ロードバイク愛好家の方々のブログを100個以上RSSリーダーに登録して毎日読むのが日課だが、それとは別にずっと愛読しているブログがある。



和田一郎さんの「ICHIROYAのブログ」だ。



開始されて3年半ほどのブログなのだが、わりと早い段階でその存在を知り、その質の高さと面白さに驚いた。「これはRSSリーダーに登録して、漏らさずチェックせねば!」と、それ以来欠かさず読ませてもらっている。



ICHIROYAのブログ」を読んで強く感じるのは、「人のぬくもり」だ。肩の力を抜ける安心感と言ってもいい。何かを激しく批判したり、攻撃することで存在感を見せる人気ブログは山ほどある。ただ、「なにもそこまでボロクソに非難しなくても…」と感じることもあるのだ。



心安らかに読めて、かつ読み応えのあるブログは少ない。和田さんはそういうブロガーさんである。



その和田さんが書籍を出版し、ブログ上で「献本&レビューを募集」されていたので、自分も名乗りを上げてみた。そして届いたのが『僕が四十二歳で脱サラして、妻と始めた小さな起業の物語』である。


僕が四十二歳で脱サラして、妻と始めた小さな起業の物語





和田さんは勤続18年の百貨店を42歳で退職し、七転八倒しながら事業をご夫婦で立ち上げ、がむしゃらに働いて軌道に乗せ、3年前に始めたブログで一躍有名になり、商業出版も果たしている方だ。



衝撃的だったのは、退職直前に練っていた起業プランにダメ出しを受けまくり、退職したタイミングではそのプランを捨てていたこと。



当時、和田さんは奥さん、高校生と中学生のお子さんとの4人暮らし。お子さん達の進学を控え、ローンを抱え、人生で最も出費の多い時期だ。そんなタイミングで退職&無職……。



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「ヒリヒリするような焦燥感と戦っていた」とは和田さんの弁だが、このストレスは極めて過酷だったろう。語られているエピソードはどれもリアルで生々しい。



では悲惨な物語かというとまったくそうではなく、夫婦で二人三脚で奮闘し、幾多の困難を切り抜けている。



書籍にもブログにも共通することだが、和田さんはどんな状況でも、“ポジティブで楽観的なスタンス”の持ち主だ。直にお会いしたことはなく、ブログでの接点しかないけれど、読み進めながら、「やばいよやばいよ、どうする和田さん?」とか、「ちょっとちょっと、このピンチはどう脱するつもりなの!?」と、応援したい気持ちにさせられるのだ。



会社を辞める前 >> 逡巡 >> 退職 >> 想定していたビジネスアイデアがボツになる >> 無職の状態で数ヶ月過ごす >> その間、アイデアを出しては却下の無為な日々が続く >> 無数の試行錯誤と数々の出会いの末、海外向けにアンティーク・リサイクル着物を販売することを思い立つ >> 立ち上げ当初はeBayで販売しつつ日銭を稼ぐ >> 自社サイトを立ち上げる >> 強力なライバルが現れる >> 事業規模の拡大に伴い、人の問題が起きる >> 死ぬほど忙しくなり、夫婦喧嘩が絶えない >> ようやく事業が軌道に乗る……までの14年間を振り返っている。



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事実を時系列に並べたのではなく、その時々の心の揺れ、葛藤と悩み、挫折や試行錯誤、その後の行動が事細かに描かれている。「すごく面白いんだけど、ここまで書いていいのかな…」とこちらが心配したほどだ。奥様がたびたび作品の中に登場するのだが、「この内容で了承してくれるなんて、心の広い方だな…」と驚いた。



P171~173には「毎週1回、メールニュースを書く」というくだりがある。海外のお客さんに、慣れない英語を使って文章を書いていたそうで、10年間で600通(!)書いたそうだ。



10年間、毎週書き続けるのはカンタンなことではない。ここを読んだとき、「あぁ、和田さんのブロガーとしての素養がこんな場所でも発揮されたんだな」と想像してしまった。



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和田さんと自分とでは活動規模も取り組みの覚悟も次元が違うけど、「何事もやってみなければ、わからない」し、周囲に助けを求めたり、誘いの言葉をかけてみると「あっけなく、突破口が開く」ことがあるという点は100%同意である。



まさか自分に書籍を書くチャンスが訪れるとは夢にも思わなかった。それは和田さんもきっと同じだと思う。徒手空拳でその日その日を必死で生きていたら、ある日思いもよらない人(出版社)から、「その経験には価値がある」と指摘され、「え、そうなの?」ってキョトンとするかんじ。



いわゆる有名企業の経営者が書く(もしくはゴーストがまとめた)書籍は、どうにもきな臭かったり、上から目線の説教臭さが鼻について苦手なのだが、『僕が四十二歳で脱サラして、妻と始めた小さな起業の物語』はそれとは無縁。




なにしろ、帯には

孫正義でもなくホリエモンでもない、市井に生きる中年脱サラリーマンの泣き笑い奮闘記

と書いてある。



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※今回は2冊めの著書。ちなみにプロフィールにもある1冊めは、『僕が18年勤めた会社を辞めた時、後悔した12のこと』である。



飾りっけなし、見栄なし、直球ストレートで小規模な起業ってこんなかんじなんだと知るには最適の一冊だと思う。いつか自分のビジネス(という名の自分だけの居場所)を作りたいと思っている方に強くオススメしたい。



和田さん、献本いただき、ありがとうございました。


m(_ _)m