愛車が盗まれてしまう…もっとも起きて欲しくない悪夢である。

賢明なサイクリストの皆様は、駐輪の際には厳重かつ何重にもロックをかけて愛車を守っていると思うが、物事に絶対は無い。万全を尽くしても被害に遭う可能性は残る。

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/ ABUSを愛用 \

自分は幸いにして被害経験はないものの、周囲で「やられた…」と耳にすることはあって、その度に心が痛む。

盗まれないためには自衛するしかない。駐輪場所に気をつけるとか、複数ロックを持ち歩くとか、長時間放置しないとか、目の届く範囲に停めるとか、いろんな工夫はしているつもり。

ただ、それだけでは不十分かもしれないので、YouTubeで「リアルな盗難手口」とか「犯行が行われた現場」を撮影した動画を探してみた。

そしたら、わんさか見つかるじゃないですか…。


「こんなふうに盗難するのか…」とか「ほんの数分であっさり盗めるのね…」と実際の手口を目に焼き付けることで、気持ちを引き締め、愛車の保護に役立てていただきたい。

あと、ユニークな社会実験動画もあったので、あわせてご紹介してみます。

ロンドン警察の自転車盗難おとり捜査

Police Sting - London Bicycle Thief 1



イギリスの警察が仕掛けたおとり捜査。おとり捜査とはターゲットに犯罪の実行を働きかけ、犯罪が実行されるのを待って、対象者を検挙する捜査手法。地下鉄駅の前にエサとなる自転車をしかけ、窃盗犯が食いつくのを待って逮捕する、という寸法だ。

ちなみに日本は海外ほどおとり捜査には積極的ではない。犯罪意思のない者に対して、働きかけによって犯意を生じさせ、犯行に及んだところを検挙するのを「犯意を誘発している(犯意誘発型)」という考え方もある。

国家(捜査機関)の干渉がなければ、犯罪を行わなかったであろう者が犯罪を行うのだから、「国家が犯罪を創り出した」という理屈。実体的訴訟要件が欠け、免訴すべきということらしい。

それにしても、海外のおとり捜査は仕込みの度合いがハンパない。

バイクはロックで施錠され、あいくの至近距離の部屋に置かれた複数台のモニターで監視される。さらに、バイク周辺には私服警察官、自転車に乗った捜査官も待機し、いつでも現行犯逮捕できるようスタンバっている状態。(完全に本気だ)

怪しげな人物が近寄ってくるまでさほど時間はかからなかった。まず現れたのは自転車を押して歩く黒人男性。エサの自転車の近くで挙動不審な様子を見せる。捜査官らにも緊張感が走る。

果たしてその黒人男性は窃盗犯であった。周辺を見まわし、ショルダーバッグから取り出したワイヤーカッターを手にしてかがみこむ。ワイヤーを切ろうとした瞬間、一人目の捜査官がダイブアタックよろしく飛び掛かる。

窃盗犯はギリでタックルをかわすも、その後3人の捜査官にあっけなく取り押さえられる。

窃盗犯は自転車ばかりを狙っていた常習犯。前科持ち。犯行に使ったのは、そのへんのホームセンターで売られているごくふつうのワイヤーカッターだった。自転車のワイヤーロックは、そのていどの道具でカンタンに切れてしまえるということ。

なお、彼は逮捕され、6か月禁固刑に処された。

自転車盗難を目撃しても、通行人はほぼ通報しないことが証明された社会実験動画

Police investigate how easy it is to steal a bike



Avon and Somerset という街(イギリス)で行われた社会実験動画。

白昼のショッピングセンターで、歩行者も多数いる場所で堂々と自転車盗難をしたら、果たして警察に通報するか、行為を止めようとする人が現われるかどうかを実験したもの。

もちろん、犯行者を演じているのは警察関係者。枝の剪定に使うようなバカでかいカッターを肩に担ぎ、口笛を吹きながら獲物を物色する。もちろん、誰も気にもしない。

ガチャガチャとわざと目立つようにワイヤーロックを切り、自転車を持って立ち去ろうとする。驚いたのは、近くの通行人に「あ、ちょっとこのカッター持ってもらってもいいですか?」と手を借りようとしても、それでもなお誰も通報しなかったこと。

