Recon JETを使って、未来スポーツ体験を考えよう!」というイベントの取材に行ってきた。



Recon JETとは、サイクリングとランニングに特化してつくられたハイテクアイウェア。最近、ウェアラブルデバイス市場が加熱しているが、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を装着したスポーツ体験は今後どう進化するのかをトークセッションで聞いたり、アイデアソンをしてアイデアを生もうというイベントだ。




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開発元は、カナダ(バンクーバー)を拠点とするRecon Instruments社。社員数は70名ほど。経営者のダンさんはカナダ人ではなくてオランダ人。しかもこのダンさん、元水泳選手で本格的に競技に取り組んでいたアスリートである。



Recon JETを発案したのは選手時代の不満がきっかけ。水泳は個人競技でとても孤独な競技らしい。自分の泳ぎ方や水中でのデータを可視化したいって願いがあったのだが、現役時代はそれを満たす方法がなかった。



Recon Instruments社を2008年に設立し、ゴーグルタイプのHMDを作ったのが2010年。ちょうど冬季のバンクーバーオリンピックに合わせて開発されたわけだ。で、満を持してRecon JETが今年リリースされた。



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なお、2015年にインテルに買収され、傘下に入っている。

インテル、スマートグラスのReconを買収。ウェアラブル進出を加速(エンガジェット)




今回のイベントは、エンジニア向けのアイデアソンだ。



Recon JETはサイクリングとランニング向けに開発されているが、ヨットやセイリング、ゴルフ、ハンティング等のシーンでも活用されつつある。





※この動画のように、「手術」や「レスキュー」で使うシーンも考えられる





さらに、Recon JETをスポーツの世界だけでなく、医療や介護、行政などに使ってもらうシーンや方法をいろいろ考えてみよう!という掛け声で集まったのだ。





まずはRECON JETがどんなアイウェアかを紹介しよう。



Recon Instruments社は「スマートアイウェア」と呼んでいる。通常のスポーツ用アイウェアに、モジュール型のユニットが取り付けられている。右頬に伸びるパーツは、ディスプレイ、カメラ、操作系のパーツで、左頬にくるパーツはバッテリー。



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サングラス部分の右下(つまり右目の下)に小さなモニターが現れ、そこにさまざまな情報が表示されるので、走行中にいちいちスマホを取り出したり、腕のウェアラブル機器に視線を送らずに済む。よって、競技により集中できるというわけだ。




ルックスは、ドラゴンボールに登場する『スカウター』を想像するのが一番近い。



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バッテリーは下の方にある。駆動時間は最大4時間。ちょっと短い気もするが、今後の技術革新に期待。





おおよその使い方がわかる動画はこちら。


※べっぴんさんが使うと、さらにカッコよさが増す(笑)。


公式サイトによれば、「ディスプレイは約2メートル先に30インチサイズの画面があるような見え方をする」とのこと。サングラスのレンズに情報が表示されるのではなく、レンズの奥に光るモニターがあってそれを覗き込むかんじ。たしかに、ちょっと距離感を感じる。




表示は明るく、夜間であっても視認に問題はない(と思う)。




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驚いたのが、Glance Detection(視線検知)テクノロジーという特許をもっていること。右目をディスプレイに向けるだけで起動し、目を離すと再びオフになる仕組みなのだ。注意力が散漫になるのを防ぎつつ、電力消費を抑えてくれる。



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製品紹介ページはこちら(日本語)





右頬側にはスマートフォンクラスのプロセッサーが搭載されている。GPS、加速度計、ジャイロスコープ、高度計、気圧計、磁力計を内蔵しており、ANT+、Bluetooth Smart(Bluetooth 4.0)、Wi-Fi接続を備えているのだ。スマートフォンとペアリングして発信者番号、SMSメッセージの受け取りや、ソーシャルメディアへのアクセスまでできるんだけど、多機能すぎてこの時点ですべての機能を使いこなせる自信がない(笑)。





まるでロボコップのような若干メカメカしいルックスが、ガンダム世代のオレサマの琴線をグイグイ刺激してくるが、実際に顔にかけてみると、こんな感じ。





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※一緒にアイデアソンに参加したNさん。




カッコイイ! SF映画のような未来感を感じさせてくれるね。




ただ、普段着でRecon JETをして山手線に乗れるか? というと意見が分かれそうな気はする。通勤でRecon JETはさすがにちょっと……とは思うけど、ランニングとサイクリングであればまったく躊躇せず使う。むしろ、Recon JETとスポーツウェアはマッチして似合うと思うね。



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一緒に参加したHさん。イケメン男子がかけるとじつにクールではないか。





ここまで読んで、ロードバイクファンはいくつか疑問を抱くはずだ。日本総代理店の株式会社美貴本の木村さん(マルチメディア商品企画グループ)にその辺の疑問をぶつけてみた。




Recon JETの重さはどうなの? バイクを走らせているとき、ずり落ちたりしない?

