呼ばれるリーダーがいて、地元のイベントに女性同士で出場したり、いっしょに走るホストを努めている。

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※初めてのサイクリングイベントで嫌な思いをしたことがキッカケに

女性サイクリストの増加に合わせ、ホスト役となる「Breeze チャンピオン」のボランティアを増やそうと試みている。 この女性は、もともと膝が悪く激しい運動ができなかったところ、「自転車なら膝にもやさしいし」と始めることになった。

ためしに夫婦で集団でのライドに参加してみたら、すごく不快な体験をしたそうだ。

夫や男性陣は、体力がない女性のことなんかほったらかしにして、勝手にすっ飛んでいってしまったわ。しかも他の参加者から「なんで遅い人たちを待たなくっちゃいけないの?」って言われたの。それがすごく悲しくって、帰宅してから思わず泣いてしまったわ。でもこれって、サイクリングのあるべき姿じゃないって思ったの。

そこで、この女性は「Breeze チャンピオン」になり、ボランティアとして「サイクリングに関われていない女性ら」を率いてつれ出す役目を買って出た。

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サイクリングをしたいと思っても、一歩を踏み出せない女性は多いの。メカのこともわからないし、知識もないし、どこを走ればいいかの土地勘もない。さらには、一緒に走れる仲間がいないことが問題なの。

この辺、日本と状況はさほど違わないように感じた。男性には大人気のスポーツかも知れないが、自転車にハマる女性数は圧倒的に低いのだろう。

のんびり、速さを競うことなく、参加者たちが楽しいって思えるペースで走るようにしているわ。女性にとって、サイクリングは競技ではなく、ソーシャルなレクリエーションなのよ。

ボランティアになる条件は緩く、「自信を持って自転車に乗れるスキルがあり、自分の持つ能力でもって他者を助けることに熱意がある」でOK。とはいえ、いちおう認定制度も用意されており、1日実地研修を行うことでライドを計画したり、グループを率いることができる。 英国自転車協会のマネジャーであるベッキーさんはこう語る。

「Breeze チャンピオン」こそが我々のプログラムの鍵となる存在です。情熱あふれる彼女たちの厚意でこのプログラムは成り立っており、彼女らの行動は賞賛に値します。うまく運営できているのも、人あってこそです。

「Breeze チャンピオン」に求められるのは、おおよそ年間12回のライドを 主催して、初心者女性ライダーをリードすること。月イチペースである。その対価は「Breeze キット」を受け取る。メンバーシップの一種であり、金銭的なものではない。さらに、「Breeze チャンピオン」は応急処置ができる免許取得にも挑戦できるそうだ。

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※参加者は初心者の女性ばかり

「Breeze チャンピオン」への報酬構造

「Breeze チャンピオン」には報酬や対価が支払われないことで、過去にはスッタモンダがあったそうな。

英国サイクリング協会の他部門の関係者にはお金が支払われ、「Breeze チャンピオン」は無報酬は不公平ではないかというわけだ。 (詳細は記されていなかったものの)今では各レベルにおいて、どの段階の関係者が何を受け取るかの構造はしっかりと整備されているそうだ。キレイ事や情熱だけでは人を動かして物事を進めていくことはできないのは、どこの国でも同じのようだ。

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※すっかりリーダーの貫禄がついている

Ride Social(ライド・ソーシャル)とは

3年前に立ち上がったプログラム。同じ程度のレベルにある、知らない女性サイクリスト同士がつながって一緒に走るというものだ。参加者らは自分のレベルに合っている人たちが集まるという安心感がある。「Breeze チャンピオン」とは異なるボランティアリーダーが活動をリードする。

Sky Ride Local(スカイ・ライド・ローカル)とは

こちらはまた別のプログラムで、7年前から行われている。その名から連想できるとおり、スカイ(チームスカイではなく、母体の方)が資金サポートをしてくれている。こちらはスポンサーもつくとあって、活動をリードするリーダーには契約を交わすことが求められるし、いくつかのルールと制約に拘束はされる。

また、参加者をまとめるスキル等も高いレベルで要求される。 リーダーらは英国サイクリング協会に雇用され、協会の定める日時と場所で、通常よりも大きな集団を率いることを任される。地元から遠く離た場所まで参加者を連れてゆき、かつ安全に戻ってこなくてはならないので、責任は重大。(いくらかは分からないが)それに見合った報酬が支払われるそうだ。 実に面白い取り組みだと思う。

参加者の言葉も引用しておこう。

昔はカウチポテト族だったのが、Breeze プログラムのおかげで自転車愛好家になってしまったわ!
一人で自転車に乗って出かけようだなんて、きっと思わなかったわ。仲間がいるから、外に出ようって思ったの


彼女らの言葉はすごく既視感がある。なぜなら、オクサマもかつてまったく同じことを言っていたからだ。一人ででかけたら帰ってこれないレベルで方向音痴だし、どの道がサイクリングに適しているかもしらないし、トラブルがあっても一人で解決できるスキルもない。

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※いかにもイギリスらしい、華やかな井戸端会議風景。こんなサイクリングも楽しそう


いまだにオクサマはソロで走ることができず、自転車に乗るときは必ず自分が必要。あるいは、自分の仲間のポタリングにオクサマを連れて行く。集団で走れることが、彼女にとっては大きな安心につながっている。そう感じる女性は国境を越えてきっと多いのだろう。


自分も、過去にこんな記事を書いた。

サイクリングで、車道を怖がる女性を徐々に慣れさせる方法
妻をサイクリングに連れ出したくなる理由

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※今では、子どもたちにレクチャーもしているそうな

たとえばだけど、自分はダイビングは人生で1回もしたことがない。酸素ボンベを背負って、沖縄の海を潜って熱帯魚を見ることができたら、さぞかし楽しいとは思う。「機会があればやってみたいな」くらいの感覚はある。 しかし、「自分ひとりでダイビングショップに行き、イチから知識やスキルを習得して海に出かけるか?」と問われたらたぶんしない。

なぜなら、楽しめるまでにかかる距離が遠すぎるから。

女性がサイクリングに感じる壁は、男性にとってのダイビングとかパラグライダーなんじゃないだろうか。 この女性、いまでは子どもたちに自転車スキルを教える講師まで務めている。単に自転車に乗るのが好きというレベルを超え、自転車文化を創出したいというライフワークにまでなっているようだ。

動画内でこの女性が言っていた、印象的な言葉で締めくくろう。

家庭内で、お母さんが自転車に乗ると、子供も興味をもつようになるのよ。世代を越えてサイクリング文化は守っていくためにも、女性にもっとサイクリングを好きになってほしいわ。