さらに、いかにも犯罪者っぽい怪しい服装で自転車に近づき、「ふんっ!」とバイクを引っ張ってワイヤーを引っこ抜いてバイクを盗んでも、何も起きなかった。つまり、自転車盗難は成功してしまったことになる。
※切れかかったボロボロのカギを意図的に使っていた


この件に対して「ここまであからさまに盗んでも、誰も通報しないなんて…」と、イギリスの警察も驚いていた。

街角でインタビューに答えた男性は、

「同じ場所で自転車を盗まれたことはあるよ。ちょうど犯行現場に出くわしたから追いかけて取り戻そうとしたんだけど、間に合わなかった」


別の女性は

「こんなにたくさんの人が行き来している場所で、堂々と盗めてしまうことが恐ろしいわ。ただ傍観するだけで何も行動をおこそうとはしないものなのね」

とも。


警察は「犯行や不審な行動を目撃したら、999(日本でいう110番)にコールしてください。通報は早いほうがいい。逮捕の可能性が高まりますので」と呼びかけてはいたが、それがをしたくてもできないのが現実なのだと思う。


「え、え??嘘?何が起きた?」、「怖い人かも」、「巻き添えを食いたくない」、「自分のバイクじゃないし…」、「もしかしたら所有者本人が、鍵を紛失して仕方なくそうしているのかもしれない」

…とか色々なことを考えて天秤にかけ、とっさの行動ができないのだろう。


その後、実験動画の撮影は続いたが、結局1件の通報もされなかった。



最後はこの動画。過去に何度も自転車盗難の被害にあったオーストリア人青年が試みた実験動画。

stealing bikes in salzburg



母親のママチャリを拝借し、ザルツブルクの街中でわざと人目に付くようにワイヤーロックを切って盗もうとする実験。で、いったい何人が通報するか、声をかけてくるかを調べたわけ。
※英語のサブタイトルが添えられていたので、内容がよく分かった。(あと、複数のカメラを使い分けていて、撮影技術も何気にうまい。きっと慣れているのだろう)

声をかけられたら、「あぁ、これは母親の自転車なんです。カギを紛失してしまったので、しかたなくワイヤーを切っているんですよ」と言い訳ができる状況で実験開始。


ほとんどの人は無視して通り過ぎるが、何人かは「ねぇ、何をしているの?まさかとは思うけど、人のバイクを盗もうとはしていないよね?」とか「本当に君のバイクなの?え、カーチャンの借りてきたの。ふーん…」と疑惑の目を向けるも、証拠がないので立ち去っていく。

あまりにも堂々かつのんびり切っている(30分もかけて)ものだから、犯行行為には見えないかもしれない。本気の窃盗であれば、どうしたって周囲を気にするし、焦りがあるはずなので。


あまりにも拍子抜けした青年は、調子に乗って「派出書の前」での実験に踏み切る。果たして、ソッコーでお巡りさんに声をかけられた彼は、取り調べのために所内に連行されてしまった。(まあ、事情を話して許してもらえたのだろうが、軽いお説教は食らったかもしれないw)

さすがに警察官は、彼の不振行動を看過しなかったようだ。(当然か)


結論だが、4か所で合計2時間「犯行」してみた結果、80%は無視し、18%がジロジロ見てきて、6人に「何をしている?」と声をかけられ、1人からは「こうすればもっと速く切れるよ」とアドバイスをもらう始末。警察に通報したのは一人だった。

これらの映像を見てわかることは、「人目に付く場所に駐輪したから安心」は、サイクリストの勝手な幻想でしかないということ。実際に犯行が行われる可能性はどこだってあるし、赤の他人がそれを阻止してくれるわけでもない。

所詮、他人の自転車を本気で守ってくれるはずはないのだ。


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/ ABUSのBordo lite(むっちゃ頑丈) \


ということで、改めて「愛車を守るのは自分だけ!心を引き締めて自衛するしかない」という結論に至った。

重さとのトレードオフになってはしまうが、なるべく頑丈なロックを複数使うことをオススメする。自分は(堅牢で有名な)ABUSとふつうのワイヤーロック併用なんだけど、そろそろABUSの2本体制にしようかと本気で考えている。


どうか、皆様が盗難とは無縁のサイクルライフを送れますように…。
( ◠‿◠ )


>> あなた自身とあなたのロードバイクを安全に保つ5つのコツ



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