もちろん、従来のアイウェアよりは重いのは間違いない。重量配分を計算された設計になっているので、前後左右で偏らないようになっているとのこと。中心となるノーズパッドにやじろべえのように指を置いてみると、なるほどバランスがよい。



バイクで試すことはできなかったが、装着してその場で何度もジャンプしてもまったくズレることはなかった。ノーズパッドやツルの部分に自由度があり、自分の頭の形状にフィットさせることが可能なのも理由の1つだ。



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※左右できっちり対称の重量配分。まるでBMWかロードスターのよう。




Recon JETで視界はちゃんと確保されるの?

視界の感じ方は個人によるのでなんとも言えないが、正面を見る限りではほぼ問題なし。ジョギングで使うならなんの不安もないね。



ただ、ロードバイクでそれなりのスピードで走っているときはどうかが気にはなった。右の頬骨あたりにディスプレイが来るので、右下の視界がどうしても犠牲になるのよね。



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ここからは想像で書くけど、右下視界が犠牲になることの何が問題かというと、首を振って後方確認するとき。軽自動車やオートバイのような比較的小さな車両の発見が、「コンマ何秒かで遅れてしまわないかな?」という不安はある。



機会があれば、ぜひ公道で試してみたいものだ。




右側通行の海外ならば、必要なのは逆となる左下の視界なので、大丈夫。なぜなら、左頬骨にくるバッテリーはまったく視界のジャマにならないから。左側通行の日本ならではの特種な問題といえる。



プロアスリートは実際にRecon JETを使っているの?

IRONMANチャンピオンのAndrew Starykowicz選手とパートナーシップを結んでいるとのこと。プロがRECON JETを装着すると超カッコいいんですけど……。



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画像引用元はこちら


2004年に大学を卒業した後は、2年間はエンジニアとして働き、2006年からプロのトライアスリートに転向したらしい。アンドリュー選手の公式サイトもあったので、リンクしとく。



アンドリュー選手がRecon JETを使ってコメントしている動画も貼っておくね。







道路交通法的にRecon JETは問題ないの?

このご時世、自転車ルールに敏感な方も多いと思うので補足すると、道交法的には問題ないらしい。というのも、ガーミンやサイコンと同じ扱いになるから。あれって別に問題ないでしょ?それと同じということね。



ただ、マニュアルには「走行中にディスプレイをジッ~と見つめないように」との注意書きはあるそうだ。ということで、日本国内での利用は大丈夫。




気になる価格は 「88,800円 (税込 95,904 円)」。正直、お安くはない。スマートフォン並みのガジェット&アイウェアなので、この価格も致し方なしなのだと思うが、5万円を切る位になってくれると「試してみよう!」ってローディが急増しそうな気がする。



Wi-FiやBluetooth、ソーシャルシェア機能あたりを省略可した、廉価バージョンがあるといいな。個人的にはスタンドアローンなマシンとして使ってみたい。



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まとめ

ヘッドマウントディスプレイなガジェットはまだ日本では普及しているとは言えないし、マニアな人だけのキワモノテクノロジーと見る人もいるとは思う。



Recon JETを直に触って装着してみて、正直、「思っていたよりもはるかにカッコいいし、実用性もある。使ってみたら、どんな新たなロードバイクライフが待っているんだろう!?」とワクワクした。



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※熱くアイデアを発表する参加者のみなさん




ちなみに、オクサマに見せたら「は、派手だね…」となっていた。女性よりは男性に刺さる(&似合う)デザインだとは思う。実際、ワークショップ参加者も男性31人、女性1人くらいの割合だった。



ロードバイクのヘルメットと組み合わせると、ロボコップみたいで男の子心をくすぐられること間違いなし。これでサイクリングロードを走ったら、注目を浴びると思うよ。




5年近くつかったシマノのアイウェアをそろそろ交換したいのだが……先立つモノがなくて地団駄踏んでいる(笑)。



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※自分が出したアイデア。モニターディスプレイに後方視界を映すことができれば、安全性が飛躍的の向上すると思う。44歳のオッサンの描いた絵とは思えない稚拙さには目をつぶってほしい(笑)。